嵯峨野分化通信 第92号

 伝統文化プロデュース【連】メールマガジン 

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              〔嵯峨野文化通信〕 第92号
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         日々の暮らしに「和」の魅力をプラスしてみませんか?

    伝統文化プロデュース【連】は、日本の伝統文化にこめられた知恵と美意識に

          ついて、学び広めていくための活動をしている団体です。

         京都・嵯峨野から、最新の情報を皆さんにお届けします!

               毎月1日・15日(月2回)

                      ★VOL:92(2009/12/1)

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  ○【連】からのお知らせ ————– 天神さんのもみじ苑
                     老松 クリスマス茶会開催
                     文化遺産防災シンポジウムにて太田達講演
  ○(連載)『餅と饅頭-和漢の境まぎらわす事-』—— 第八回
  ○(連載)『ニッポン城郭物語』———————- 第四十六幕
  ○(連載)『やまとのくには言の葉のくに』———— 第五十六首
  ○[嵯峨野学藝倶楽部]12月開講講座のお知らせ

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 【連】からのお知らせ
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 ○天神さんのもみじ苑

  北野天満宮のもみじが、今年も色づきました!
  毎年、もみじが紅葉する頃に、北野天満宮の境内西側の史跡「御土居」にて一般公開が
 行われます。
  目の前いっぱいに広がる錦のような色とりどりの紅葉に、しばし時を忘れてみませんか?
  苑内にて、【連】の活動に協力してくださっている「老松」さんが作られた茶菓子をい
 ただけます!

  北野天満宮 もみじ苑
  日程:11月7日(土)~12月13日(日)
  時間:10時~16時(ライトアップ実施日は10時~20時)
  費用:大人600円 小人300円(茶菓子付)
    ※ライトアップは日没からです。
     ライトアップ実施日は12月5日、6日です。

  北野天満宮HPはコチラ
  http://www.kitanotenmangu.or.jp/top.html

 ○老松 クリスマス茶会開催

  いよいよ12月、街はツリーやリースなど華やかな飾りで、クリスマス色に染まり始め
 ました。老松嵐山店では、「クリスマス茶会」として紅茶と和風デザートのアフタヌーン
 ティーがいただけます! 和菓子屋さんでいただくアフタヌーンティー、一体どんな「ク
 リスマス茶会」になるのでしょう! 限定20名様ですので、お早い予約をお勧めします。
 
 「クリスマス茶会」
  紅茶と和風デザートのアフタヌーンティー
  日程:2009年12月12日(土)
  時間:12時・15時
  費用:お一人様2、000円
  場所:老松嵐山店(京都市右京区嵯峨天龍寺)

    ※各回10名様(20名様)限定ですので、必ずご予約をお願いいたします。

  ご予約、お問合せはコチラ
   老松嵐山店
   075-643-3050

 ○文化遺産防災シンポジウムにて太田達講演

  文部科学省より採択を受けた以下の補助事業(*)の成果公表会にて、【連】の太田達
 が講演をいたします。どうぞお気軽にお越しください。

 (*)学術フロンティア推進事業「文化遺産と芸術作品を自然災害から防御するための学
    理の構築」
    グローバルCOEプログラム「歴史都市を守『文化遺産防災学』推進拠点」

  第5回 文化遺産防災シンポジウム「文化遺産ー伝統を災害から守るー」

  日程:2009年12月13日(日)
  時間:13時30分~17時
  会場:立命館大学衣笠キャンパス(京都市北区等持院北町56-1)
     創思館1Fカンファレンスルーム
  費用:無料

  プログラム:
   1,京町家「杉本家住宅」の保存活動について/杉本節子(財団法人奈良屋記念杉本
     家保存会事務局長)
   2,京都花街の形成と災害/太田達
   3,文化財保護とマスメディア/大井徳三(NHKエンタープライズエグゼクティブ
     プロデューサー)
   4,山鉾と天明の大火、町衆の知恵/吉田考次郎(財団法人祇園祭山鉾連合会副理事
     長)

     主催 立命館大学 歴史都市防災研究センター
     後援 財団法人京都市景観・まちづくりセンター

  お問合せはコチラ
  立命館大学研究部人文社会リサーチオフィス内
  歴史都市防災研究センター事務局
  電話075-465-8206(午前9時~17時30分)

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                  (連載)『餅と饅頭-和漢の境まぎらわす事-』
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                   第八回

