禊夏菓祭は、一年の半ばである6月に、半年分の穢れを落とし、厳しい夏の暑さを乗り越えるのに、ふさわしいお菓子とお茶を、職人・研究者・作家の顏を持ち、お菓子に魅了され続ける、太田宗達、林周作、杉山早陽子の三主人が 、それぞれの空想を用いて、三様のおもてなしを展開する茶会です。
結びには、“お菓子の力”をテーマにしたトークショーが行われました。
弘道館に3つの茶室ができ、自由にまわりながら、お菓子やお茶を、そしてお庭を楽しむ会です。
わたしは、準備から参加し、茶室が徐々に出来上がっていくところから見ていきました。最初は、普段と変わらない空間が、徐々にそれぞれの演出に合わせ、全く異なるものに変わっていく変化の面白さを感じました。
既にそれぞれの方の頭の中で構想されたものを、実際に作っていく、また、その途中で試したり、調整したりしながら、出来上がっていきます。
トークショーの中でもお話しされていましたが、三人での打ち合わせが少なく、お互いにどんなお菓子を出しているか知らないとおっしゃっていたことがとても意外であり、驚きでもありました。
そのため、それぞれの独自色が出て、予め調和をとったものでない、いい意味で全く異なった面白さがありました。
太田さんの茶室は、夏越の祓を感じるものでありながら、ガラスの電球や泡立ったぼてぼて茶というお茶には驚かされました。
杉山さんの茶室は、茶室でありながら、庭を向いて座るバーカウンターのような机の配置がまず目を引きました。時をゆったりと待ち、色の変化を楽しむお菓子、初めて見たねじりをいれた和菓子と、涼やかな空間を楽しむ新鮮さを感じました。
林さんの茶室は、椅子にすわるスタイルで、こちらは一転現代でありながら、妄想彼女というストーリーとツンデレを表したお茶とお菓子の組み合わせがとても面白かったです。
同じテーマでも、こんなに違う演出ができるものなのかと、そして、お菓子とお茶というものを、さまざまに楽しめる可能性を感じました。
トークショーの中で、お菓子職人は料理の世界と違って、ひとつのものをコラボレーションすることがないというお話、太田さんは継がないといけないから菓子屋になったけれども、お菓子はそんなに好きではないというお話が、わたしには印象的でした。
そんなこともあってか、太田さんのパティシエ時代のレシピ本が閲覧できたり、そのレシピをもとに作られた、ウィークエンド、マドレーヌが限定発売されたりと、とてもレアなところもありました。
おもたせも、これまた三者三様のお菓子のうち、何が入っているかはお楽しみということで、おうちまで余韻を持って帰れます。
好きな順番で、好きなところに行き、三者三様の、甘いお菓子とお茶を味わったり、茅の輪が完成したお庭を散策したりと、ゆったりと時を楽しんで、6月の末にぴったりなお茶会でした。
受講生:山本真理子さん