嵯峨野文化通信 第111号

 伝統文化プロデュース【連】メールマガジン

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  ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄)     [嵯峨野文化通信] 第111号
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 伝統文化プロデュース【連】は
 日本の伝統文化にこめられた知恵と美意識について
 遊びながら学び、広めていく活動をしている団体です

         
          嵯峨野文化通信は、伝統文化を「遊ぶ」ためのヒントを発信します

                毎月1日・15日(月2回)
 
                     ■VOL:111(2010/9/15)

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                ■□■もくじ■□■

  ■【連】からのお知らせ ———————— 今様奉納のご案内
                          重陽の茶事のご案内
                          太田達が京都新聞に掲載!
  ■『餅と饅頭ー和漢の境まぎらわす事ー』——— 第二十二回
  ■『源氏が食べるー平安文学に描かれる食ー』—– 第十二回
  ■『北野の芸能と茶屋』————————- 第十五回
  ■『やまとのくには言の葉のくに』————— 第七十五首
  ■[嵯峨野学藝倶楽部]9・10月開講講座のお知らせ

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             □■【連】からのお知らせ■□

 □今様奉納のご案内

  法住寺にて今様の奉納を行います。法住寺は、今様を愛してやまなかった後白河上皇が
 法住寺殿を営んだとされる地です。後白河上皇を偲び、後白河上皇の御宝前にて今様合な
 どが奉納されます。
  平安装束を着た歌人の今様合や白拍子の舞を見、みやびやかな一時を過ごしてみません
 か?
  当日、見学に来てくださった方にも、今様歌を詠んでいただけます。ぜひ、挑戦してみ
 てください!!

  日程:10月10日(日)
  時間:15時より
  場所:法住寺(東山三十三間堂の東前)
  費用:無料
     ※拝観料500円が別途必要です。 
 

 □重陽の茶事のご案内

  旧暦の重陽に、本格的な茶事を楽しんでみませんか?
  お一人でも、また初めての方でも気軽に参加いただけます!!
  お茶の世界に足を踏み入れてみてください。きっと楽しい時間を過ごすことができます!

  日程:10月15日(金)、16日(土)
  時間:いずれも午前11時より
  場所:弘道館(京都市上京区上長者町通新町東入ル元土御門町524-1)
  費用:25,000円

   弘道館のHPはコチラ
   http://kodo-kan.com/event.html

 □太田達が京都新聞に掲載!

  京都新聞(9月2日朝刊)の文化欄「私のモノがたり」のコーナーに【連】の太田達が
 紹介されています。 
  太田達が選んだ「モノ」は、俳句手帳。祖母と一緒に行っていた句会、たくさんの思い
 出が詰まった俳句手帳は、老松さんを継がれたときにも役立ったとか。
  ぜひ、ご一読ください!

 
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            ■『餅と饅頭ー和漢の境まぎらわす事ー』■

                    第二十二回

                                    太田 達

  現在の日本に残る神撰菓子は、春日神社、賀茂御祖神社、北野天満宮の大社から名もな
 い郷社に至るまで、小麦粉を元の材料とした唐菓子をルーツとしている。形状において唐
 菓子の「ブト」「マガリ」「索餅」に由来する物が多い。しかし、原材料的にみると、小
 麦粉は皆無である。

  では、その材料が何に置き換わったのだろう? どうも、前述した「粢(しとぎ)」に
 由来する「しん粉」=「真粉」が多く用いられている。古くからの祭りでは、島根県の東
 端の美保関町にある美保神社に伝わる「青柴垣神事(あおふしかき、4月7日)の神撰は、
 米を浙して臼で搗いて粉にして捏ねて、柑子、山桃、柘榴など果実や犬、猿、兎、鶴、亀
 など動物をモチーフにしたものを胡麻油で揚げ神に捧げる。

