嵯峨野文化通信 第133号

 伝統文化プロデュース【連】メールマガジン

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  ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄)   [嵯峨野文化通信] 第133号
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 伝統文化プロデュース【連】は
 日本の伝統文化にこめられた知恵と美意識について
 遊びながら学び、広めていく活動をしている団体です

         
     嵯峨野文化通信は、伝統文化を「遊ぶ」ためのヒントを発信します

                毎月1日・15日(月2回)
 
                 ■VOL:133(2011/8/15)

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               ■□■もくじ■□■

  ■【連】からのお知らせ –茶席菓子展「京菓子から歴史を考える」開催です
               弘道館講座 9月からの日程が決まりました
               近世京都学公開講座のお知らせ
  ■(連載)『源氏が食べるー平安文学に描かれる食ー』——- 第三十四回
  ■(連載)『北野の芸能と茶屋』————————— 第三十七回
  ■(連載)『やまとのくには言の葉のくに』——————第九十三首
  ■祇園祭八坂神社奉納のご報告
  ■[嵯峨野学藝倶楽部]8月開講講座のお知らせ

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             □■【連】からのお知らせ■□

 ■茶席菓子展「京菓子から歴史を考える」開催です

  【連】の活動に協力くださっている、有職菓子御調進所「老松」さんが、弘
 道館にて茶席菓子展を開催されます。弘道館にちなみ、「江戸時代」にスポッ
 トをあて、普段見られないお菓子を作り、展示されます。
  期間中、趣向をこらしたお茶会や、お子様も気軽にご参加いただけるこども
 茶会なども予定しております。ご予約せずにお入りいただけますので、皆さまお
 誘い合わせの上、ぜひお越しください。

  茶席菓子展「京菓子から歴史を考える」
  日程:9月13日(火)~19日(月・祝)
  時間:10時~16時30分(17時閉館)
  場所:有斐斎弘道館(京都市上京区上長者町通新町東入ル元土御門町524ー1)
  入場料:500円(干菓子付き)

  <期間中に開催されるお茶会>
  こども茶会
   日程:9月17日(土)
   時間:10時~15時
   費用:大人 1500円、中高生 1000円、小学生500円、乳幼児 無料
      (展覧会の入場料込)
   ※お越しの方から、順次お席入りの案内をさせていただきます。
   ※お茶会に初めてお越しの方には、簡単なレクチャーをさせていただきますので、
    スタッフにお声掛けください。

  長月の茶
   日程:9月19日(月・祝)
   時間:11時~15時
   費用:おひとり1500円(展覧会の入場料込)

  菓子展・こども茶会についてのお問合せはコチラ
    電話:075-463-3050(老松)
  長月の茶についてのお問合せはコチラ
    電話:075-441-6662(弘道館)
    メール:info@kodo-kan.com

   老松HPはコチラ
   http://www.oimatu.co.jp/

   弘道館HPはコチラ
   http://kodo-kan.com/event.html

 ■弘道館講座 9月からの日程が決まりました

  ご好評いただいている弘道館講座「信仰からみる京都」の、9月以降の日程が
 決まりました!受講いただいている皆さま、大変お待たせしました。
  秋以降も、面白く、知識が深まる内容となっておりますので、どうぞお誘い合わ
 せのうえ、受講ください!

  「信仰からみる京都」
 日程: 9月3日(土) 「月と日本人」
     10月8日(土) 「神仏分離」
     11月12日(土) 「寺の庭」
     12月10日(土) 「門跡とは」
 時間:全て11時~12時30分
 場所:有斐斎弘道館
 講師:太田達
 費用:4回 8000円(1回2000円) ※茶菓付き

  お申し込み・お問合わせはコチラ
 メール:kouza@kodo-kan.com
 電話:075-441-6662

 ■近世京都学公開講座のお知らせ

  6月に設立されました、近世京都学会の講座が、弘道館にて行われます。
  近世京都学会と弘道館の共催で、学会会員の先生方による講演をお聞きい
 ただけます!
  まだ席に空きがございますので、 どうぞお気軽にお申込みください。

  第1回近世京都学公開講座
 日程 : 9月25日(日)
 時間 :14時~16時
 場所 :有斐斎弘道館(上京区上長者町通新町東入ル元土御門町524-1)
 プログラム:講義1 竹中泉美氏(朱雀高校)
            「女流漢詩人江馬細香の誕生 頼山陽の批点から」
        講義2 勝盛典子氏(神戸市立博物館)
            「笹屋と青貝屋 輸出漆器をめぐって」
 参加費:1,000円(要申込、近世京都学会会員は無料)
 定員 :先着40名様まで
 主催 :有斐斎弘道館
 共催 :近世京都学会