                                    太田 達

  橘は、四姓源平藤橘のひとつである。起源は県犬養宿禰三千代にある、三千代は、天武
 帝の命婦として文武天皇の乳母をつとめ、美努王との間に葛城王(後の橘諸兄)佐為王(
 後の橘佐為、藤原四兄弟と同じ天然痘で死ぬ)の子らがおり、後不比等との間に光明子(
 聖武夫人光明皇后)をもうける。

  この三千代が、天平5年(733)に、没すると、藤原氏に、服従の意を表すためなの
 か、すぐに橘姓の継承を申請しただちに臣籍降下した。諸兄は、不比等の子四人が天然痘
 で麼まかった後政治の中心にのぼり聖武、孝謙両天皇の太政官の首班を勤めた。
 
  しかし、諸兄が死ぬとその子橘奈良麻呂は、藤原武智麻呂の子仲麻呂(後の恵美押勝)
 との政権争いに破れ獄死する。この後、奈良麻呂の孫橘嘉智子が登場するまで橘氏は政治
 の表舞台から姿を消す。

  橘嘉智子は、大同5年(810)1月1日に嵯峨天皇との間に正子内親王(後の淳和天
 皇妃)弘仁元年(810)12月31日、正良親王(後の仁明天皇)を生むというはなれ
 業をなしとげ、橘氏の復権である。奇しくも、嵯峨天皇による、平城上皇に対するクーデ
 ター「薬子の変」の年である。

  村上天皇(在位946~967)の日記『天暦御記』によると、御所の紫宸殿の庭前に
 ある「右近の橘」の樹は、秦河勝の太秦の邸の庭樹を御所に残したとある。
  ひな祭りにひな壇に並べられる「右近の橘」の始まりの秘密は次号へ。
                                   (つづく)

           
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                          (連載)『ニッポン城郭物語』
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             ─第四十六幕─  ~宮津城の話 その2~ 

                                   梅原 和久

  先日、新聞を見ていると、「宮津城」という文字が目に飛び込んできた。昨年この連載
 で伝えた(※)ように、宮津城にはもうニュースになるようなネタもない、と思っていた
 だけに、少し意外な感じがしたのである。記事は、去る11月8日、宮津城の城壁復元工
 事の起工式が、府知事や宮津市長の出席のもとに行われたことを伝えていた。一見すると
 結構なことのようだが、そう単純な話ではない。

  簡単に経緯をおさらいしてみる。平成十六年(2004)の台風23号によって宮津市
 内中心部を流れる大手川が大氾濫したことをきっかけに、大規模な河川改修工事が行われ
 ることになった。
  その際、僅かに残っていた宮津城の石垣が、保存の手続きもないままに撤去されたため
 に、地上から城を偲ばせる遺構が完全に消滅してしまったのだ。ただ、その後は「旧宮津
 城をイメージした整備」を行うことになっており、今回の城壁復元工事はその一環、とい
う訳である。

  大手川の右岸に白壁、瓦を施した城壁風の建造物を約260メートルに渡って設置する
 この事業、完成すれば何となくそれっぽくなるのかもしれない。ただ、あくまでそれは雰
 囲気にすぎず、旧宮津城とは何の関係もない代物である。

  市内の主な団体等で構成された「宮津城の城壁復元に取組む会」が今回の事業の中心と
 なったのだが、事業の実現に向けて取り組まれたその姿勢と労力には心からの敬意を表し
 たい。ただ、その力を他のやり方で発揮する方法もあったのではないか、という思いもま
 た消えないのだ。
  起工式の挨拶の中で、「城下町の風情を取り戻すことで、市民の皆さんが歴史風土に親
 しみ、地域への愛着を呼び起こしてほしい」こと、また「先人たちが残してきた宮津の歴
 史風土を次の世代に伝えていくことは、今を生きる私たちの使命だと思ってい」ることを
 述べられていたが、そうなればこそ。
  
  今回の河川改修工事で石垣が失われたのは、市民の安心・安全のためにはやむを得ない
 処置だったろう。ただ、やりようはあったはずなのだ。最も一般的なのは移設展示。元に
 あった位置に残せない場合、場所を変えて保存するのである。次善の策とは言え、後世に
 残すことはできる。それができなかったのは、ひとえに地元の関心の低さである。地元か
 ら「保存すべし」との声が挙がらなければ、敢えて金と時間のかかる処置はなされないの
 が現実なのだ。

