嵯峨野文化通信 82号

伝統文化プロデュース【連】メールマガジン 
 
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              〔嵯峨野文化通信〕 第82号
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         日々の暮らしに「和」の魅力をプラスしてみませんか?

    伝統文化プロデュース【連】は、日本の伝統文化にこめられた知恵と美意識に

          ついて、学び広めていくための活動をしている団体です。

         京都・嵯峨野から、最新の情報を皆さんにお届けします!

               毎月1日・15日(月2回)

    ★VOL:82(2009/7/1)
 
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  ○発行が遅れましたことへのお詫び
 ○【連】からのお知らせ ——『京の花街 ひと・わざ・まち』執筆者による講演
                 京菓子教室、今年も開催!
                 花街本刊行記念シンポジウム開催!                  
  ○(寄稿)熊野参詣を終えて
 ○(連載)『丹後と京都』—————————- 第十二回
  ○(連載)『ニッポン城郭物語』———————- 第四十一幕
  ○(連載)『やまとのくには言の葉のくに』———— 第四十七首
  ○[嵯峨野学藝倶楽部]7月開講講座のお知らせ

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 【連】からのお知らせ
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 ○発行が遅れましたことへのお詫び

  この度、嵯峨野文化通信が利用している配信システムの「まぐまぐ」にてシステム調整
 が行われたため、大幅に発行が遅れました。ご迷惑をお掛けしましたこと、お詫びいたし
 ます。
  嵯峨野学藝倶楽部では、これからも皆様にご愛読いただけるよう努めてまいりますので、
 今後ともよろしくお願いいたします。  
  

 ○『京の花街 ひと・わざ・まち』執筆者による講演

  7月24日(金)~26日(日)の3日間に渡って、ハイアット リージェンシー京都
 にて、「京都のスタンダードを追求する」をテーマに、京都の暮らしから、歴史、文化な
 ど、さまざまな方面から京都を考えるイベントが行われます。
  その中で、『京の花街 ひと・わざ・まち』の執筆者である、太田達・平竹耕三・井上
 えり子・濱崎加奈子の4名も、花街の文化をお話することになりました。日時は、25日
 (土)17時30分~19時です。ぜひお越しください。

  京都流議定書 ~今こそ京都の価値観を継承していこう!
                      京都スタンダード(価値観)を探求する~
  『岩上力の京都をひもとく三日間連続講座』

  日時:7月24日(金)~26日(日)
     ※『京の花街 ひと・わざ・まち』執筆者による講演
       25日(土)17時30分~19時
  場所:ハイアット リージェンシー京都(七条東山)
  費用:無料
  主催:京都流議定書イベント実行委員会
  共催:京都市/協賛:株式会社ウエダ本社

  京都流議定書HP
  https://kyotostyle.jp/index.jsp
  株式会社ウエダ本社HP
  http://www.ueda-h.co.jp/
  ※イベント案内はウエダ本社HPにて詳しく掲載されています。
  
  お問い合わせはコチラまで
   株式会社ウエダ本社内 (担当:土本) 
     電話:075-341-4110
     FAX:075-341-4046
 

 ○京菓子教室、今年も開催!

  京都市郊外の山崎にある雑貨Shop&暮らしの教室「食と暮らしのうるおいサロン 
 Relish」から、今年もわらび餅教室の案内が届きました!!
  有職菓子御調進所「老松」主人であり、嵯峨野学藝倶楽部でもおなじみの【連】メン
 バー、太田達が講師を担当いたします。京菓子から日本文化まで、幅広い知識と人を引
 き込む語りが魅力的! 教室で作るわらび餅には宮崎産の本物のわらび粉を使い、餡を
 包み茶席菓子としての「わらび餅」を作ります。
  暑い夏に、見た目も食感も涼しげなわらび餅をぜひ作ってみませんか?

  日程:7月26日(日)
  時間:11時~13時
  費用:3,000円
  講師:太田 達(京菓子司「老松」主人)
  申し込み:Relishへ直接お申し込みください。
        電話・FAX:075-953-1292
        メール: info@relish-style.com

  ※定員は12名です。
  ※わらび餅を持ち帰っていただく容器、エプロンを持参していただきます。

  詳しくはこちらまで
  http://www.relish-style.com/

 ○花街本刊行記念シンポジウム開催!