 ※参加ご希望の方は、近世京都学公開講座事務局(koudoukan@s-off.com)
  までメールいただくか、075-315-9070までFAXをお願いいた
します。(どちらも、有限会社セクレタリー・オフィス・サービス宛)

 近世京都学会公開講座についてのHPはコチラ
 http://kinsei-kyoto.com/event.html

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          ■『源氏が食べるー平安文学に描かれる食ー』■       

                  第三十四回       

                              荻田 みどり

  前回まで、源氏の父である桐壺帝の食欲のない描写を見てきた。
  これまでにも述べたように、食事とは日常の描写であり、まして食事にかかわ
 る天皇の姿はあまり描かれることがない。儀式や宴で勧められたり献上された
 りしている姿が見られるばかりである。今回は、そんな天皇の食事描写を見て
 みたい。

  天皇の食事が描かれるのは、天皇が宮中より外へ出かける行幸の折ばかり
 である。天皇を退いた院のもとを訪れたり、鷹狩を楽しんだりする。
  たとえば、少女巻(おとめのまき)において、冷泉帝は朱雀院に行幸する。行
 幸は大勢の貴族たちもつき従い、舞や管絃などの催しも行われる一大行事で
 ある。源氏もお召しがあって参上する。春鴬囀(しゅんおうでん)という曲で舞が
 行われ、舞い終わるころには宴の場となる。盃が回され、それに併せて歌が唱
 和される。

   大臣(源氏)、院(朱雀)に御土器(おほんかはらけ)まゐりたまふ。
   <源氏歌>
   院の上(朱雀)、
   <朱雀院歌>
   帥宮(そちのみや)と聞こえし、今は兵部卿(ひやうぶきやう)にて、今の上
   (冷泉帝)に御土器まゐりたまふ。
   <兵部卿宮>
   あざやかに奏しなしたまへる、用意ことにめでたし。取らせたまひて、
   <冷泉帝歌>

  「御土器まゐりたまふ」は盃を相手に献じることであり、「取らせたまひて」は
 盃を受け取ることである。
  今回は和歌を省略したが、源氏→朱雀院→兵部卿宮→冷泉帝へと盃が回され
 ていく。盃を取ると和歌を詠む。和歌はもちろん季節に合わせた春の歌であり、
 行幸の場にふさわしい歌である。因みに、朱雀院は源氏の兄、兵部卿宮は源氏
 の弟にあたる。冷泉帝も世間的には源氏の弟にあたり、兄弟4人の唱和になって
 いる。(ただし、実は冷泉帝は源氏と藤壺の子)
  なかなか外に出ることの許されない天皇が行幸した折だからこその顔ぶれであ
 り、盃は兄弟の間を取り持つバトンのような役割を担っている。

 
               ■『北野の芸能と茶屋』■           

                   第三十七回              

                               井上 年和

  天正十三年(1585)8月12日

   「一、明日十三日ニ秀吉大里様へ御能を御目にかけられ候ハんとてこしらへ
   候、是付はしかゝりの松松を切に、せうへもん殿より折かみにて、松はい院へ
   いからし甚へもん両人して、秀吉からも北野ハ竹木ハきんせいにて候へ共、
   (後略)」
                     (『北野天満宮史料 目代日記』)

  秀吉が後陽成天皇に能を催すため舞台を設けようとしたようだ。この年秀吉は
 関白となり、宮中へ入っているが、自身の権威を高めるため天皇を尊重し、朝廷
 の威信回復に尽力した。北野へ天皇を能に招いたのはほんのおもてなしのつも
 りであろう。

  後陽成天皇と能を鑑賞している模様は、神戸市立博物館蔵の『観能図』に描か
 れており、御簾の中で天皇が十二単衣の女官を従え、秀吉には五大老・五奉行
 が付き添い、秀吉の妻妾や南蛮人も能を鑑賞しており、その左側には北野社が
 描かれている。

  この『観能図』は、神戸市立博物館の説明によると、近年の研究により秀吉が
 宮中で催した天覧能の場面であると比定され、「左端に描かれた北野社は、豊
 臣秀頼による慶長十二年(1607)の復興後の景観を示していて、秀吉没後に
 彼の能好きぶりを偲ぶために描かれたもので、17世紀初期に描かれた一連の「秀
 吉追慕の風俗画」のひとつとも言える。」ということになっている。

