嵯峨野文化通信 第116号

伝統文化プロデュース【連】メールマガジン

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  ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄)     [嵯峨野文化通信] 第116号
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 伝統文化プロデュース【連】は
 日本の伝統文化にこめられた知恵と美意識について
 遊びながら学び、広めていく活動をしている団体です

         
          嵯峨野文化通信は、伝統文化を「遊ぶ」ためのヒントを発信します

                毎月1日・15日(月2回)
 
                    ■VOL:116(2010/12/1)

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                ■□■もくじ■□■

  ■【連】からのお知らせ —————————– 「討入」茶会
                             有斐斎 初点式
  ■(連載)『餅と饅頭ー和漢の境まぎらわす事ー』——- 第二十七回
  ■(連載)『ニッポン城郭物語』———————– 第五十八幕
  ■(連載)『源氏が食べるー平安文学に描かれる食ー』— 第十七回
  ■(連載)『北野の芸能と茶屋』———————– 第二十回
  ■(連載)『やまとのくには言の葉のくに』————- 第七十九首
  ■[嵯峨野学藝倶楽部]12月開講講座のお知らせ

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             □■【連】からのお知らせ■□

 □「討入」茶会

  元禄15年12月14日、大石蔵之助率いる赤穂浪士が吉良屋敷に討ち入りました。
  12月のお茶会はこの「討入」にちなんだ趣向で行います。
  どのような茶会になるのでしょう。ぜひ、お越しください。

  日程:12月12日(日)
  時間:11時~15時
  場所:有斐斎 弘道館
  費用:1,000円(申込み不要)

 □有斐斎 初点式

  毎月趣向を変えて行う、皆川淇園の時代を考えるお茶会。1月は初点式を行います。
  年の始めに、お誘い合わせて弘道館においでください。

  日程:1月16日(日)
  時間:11時~15時
  場所:有斐斎 弘道館(京都市上京区上長者町通新町東入ル元土御門町524-1)
  費用:1,000円(申込み不要)

  弘道館HPはコチラ
  http://kodo-kan.com/event.html
 ※上記のお茶会の他にも、4月までのお茶会の日程が決まっております。ご覧ください。

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            ■『餅と饅頭ー和漢の境まぎらわす事ー』■

                    第二十七回

                                    太田 達

  □閑話休題 その三□

  初日の夕食は、校庭でのバーベキュー。最近バーベキューのことがBBQと表記され
 ているのをよくみませんか?私、この意味がわからず、ずっとチーズのことだと思って
 いました。何故、日本人は特定メーカーのチーズを、頻繁に春秋の河原で食するのか、
 深く悩んでおりました。おかしいですよねこの短縮表記は。
  この日の「BBQ」の主役は松茸とおいしいお肉で、皆さん盛り上がりました。

  食後は、勉強会である。教室メンバーのSさんより、丹生川上三社についての研究発
 表があり、皆で討議。かつて、二十二社にも選定されており、朝廷の祈雨のよりどころ
 として多くの奉弊の記録が残り、青馬の奉祭により「絵馬」のはじまりとされるこの丹
 生川上社が、室町時代後期より所在不明になっていたことに大いに驚いた。江戸時代に
 は下市町の下社が旧社地とされ、明治になり川上村役場近くの上社(大滝ダムの建設に
 伴い背後の山の中腹に移転)が、また、大正12年に、東吉野村の中社が本来の社地と
 比定され、三社並び立つことになった。結果三社を合して官幣大社となり戦後それぞれ
 独立した宗教法人に分かれた。
  丹生川が蛇行した大きな河原にその社地があるのは、上社と中社である。中社は風格
 すら漂わせている。上社は、別の意味での社格を持ってしまった。ダム工事により元社
 地のほぼ真上に偉容で、威容なコンクリートの大社殿。ここの元社地には、縄文前期の
 祭祀跡が発見されている、この跡地はコンクリートで固められ、ステンレスなのであろ
 うか、銀色に輝くメタルな龍神が鎮座している。