  以前メルマガでもお知らせしました、花街を総合的に描いた初めての本『京の花街 ひ
 と・わざ・まち』の刊行を記念し、「京の花街 ひと・わざ・まち-<歌舞練場>から花
 街の現状と未来を考える-」と題しましてこのたびシンポジウムを開くことになりました!
  シンポジウムは二部構成となっており、第一部では執筆者が花街に関しての討議を行い
 ます。また花街の宴会等で演奏を担当する「地方(じかた)」にスポットをあて、先斗町
 の芸妓・もみ鶴さんにお座敷唄の演奏を披露していただきます。第二部では出版記念会と
 して、執筆にご協力いただいた上七軒や宮川町などの芸妓さんにもお越しいただく予定で
 す。
  花街についての理解を深めていただき、これからの花街についても考えていただける貴
 重な機会ですのでぜひご参加ください!

  日時:8月15日(土)
     第一部 14時開演/13時30分開場 *参加無料
     第二部 17時開会/16時受付 *有料
  場所:京都コンサートホール(京都市左京区下鴨半木町1-26)
  出演:もみ鶴(先斗町芸妓)・勝喜代(上七軒芸妓)・美代治(宮川町芸妓)
     上林研二・平竹耕三・井上えり子・太田達・濱崎加奈子 
  
  申込み、お問い合わせはコチラまで
   メール:kagai@ren-produce.com
   FAX:075-864-9700

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  (寄稿)熊野参詣を終えて
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  この嵯峨野文化通信でも案内していた「熊野参詣ツアー」が、5月30日から6月1日
 に行われました!
  前回メルマガ81号に引き続き、「熊野参詣コーナー」として熊野参詣ツアーの報告を
 していきたいと思います!
  今号は、ツアーに参加した今様・白拍子教室のメンバーからの寄稿と、去る6月27日
 に行われた護法送りの報告を載せています。ぜひ一読いただき、熊野参詣ツアー、そして
 古代から行われている護法送りの儀式の様子を追体験ください。

  ●熊野参詣ツアーに寄せて 

                                   杉浜 奈菜 
  
  5月30日~6月1日、熊野三山に参拝し、熊野本宮大社、速玉大社で今様を奉納する
 機会に恵まれた。まず出発の日の朝に、鳥羽離宮跡である城南宮にて道中の安全を祈願し
 た。その際、本殿の屋根に大きな烏がとまっているのに気付き、八咫烏を神の使いとする
 熊野に詣でるにあたって幸先のよい出発だと感じた。初日は時折雨が強く降っていたが、
 道中に幾つかの王子社に立ち寄った際には不思議と雨が止んでおり、雨上がりの清々しい
 空気の中で参拝することができた。