  恐れているのは、今回の件が地元では教訓にすらなっていないのではないか、というこ
 とである。めでたく各地の城跡にあるような建造物はできるが、宮津城そのものの遺構は、
 その前段階で永遠に失われたのだ、という事実を改めて指摘しておきたい。

 (※)昨年10月の記事はこちら。
   http://archive.mag2.com/0000185716/20081001235500000.html

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                     (連載)『やまとのくには言の葉のくに』
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                  第五十六首

                                   田口 稔恵

  思はざる病となりぬ沖縄をたずねて果たさむつとめありしを

  昭和63年の元旦に発表された、昭和天皇の御製である。
  歴代天皇として初めて開腹手術を受けられたことは有名な話だが、崩御に至までの、壮
 絶な病との闘いが「昭和の遺書」(文藝春秋)に記されている。
 
  歌の最後の「を」は逆接の接続助詞。上の句と倒置されていることがわかる。病に倒れ
 た無念を冒頭に強く押し出し、倒置によりいっそう強調された御製は、静かな響きの中に
 も、心の奥底の焔を映し出すかのごとくである。

  昭和11年8月、226事件の第一次死刑により処刑された将校の人数と同じ、15個
 の盆提灯を、密かに用意させた天皇。生涯最後の戦没者追悼式には、足もとも覚束ない体
 調の中、反対を押してヘリで駆けつけられた天皇。沖縄への行幸を望みながら、病に倒れ
 た天皇ー。

  あまりに激しく、重い「昭和」という時代は、いまだ日本人にとって充分な回顧や反省、
 分析の対象とはなり得ぬものとさえ言える。その位置づけもままならぬ「昭和」を、善悪、
 美醜そのままに、すべて引き受けた昭和天皇の生涯は、1月7日に終焉を迎えた。

  昭和の終焉から20年が過ぎた。私たちには、激動から産み落とされた沈滞の中で、も
 がきながらも雄々しく生きる使命が課せられている。

             (参考文献:『昭和の遺書ー55人の魂の記録ー』梯久美子)

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 ◆[嵯峨野学藝倶楽部] 12月開講講座のお知らせ ◆
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 詳しくは、http://www.ren-produce.com/sagano/club/をご覧下さい。

 ★「茶道教室(水曜日コース)」
  日程:12月2日、16日(いずれも、水)
  時間:13時~18時(ご都合の良い時間にお越し下さい)
  講師:西村 宗靖・太田 宗達
  ※見学/体験も、随時受付けています。

 ★「茶道教室(土曜日コース)」
  日程:12月5日、12日(いずれも、土)
  時間:15時~20時(ご都合の良い時間にお越し下さい)
  講師:西村 宗靖・太田 宗達
  ※見学/体験も、随時受付けています

 ★「今様・白拍子教室」
  日程:12月5日、26日(いずれも、土)
  時間:13時~14時(60分)
  講師:石原 さつき
  ※見学/体験も、随時受付けています。
   性別・年齢・経験は問いません。

 ★「京文化を語ろう」
  日程:12月12日(土)
  時間:11時~12時30分(90分)
  講師:太田 達
  テーマ:「宗教から京都を考える~キリスト教~」
  参加費:1回1,000円(茶菓子付)
  ※1回のみの参加も、随時受付けています。

 ★「京都歴史講座」
  日程:12月20日(日)
  時間:11時~12時30分(90分)
  講師:中村 武生
  テーマ:「どうして河原町三条界隈に幕末史跡は多いのか」
  参加費:1回 1,000円 (茶菓子付)
  ※1回のみの参加も、随時受付けています。

 ★「うたことば研究会」
  日程:12月26日(土)
  時間:10時~11時(60分)
  監修:田口 稔恵
  ※資料代等が必要です。詳細はお問合せ下さい。

 ●URL
  http://www.ren-produce.com/sagano/club/

 お問合せ・お申込みはコチラまで→sagano@ren-produce.com

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  とうとう12月になりました。2009年も残すところ30日です。皆さんは、今年
 遣り残したことはございますでしょうか? 私は挙げだしたら際限がないですが…
  年内にやるべきことをやってしまって、新年はあったかいコタツの中で迎えたいもの
 です。
  
                                 (きしもと)

     [次回は、12月15日(火)に配信予定です!次回もお楽しみに。]

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多くの方に有斐斎弘道館の活動を知っていただきたく思っております。
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