  大滝ダムは、いくら水を溜めようとしても溜まらない。川底に亀裂ができ、大台が原
 からの水が下流に流れない。また、河岸の上部に移築した建物が徐々に崩れているとい
 う報道は、耳目に新しい。(つづく)

                ■『ニッポン城郭物語』■

             ー第五十八幕ー  ~中津城の話~

                                   梅原 和久

  大相撲九州場所は、横綱白鵬の五連覇で幕を閉じた。始まって早々の二日目に連勝が
 ストップしたために、この話題も過去のものになってしまった感は否めないが、当初の
 興味は、戦前の大横綱双葉山の連勝記録にどこまで迫れるか、ということだった。白鵬
 の連勝記録によって再び脚光を浴びた双葉山の生誕地が大分県の宇佐、そしてその隣町
 が城下町中津である。
  
  強引な展開で恐縮だが、この中津城については過去の連載(第二十一幕、三十七幕)
 で取り上げたように、城地が復元天守ごと売りに出された、という前代未聞の出来事の
 舞台である。簡単におさらいしておく。
  中津城を管理する中津勧業という会社が、「現状では天守閣を維持管理していくのは
 厳しい」として売却を検討、福岡市内の不動産会社の広告に「3億2千万円」という売
 却額が掲載されたのが3年前。黒田如水が築き、かの細川忠興が整備したという、歴史
 的価値の高い城(天守自体は想像復元ものだが)が売りに出された、ということから、
 当時ワイドショーや週刊誌でかなり話題になった。
  
  その後、買い取りの意志を表明した中津市と金額面で折り合わないことが表面化した
 り、中津勧業のお家騒動が勃発したりと、肝心の城の売却話は一向に進展がなかった。

  それがこの10月、ついに売却先が決まった。埼玉県の「千雅(ちが)」という福祉
 事業会社である。社長が大分県出身だそうで、「郷土の発展のために」ということで購
 入を決めたそうだ。福祉事業と城。すぐにはなかなか結びつかない組み合わせだが、同
 社は新たに運営会社を設立し、今後も博物館としての事業を継続するという。

  購入費用は復元天守と櫓の2棟併せて5千万円。一城の主となるにはお得な買い物か
 もしれない。

 (※)報道された記事。
    http://sankei.jp.msn.com/life/trend/101004/trd1010042019006-n1.htm

          ■『源氏が食べるー平安文学に描かれる食ー』■         

                   第十七回       

                                  荻田 みどり

  師走に入り、忘年会シーズンの到来である。酒を飲み共に酔う宴が、人と人とをつな
 ぐ重要な意義を持つのは今も昔も変わらない。『伊勢物語』や、饗宴の文学とも言われ
 る『うつほ物語』も、宴によって共同体の結びつきを強くしていた。
  『源氏物語』でも宴は描かれるのだが、「酒によって酔う」という行為をポーズのみ
 行う場面がある。その「空酔(そらゑひ)」の主は誰か。一人は源氏。もう一人は源氏
 のよきライバルである内大臣(元頭中将)である。
  今回は、藤裏葉巻の内大臣を見てみよう。