  翌日、本宮大社では石段を昇り、見上げれば首が痛くなるほどの巨木に囲まれた本殿前
 で今様合わせと舞を奉納させていただいた。烏の鳴き声と木々の間を抜けていく風の音だ
 けが聞こえる、静かな場所であった。その後、明治22年まで本宮社殿のあった大斎原へ
 向かう。今回の旅に同行してくださった朧谷先生が是非にとお勧めしてくださった場所で
 ある。現在は二基の石祠が祀られているのみだが、以前はここに現在の八倍と言われる規
 模の社殿があったそうである。石祠の御前にて今様と舞を奉納させていただく。山と川に
 囲まれた美しいところで、舞っていて非常に気持ちがよかった。これもまた不思議なこと
 に、本殿前で奉納した際と、大斎原で奉納した際の両方で、大きな黒揚羽蝶がゆったりと
 私たちの周りを飛び続けたのである。「あれは後白河院でしょうか、後鳥羽院でしょうか」
 と私が言うと、太田先生が「揚羽蝶は平家の紋だけれど、黒となると、表向きは平家側に
 付きつつ、裏で謀略を巡らせていた後白河院かもしれない」とおっしゃったのが非常に印
 象に残っている。
  この日は非常に暑く、さらに朝が早かったことと緊張とが相まって、大斎原での奉納後
 少々疲れてしまっていたのだが、次に速玉大社で奉納させていただく時間になると、スッ
 と汗も引き、心が落ち着いていた。速玉大社ではご神体の鏡の目の前で奉納させていただ
 いた。後白河院が『梁塵秘抄口伝集』で書いているような、鏡が揺れたりすることはもち
 ろんなかったが、拝見しながら舞っていると、知らず知らずのうちに緊張がほぐれていっ
 たように思う。また、宮司様に、私たちが奉納させていただいた場所ははるか昔に後白河
 院も座った場所とお教えいただき、平安の昔から変わらずそこにあり続ける熊野の凄さを
 感じて鳥肌が立った。
  熊野へ実際に訪れて感じたのは、熊野は正に中上健次が指摘していたように、悉く問い
 を抱いた者の鏡に映った似姿であったということである。死者を求めてくれば死者に会い、
 喜悦を求めてくれば喜悦を見つけるが、それは実体ではない。古来より男女貴賤信仰問を
 わずに、全ての人々を受け入れ続けてきた熊野。その何と異様で得体が知れないことだろ
 う。熊野の信仰の本質とは、恐らく神や仏、ましてや目に見えるものではなく、梛の葉を
 揺らす風、絶えることない滝の飛沫、夜明けの鏡のきらめきそのものであったにちがいな
 い。目に見えず、ふとそれに気づいた瞬間にはもうそこにはないもの、それが熊野の姿で
 ある。熊野御幸を繰り返した上皇や女院も、三山に詣でることが目的というよりも、目に
 は見えない、観念的な何かを求めて繰り返し熊野に詣でていたのではないだろうか。何で
 もあって何でもない、何だかよくわからないもの、言葉にできないもの、それが熊野が熊
 野である所以であるように思う。遠きにありて思う故郷のように、古来より人々は熊野に
 憧れを抱いてきたのだろう。
  京都に帰ってきた私の目にもまた、威厳を持った深い山々と青い海の熊野が、ありあり
 と見えている。

  最後に、本宮大社、速玉大社の皆様をはじめ、今回の旅でお世話になった全ての方々に
 心からお礼を申し上げたい。

  ●稲荷奉幣・護法送り
                                   松田 菜月
                      
  6月27日に、京都の伏見稲荷神社において「護法送り(ごほうおくり)」を行いまし
 た。この儀式は藤原定家の日記である『明月記』などの文献に記述があり、熊野詣を行う
 にあたり稲荷社に詣でて道中の加護を祈り、また参詣後も詣でて道中の無事を感謝する意
 味で行われた儀式であるようです。今様・白拍子教室に通う学生が文献を調べ、どのよう
 な手順で護法を送るのか話し合いました。筆者も、勉強会のみですが参加させていただき
 ました。

  当日はまず、伏見稲荷にお参りをし、稲荷山を中腹まで登りました。また調べた文献の
 中に氷を食したという記述があり、これに則って途中のお店でかき氷をいただきました。
  その後四条河原町に移動し、鴨川の河原に下りて全員で「護法送りの願文」を読み上げ
 ました(注1)。
  そして熊野参詣の折にいただいた梛の葉を川に流し、護法送りを終えました。

  鴨川の河川敷で、全員で願文を唱和するなど普段は行えない体験が出来、皆さん楽しま
 れたようです。(そして橋の上から見られた方の目にはちょっと異様な光景が映っていた
 ことでしょう・・・)また文献には烏にお布施として洗米を供えると書いてあったのです
 が、烏は見当たらなかったようです。

  文献を自分たちで調べ、それを自分たちでまとめて実践するというのは私たち学生にと
 ってとても良い経験になりました。後白河上皇や平安貴族たちが行った儀式を追体験する
 ことは、本で習うだけよりも確実に楽しいものです。また、実際に行うことで、想像の域
 を出なかったことが目の前の光景となり、理解が深まりました。