  この後、秀吉は天正十五年(1586)10月10日からは北野大茶会を開催
 し、天正十六年(1588)4月14日には聚楽第へ天皇を迎え華々しく饗応し、
 徳川家康や織田信雄ら有力大名へ忠誠を誓わせた。この度の天皇との能鑑賞はそ
 の前段階であるのだ。

  歴代の室町将軍もそうであったように、北野で芸能を催し、貴賤を問わず群衆
 させ、神慮を慰めるとともに、天下に太平を知らしめ、自らの権威を誇り示そうと
 したに違いない。

  北野で竹木を切るのは禁止されているが、天皇と関白のことなので(「是ハ王さ
 まノ事にて候間、」)、結局中之森の木を切り、北野地下衆に運ばせたようだ。曼
 殊院門跡や目代へ報告しようとしてあたふたした様子も書かれている。

  北野社は古代から中世にかけて、貴族や将軍と良好な関係を築きながら発展し
 てきたわけであるが、この度の新しい覇者を迎え入れるのにも相当な苦労を強い
 られていたのだ。

             ■『やまとのくには言の葉のくに』■          

                   第九十三首               
  
                                田口 稔恵

   玉ゆらの露も涙もとどまらず亡き人恋ふる宿の秋風
            (藤原定家 『新古今和歌集』 哀傷)

  (ほんのわずかな間も、草に置く玉のような露も、落ちる涙も止まることがな
   い。亡き人を慕う私の家には、秋風が吹いているよ。)

  万葉集において「玉響」と表記された語は、かつて「たまゆらに」と訓じられて
 きた。(現在では「たまさかに」「たまかぎる」などと読まれる。)
  「たまゆらに」と読み、「玉と玉が触れ合うほどのほんのわずかな間も」という
 意味を持った影響下に詠まれた歌である。

  「玉」の語に「露」という球形・透明の物を響かせ、露に見立てることの多い「
 涙」を並立させた上で、「わずかな間も涙が止まらない」という上の句を仕立て
 る。そして、下の句には「秋風」という「露」に響く語を置いて、秋の風物で一貫
 された世界を創る。そして、わずかな間も涙が止まらない理由が、亡き人を想
 うからなのだ、と明かされる。

  秋は人に物思いをさせる。常は心の底に眠らせてあった亡き人への思慕は、
 秋風に誘われるように溢れて涙となって流れるのだろう。

  東北の地では、まだ心の中に亡き人を眠らせるいとまもないままに、初盆を
 迎える方々がいる。今年の盆は、家族や祖先だけではなく、遠く東北の地で亡
 くなった方や、そのご遺族に想いを馳せ、その御霊の安からんことを祈りたい。

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       □■[嵯峨野学藝倶楽部] 8月開講講座のお知らせ■□

 詳しくは、http://www.ren-produce.com/sagano/club/をご覧ください。

 ■「茶道教室(水曜日コース)」
  日程:8月17、31日(いずれも、水)
  場所:嵯峨野三壷庵
  時間:10時~19時(ご都合の良い時間にお越しください)
  講師:西村 宗靖・太田 宗達
  ※見学/体験も、随時受付けています。

■「今様・白拍子教室」
  日程:8月27日(土)
  場所:嵯峨野三壷庵
  時間:13時~14時(60分)
  講師:石原 さつき
  ※見学/体験も、随時受付けています。
   性別・年齢・経験は問いません。

■「うたことば研究会」
  日程:8月27日(土)
  場所:嵯峨野三壷庵
  時間:11時~12時(60分)
  監修:田口 稔恵
  ※資料代等が必要です。詳細はお問合せください。

 ■「茶道教室(土曜日コース)」
  日時:8月28日(日)
  場所:嵯峨野三壷庵
  時間:10時~19時(ご都合の良い時間にお越しください)
  講師:西村 宗靖・太田 宗達
  ※見学/体験も、随時受付けています。
 

 ●URL
  http://www.ren-produce.com/sagano/club/

 お問合せ・お申込みはコチラまで→ sagano@ren-produce.com

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               ■□■ひとこと■□■

  「魚そうめん」という食べ物をご存じでしょうか。
  私は、京都に引っ越してから5年目にして初めて知りました。
  魚のすり身を麺状にしたものを、そうめんのようにつゆにつけて食します。
  京都にはまだ、表には出てこないけれども人々の生活になじんでいる食べ
 物が多いと感じました。

                              (まつだ)

     [次回は、9月1日(木)に配信予定です!次回もお楽しみに。]

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多くの方に有斐斎弘道館の活動を知っていただきたく思っております。
記事が面白かったら是非、シェアいただけると幸いです。