   大臣、ほどなく空酔をしたまひて、乱りがはしく強ひ酔はしたまふを、さる心して
   いたうすまひ悩めり。

 内大臣が夕霧を自邸での藤の宴に招待し、雲居雁との結婚を認める場面である。雲居雁
 の父である内大臣は、長年二人の仲を反対してきた手前、今更認めるのも気恥ずかしい。
 そのため、酔ったふりをして、夕霧にも酒を強いて酔わせようとする。
  夕霧は夕霧で、内大臣の「空酔」に気づきながら断りかねて、「そら悩み」(こちら
 も「酔ったふり」)して、やり過ごそうとする。
  夕霧は、身分が低かったことで雲居雁との仲を認められず、苦汁をなめてきた過去が
 ある。だから、やっと義父に認められ、婿の洗礼として酔わされる機会を得ても、素直
 に酔いきれないところがある。
  三田村雅子氏は、「この『酔い』はすべてを忘れてわだかまりを解く時間ではなく、
 互いを許し合い、傷を修復するための演技と偽装の時間であって、苦い敗北を噛み締め
 る者とひそかに勝利の快哉を叫ぶ者との、互いに相手を化かし合う『芝居』の共演の時
 間なのである。」と述べる(「源氏物語の酔い」『酒と日本文化』(季刊「文学」増刊)
 岩波書店1997年11月)。
  「酔う」という行為が人と人とを結びつける場となるのであれば、対立してきた両者
 にとっては願ったり叶ったりである。しかし、まだ本当に相手を信頼し、酔いに任せて
 羽目を外すという境地にはいけない。だから、演技するのである。
  演技によって羽目を外し、それが演技であるということによって、わだかまりを残す
 自身を傍観し納得させている。酔いの外面とシラフの内面が、婿と舅の気まずい関係を
 さらにせめぎ合わせているのではないだろうか。

               ■『北野の芸能と茶屋』■             

                   第二十回                 

                                   井上 年和
永享十年(1438)3月27日

   「晴。北野御参籠御禮。柳五荷、點心折五合有繪、進之。付三條如例。御返事御祝
   着之由奉。能々心得可申云々。三條有返報。今日御哥御法楽云々。関白七日可有参
   籠之由被申。除目廿八日始行。殿大納言執筆之間。雖難治関白不参。有其禮之間可
   有参籠之由被申云々。薗中納言参。不対面。舞御覧事。参仕なと為申入参云々。於
   春日局有酒宴。男共持経朝臣、重仲等。御乳人留守事張行云々。南御方ニも女中有
   酒盛。内裏よりも今日北野一獻。柳五荷、折五合。被進云々。上様同前。女中被参
   云々」
                                (『看聞日記』)

 
  前回に続いて、室町将軍参籠の話題である。この時は3月21日から30日まで参籠
 ていたようだ。その最中に『看聞日記』の作者である伏見宮貞成親王が北野を訪ねてい
 る。法楽連歌を張行し、舞を見た後に酒宴を始めた。どうも宮中から女中を連れてきて、
 折詰も用意していたようだ。

  『看聞日記』を見ていると、筆者の伏見宮貞成親王は相当の酒好きで、どこの寺社へ
 行っても女中を連れて酒宴を施し、あちらこちらで「沈酔」している。

  永享六年(1434)3月21日、北野で一切経供養が行われた時も、采女を3人、
 女官を5人特選し、女官には小袖を一重ずつ給し、酒宴に同行させている。

  女中を同行させていたということは、別の見方をすると、北野社側では接待に対する
 受入態勢が整っていなかったのではないだろうか。

  つまり、明応二年(1493)3月24日に放火で移転させられた御子茶屋の様な接
 待所はまだ存在していなかったのかもしれない。

  参籠や一切経供養のとき、北野のどこで飲んだくれていたかは知らないが、女中を侍
 らせた宮中の宴会文化が北野で庶民の目にさらされたことは間違いがなさそうだ。

  茶屋はこのような大酒飲みの貴人を受容し、また、女中を侍らせ酒を飲むという庶民
 の羨望を叶えてくれる施設として北野社周辺で発生したと考えられるのだ。

            ■『やまとのくには言の葉のくに』■          

                  第七十九首                 

                                   田口 稔恵

   小倉山 嵐の風の寒ければ もみぢの錦着ぬ人ぞなき
               (『拾遺集』秋 藤原公任)

  (小倉山から吹きおろす山風が寒いので、紅葉が散りかかり、誰も皆、錦の衣を着て
 いるように見えることだ)