  注1:「護法送りの願文」とは・・・
  以下の言葉が願文の内容です。護法送りの際、この願文を読んだという文献資料に基づ
  き、読み上げました。「諸の大檀那本国に還着して日頃の間五体に恙無し、身分に愁無
  くして御参詣の志を遂げしめまします。遍へに是護法の御加護なり。仍て更に白妙の幣
  帛を捧げ、神徳を御処に荘、早く本土に帰りましまして、今日より以後は辱くも本土に
  留居し玉い、信を檀那に施して、息災安穏増幅長寿の無辺の善願を一々に満足せしめ御
  すべき義也。」(宮家準『神道と修験道 民族宗教思想の展開』春秋社、2007年)

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                             (連載)『丹後と京都』
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       第十二回 まだ覚めやらぬ熊野ツアー「濡れわらじの入堂」          
                         
                                    太田 達

  前号に引き続き熊野特集号ということで、今回も、熊野について触れてみたい。

  今回のツアーは今様奉納の旅であったのだが、藤原定家の『明月記』をテキストにして、
 前もって勉強会を開催した上で、道中も読み合わせながらの旅であったことが、参加者に
 とって非常に趣き深い旅となった因であろうかと思われる。
  私にとって、最も印象に残ったのは「大齋原(おおゆのはら)」である。明治22年の
 大水害で流出するまで熊野本宮大社の神殿が鎮座していた旧社地である。熊野川、音無川、
 岩田川の合流点であるこの巨大な玉砂利に囲まれた広大な聖域(過去は今の8倍の面積が
 あったとか)は、日本一の大鳥居(高さおよそ33メートル)によって、中辺路からも、
 湯の峰からも、また、新宮からのそれぞれの最後のアプローチから、はっきりと目的の聖
 地が目の前であることを告げ、巡礼者に最大の感動をあたえてくれる。広大な川砂利の中
 州に浮かぶこんもりと浮かぶ円球の森、なんだか懐かしく人々をいざなう自然の造形。ま
 さに神の坐まします光景である。

  「はて、この景色、どこかでみたことあるぞ」「そう、木枯らしの森だ!」

  新幹線で上京する度毎に、わたしは、静岡を通過する直前、進行方向に向かって左を見
ることにしている。ここは富士山が初めて見える場所でもあるのだが、それよりも安倍川
の白い広大な中州、藁科川と安倍川の合流点のやや川上にあるこんもりとした半球体とも
いえる森、これが『枕草子』に「森は、木枯らしの森」といわせしめ、のちに歌枕にもな
る「木枯らしの森」である。
実にこのなつかしさ、愛しさはなんなんだろう。「大齋原」と同じではないか。静岡出
身の学生さん達に聞いたことがあるのだが、彼らは、小学生の時の遠足で必ず「木枯らし
の森」に行くらしい。またそのとき、「木枯らしの森」のある島には、靴を脱ぎ膝まで水
に浸かり川の中を行くと云う。これぞ、明治22年までの熊野本宮大社への参拝方法「濡
れわらじの入堂」ではないかと、ひとりで盛り上がってしまったことを思い出した。

  そうそう、この駿河の国の「木枯らしの森」にも定家の歌がある。「消わひぬ うつら
 ふ人の 秋の色に みをこがらしの 杜の下露」

  次号も、「大齋原」と「木枯らしの森」について考えてみたい。

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                          (連載)『ニッポン城郭物語
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          ―第四十一幕―  ~城の整備にまつわる話~                                  

                                   梅原 和久

  城は時の領主が自らの威信をかけて築いたものだが、財政状況によっては計画より縮小
 したり、整備計画自体が頓挫したりすることはよくあった。落雷等で天守を失った後、財
 政難を理由に再建されなかった城(江戸・大坂・二条といった幕府直轄の城でさえも例外
 ではない)や、途中まで築きながらも、未完成のまま幕末を迎えた城(伊賀上野城が典型
 )などがそれにあたる。