  有名なものでは、秋田県の湯沢の「犬っこまつり」がある。旧正月の十三日にウルチ米
 のしん粉で作った小さな「犬っこ」を、窓、玄関、敷居の上などに置く。かまくらで有名
 な豪雪地域なので、かまくらの中の祭壇にも飾られている。江戸期の記録に多く出てくる
 「しん粉細工」、縁日や巷間で商いする「しん粉細工師」なる人々も多く居たようである。
 東京五輪位までは、街頭にその姿があったようである。関西における「飴細工」も同様で
 あるが、こちらのほうは、まだその姿を見る事が出来るのだが、その係流は、一旦途切れ
 たと考えて良いかもしれない。私が高校の頃、というのは昭和46、7年頃のことだが、
 「飴細工」の最後の名人と云われたおっちゃんが大阪の西成におり、なぜか父に連れられ
 て会いに行った記憶がある。公園の横の路上に「ごもく」が散乱する道の、確か公園を背
 にその屋台(?)はあったような気がする。父の目的は、今から思えば、切り飴の技術を
 盗もうとしていたのではなかろうか。その時、同様の目的を持った多くの若者が、最後の
 飴細工士であるおっちゃんのまわりに居たと記憶している。今、縁日などで見かける、「
 アラ還」世代の飴細工士達は、かろうじておっちゃんのDNAを受け継いだ、そう、佐渡
 島の「ニッポニア ニッポン」=「とき」のようなものかもしれない。

          ■『源氏が食べるー平安文学に描かれる食ー』■         

                   第十二回       

                                  荻田 みどり

  今年の中秋の名月は、9月22日であるという。
  『源氏物語』でも、中秋(8月)の十五夜は印象深く描かれている。また、室町初期に
 成立した『源氏物語』の注釈書『河海抄』の冒頭には、

   折しも八月十五夜の月湖水にうつりて心のすみ渡るまゝに物語の風情空にうかびたる
   を忘ぬさきにとて仏前にありける大般若の料紙を本尊に申うけて先すまあかしの両巻
   をかきとゞめけり

  と、真実かは定かでないが、紫式部が『源氏物語』を書き始めたのが八月十五夜であっ
 たと述べられている。古来よりめでられてきた八月十五夜の神秘性が窺われる。
  さて、内裏では月の宴が催される。文徳天皇の御代より始まったといわれ、摂関期には
 月をめでながら詩歌を作り、歌合を行い、供物を備える儀式まで行われたそうだ。(秋山
 虔編『源氏物語必携』)
  『源氏物語』鈴虫巻では、その内裏での月の宴がこの年は何らかの事情で中止になり、
 物足りなく思っていたところ、六条院に人が集まっていると聞いて上達部たちが大勢集ま
 って来る。管絃の遊びに興じるが、その音は音楽の才にあふれた亡き柏木を恋しく思い出
 させる。

   「今宵は鈴虫の宴にて明かしてん」

  と、源氏は思いおっしゃり、柏木を髣髴とさせる管絃の音から鈴虫の音に興味を向けさ
 せる。座はまた盛り上がり、盃がまわされていく。

   御土器(かはらけ)二わたりばかりまゐるほどに、冷泉院より御消息あり。

  当時の酒宴は、一つの盃を順々に回しながら飲む。三周するのが普通であるようだ。
 その「二わたり」するころに冷泉院から文が届く。この文を読み、源氏は冷泉院へ参上す
 る。冷泉院からの使者には酒をふるまい、引出物をまたとないほどさしあげる。
  月の下、人々が集まり、宴になる。音楽を奏で、酒が回る。中秋の満月は、何やら人恋
 しく、人が人を呼びたくなる不思議な力を放っているようだ。

               ■『北野の芸能と茶屋』■             

                   第十五回                 

                                   井上 年和

  寛治六年(1092)8月5日

   「(前略)今日北野祭也、仍楽人ホ相待参入之間自入夜也、又男相撲人ホ彼是在幄中、
   (後略)」『中右記』

  この年の北野祭りでは楽人による雅楽と相撲が行われた。

  楽人とは雅楽を演奏する人、或いはその家柄のことである。

  平安時代になると左右の近衛府の官人や殿上人が雅楽の演奏を担うようになり、唐楽、
 高麗楽の作風や音楽理論を基にした作曲が国内で盛んに行われ、催馬楽、朗詠、今様など
 の謡い物も成立し、その全盛期を迎えた。

  相撲は力のある男性が神前にてその力を捧げる神事であった。

  今となっては音楽とスポーツに分類されてしまうこれらの芸能も、この頃はともに神に
 捧げる重要な神事だったのである。

            ■『やまとのくには言の葉のくに』■          

                  第七十五首                 

                                   田口 稔恵

  八月十五日夜禁中独直対月憶元九
  (八月十五日夜、禁中に独り直し、月に対して元九を憶ふ)  
                             白居易

  銀臺金闕夕沈沈 (銀台金闕夕べに沈沈たり)
  獨宿相思在翰林 (独宿相思ひて翰林に在り)
  三五夜中新月色 (三五夜中新月の色)
  二千里外故人心 (二千里外故人の心)
  渚宮東面煙波冷 (渚宮の東面煙波冷ややかに)
  浴殿西頭鐘漏深 (浴殿の西頭鐘漏深し)
  猶恐清光不同見 (猶恐る清光同じくは見ざらんことを)
  江陵卑濕足秋陰 (江陵は卑湿にして秋陰足し)