  猛暑から、紅葉が危ぶまれた今年の京都だが、結果的には美しい状態を比較的長く楽
 しめた。今、まさに紅葉は最後の時を迎えようとしている。 
 
  藤原道長が大堰川で船遊びを楽しんだ時、作文(さくもん)=漢詩の船、和歌の船、
 管弦の船と三つに分け、それぞれの道に秀でた人を乗せた。道長に「どの船に乗るか」
 と問われた公任は、和歌の船に乗って上記の歌を詠む。

  「嵐」に「嵐山」の地名をしのばせ、散る紅葉を錦に見立てる。これ自体は珍しい
 見立てではないが、「寒いので、その錦を着ない人はいない」と落とす、その機知は、
 船遊びの感興とも相俟って、人々を感心させたであろうことは想像に難くない。

  その後のエピソードも、歴史物語『大鏡』は記す。
  「漢詩の船に乗っておけばよかったなあ。そして、あの和歌と同じくらい優れた詩を
 作ったら、もっと名声が上がったのに。」公任の、何とも自信に満ちた言葉である。当
 時の男性にとっては、漢詩文の教養が第一であったことを匂わせる。

  道長が「どの船に乗るか」と自分に聞いたことに対し、「思わず得意になってしまっ
 た」と漏らす公任は、なんだか憎めない。道長も、公任はいずれの船でも十分に才能を
 披露しうることを知っていたからこその言葉だったようだ。

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       □■[嵯峨野学藝倶楽部] 12月開講講座のお知らせ■□

 詳しくは、http://www.ren-produce.com/sagano/club/をご覧ください。

 ■「茶道教室(土曜日コース)」
  日時:12月4、18、25日(いずれも、土)
  時間:15時~20時(ご都合の良い時間にお越しください)
  講師:西村 宗靖・太田 宗達
  ※見学/体験も、随時受付けています。
  ※11日の稽古が25日に変更になっております。ご注意ください。

 ■「茶道教室(水曜日コース)」
  日程:12月8、22日(いずれも、水)
  時間:13時~18時(ご都合の良い時間にお越しください)
  講師:西村 宗靖・太田 宗達
  ※見学/体験も、随時受付けています。

 ■「京文化を語ろう~遷都1300年記念・京都のなかの奈良」
  日程:12月11日(土)
  時間:11時~12時30分(90分)
  講師:太田 達
  テーマ:「長谷寺・観音詣」
  参加費:1回1,000円(茶菓子付)
  ※1回のみの参加も、随時受付けています。

 ■「今様・白拍子教室」
  日程:12月11日、25日(いずれも、土)
  時間:13時~14時(60分)
  講師:石原 さつき
  ※見学/体験も、随時受付けています。
   性別・年齢・経験は問いません。

 ■「京都歴史講座」
  日程:12月19日(日)
  時間:11時~12時30分(90分)
  講師:中村 武生
  テーマ:「豊臣三都の大名屋敷 ー大坂・京都・伏見」」
  参加費:1回 1,000円 (茶菓子付)
  ※1回のみの参加も、随時受付けています。

 ■「うたことば研究会」
  日程:11月25日(土)
  時間:10時~11時(60分)
  監修:田口 稔恵
  ※資料代等が必要です。詳細はお問合せください。

 ●URL
  http://www.ren-produce.com/sagano/club/

 お問合せ・お申込みはコチラまで→ sagano@ren-produce.com

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               ■□■ひとこと■□■

  風邪を引いてしまいました。
  今年の流行の風邪は、咳が長引くそうですね。まさに流行の風邪にやられてしまい、最
 近はのどあめが手放せません。
  そんなある日、カフェで頼んだ紅茶で舌を火傷してしまいました。
  のども舌も痛く、食べ物が美味しくないことを残念に思っている今日この頃です。

                                (まつだ)

     [次回は、12月15日(水)に配信予定です!次回もお楽しみに。]

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多くの方に有斐斎弘道館の活動を知っていただきたく思っております。
記事が面白かったら是非、シェアいただけると幸いです。