  (宮殿に、夜が静かに更けてゆく。僕はひとり、翰林院に宿直しながら、君を思ってい
 る。
  空にのぼったばかりの十五夜の月の色に、二千里の外地にいる親友たる君の気持ちが思
 われる。
  渚宮の東側は、もやで煙った水面が冷たいだろう。ここ、宮中にある浴殿の西側では、
 時刻を告げる漏刻の鐘の音が深く響いているよ。
  やはり気にかかる。君が、この清らかな月の光を、僕と同じように見ることができては
 いないのでは・・・と。江陵は、土地が低くじめじめしていて、秋は曇りが多いから。)

  銀台、金闕、夕と、月光を想起させる色彩の描写から入り、宿直する自身の姿に読み手
 の視線を集中させる。視線は天空の月を足場に、はるか二千里のかなたの親友、元〔禾眞〕
 の姿へ遷る。
  江陵の渚宮と、宮中の浴殿を巧みに対比させながら、隔てられた二人の身の上を表現す
 る。すなわち、皇帝の詔勅を起草する、重要なポストである翰林学士たる自分と、左遷さ
 れて卑湿な土地にいる友人とを。

  同じ空に、同じ月を眺めることができるのであれば、共に心も慰められよう。しかし、
 友人は雲のためにこの月が見られないかもしれない。

  秋の夜の月光と、人気のない宮中の静寂。その中で語られる、かなたの友への想いの静
 かなる深さが、「林・心・深・陰」という押韻からもしのばれるようだ。

  *今年の「八月十五日」は、9月22日です。

  
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       □■[嵯峨野学藝倶楽部] 9・10月開講講座のお知らせ■□

 詳しくは、http://www.ren-produce.com/sagano/club/をご覧ください。

 ■「今様・白拍子教室」
  日程:9月18日(土)
  時間:13時~14時(60分)
  講師:石原 さつき
  ※見学/体験も、随時受付けています。
   性別・年齢・経験は問いません。

 ■「うたことば研究会」
  日程:9月18日(土)
  時間:10時~11時(60分)
  監修:田口 稔恵
  ※資料代等が必要です。詳細はお問合せください。
 
 ■「茶道教室(土曜日コース)」
  日時:9月18日(土)
  時間:15時~20時(ご都合の良い時間にお越しください)
  講師:西村 宗靖・太田 宗達
  ※見学/体験も、随時受付けています。

 ■「京都歴史講座」
  日程:9月19日(日)
  時間:11時~12時30分(90分)
  講師:中村 武生
  テーマ:「豊臣期大坂・伏見の惣構堀」
  参加費:1回 1,000円 (茶菓子付)
  ※1回のみの参加も、随時受付けています。

 ■「茶道教室(水曜日コース)」
  日程:9月29日(水)
  時間:13時~18時(ご都合の良い時間にお越しください)
  講師:西村 宗靖・太田 宗達
  ※見学/体験も、随時受付けています。

 ■「京文化を語ろう~遷都1300年記念・京都のなかの奈良」
  日程:10月9日(土)
  時間:11時~12時30分(90分)
  講師:太田 達
  テーマ:「吉野・北嶺を仰ぐ」
  参加費:1回1,000円(茶菓子付)
  ※1回のみの参加も、随時受付けています。

 ●URL
  http://www.ren-produce.com/sagano/club/

 お問合せ・お申込みはコチラまで→ sagano@ren-produce.com

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               ■□■ひとこと■□■

  15日朝、始発より一本遅い電車で石清水八幡宮へ行ってきました。
  9月15日、勅祭石清水祭が執り行われ、私はその中の放生会を見学してきました。
 放生川に放魚、鳩の放鳥、と神事が粛々と行われる中、朝の空を飛び回る鳩は気持ちよ
 さそうでした。
  
  来年は、今回見られなかった男山での神事(午前2時から)にも挑戦したいです♪

 「闇夜行く“王朝絵巻” 八幡で石清水祭」(京都新聞HP)
 http://www.kyoto-np.co.jp/sightseeing/article/20100915000056

                                 (きしもと)

     [次回は、10月1日(金)に配信予定です!次回もお楽しみに。]

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多くの方に有斐斎弘道館の活動を知っていただきたく思っております。
記事が面白かったら是非、シェアいただけると幸いです。