  そして、同じようなことは現代でも起こりうる。強烈なキャラで話題を集める河村名古
 屋市長が就任直後、これまで長年検討が進められ、ようやく今年の1月から着工したばか
 りの名古屋城本丸御殿の復元にストップをかけたことは記憶に新しい。この不景気の中で
 「御殿」を作るのはいかがなものか、というのだ。
  先日、この御殿復元事業の賛否を問う公開討論会「たかし市長の本丸御殿本音トーク」
 が市長司会のもとで開催された。反対派からは「他に使うことがあるのでは」「所詮はに
 せもの。客は来ない」といった辛辣な意見も出されたが、会場の参加者の意見は賛成が約
 7割ということで、このプロジェクトは無事継続される見込みとなった。

  とりあえず一件落着か、と思いきやこの市長、討論会の最後に派手にブチ上げた。衆議
 院議員時代からの持論でもある名古屋城天守の木造による再建構想である。翌日の会見で
 も「本気度は百%。都市として自慢できるものが欲しい。今のコンクリート製の天守閣で
 は『名古屋人として寂しいんでないの』と強調したい。」とのこと。
  城マニアからすれば嬉しい提案ではあるが、実現へのハードルの高さは本丸御殿再建の
 比ではない。建設費が本丸御殿の3倍以上の500億円というのもそうだが、何と言って
 も天守台の上には現に復元天守が建っているのである。当時の建設費の3分の1が市民か
 らの寄付であったことも含め、簡単に壊してしまう訳にもいかないだろう。

  何より、同じ名古屋城の整備でも前市長の肝いり事業である御殿再建には反対、自分の
 構想は推進、というのが何ともすっきりしないところである。経緯はともかく、整備が進
 むこと自体は歓迎すべきことなのだが。

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                     (連載)『やまとのくには言の葉のくに』
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                  第四十七首                 

                                   田口 稔恵

  いづこかにかすむ宵なりほのぼのと星の王子のかげとかたちと
                               内藤濯

  作者の名は、「ないとう あろう」と読む。この名前に覚えはなくとも、和歌の四句は
 誰しも知っているはずだ。
  「星の王子さま」と名付けられた、サン=テグジュペリの作品は、原題を『ル・プティ
 ・プランス』つまり、「小さな王子」という。テグジュペリ自身の描いた素朴な挿絵、飛
 行機の操縦士だった彼の人生を反映した、童話と呼ぶにはあまりに示唆に富んだ素晴らし
 い内容ゆえに、世界中で愛読されている。
 
  しかし、日本でこれほどまでに長く読み継がれている理由は、訳者である内藤濯の功績
 抜きには語れない。『孟子』の一節から「濯」と名付けられた訳者は、しかし、やまとこ
 とばの響きを重んじた人であった。フランス語を日本語に「置き換える」作業でなく、原
 作の語のもつ本質を、韻律においても、意味においても、生かす訳を心がけたようだ。音
 読に耐えうる文章とするために、口述筆記による試行錯誤が繰り返されたと伝えられる。
  その一端は、すでにタイトルに現れていよう。『小さな王子』と訳された、あの作品を、
 我々は想像できようか?あの砂漠に舞い降りた少年の心象を、『小さな王子』という言葉
 で代弁できようか?
 
  当時、日本では知られていなかった『ル・プティ・プランス』の訳を打診されたのは、
 『チボー家の人々』の訳者として知られる山内義雄だったが、このリズムの美しい作風は、
 ぜひとも内藤先生に訳してもらうべきだ、と推薦したという。慧眼によって導かれた出会
 いは、やまとの国に、珠玉の作品を産み落とすこととなった。

  ともに音律を尊ぶフランス語とやまとことば、純粋で、子供であった頃の心を大人にな
 っても持ち続け、それゆえに様々な葛藤に悩んだ二人の男ー作者と訳者。その出会いが結
 晶となり、星の王子を形づくった。ここでは作品の内容に触れることはできないが、ぜひ
 とも原作を手にとって、その「奇蹟の出会い」を目撃してほしい。

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 ◆[嵯峨野学藝倶楽部] 7月開講講座のお知らせ ◆
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 詳しくは、http://www.ren-produce.com/sagano/club/をご覧下さい。

 ★「茶道教室(水曜日コース)」
  日程:7月1日、15日(いずれも水曜)
  時間:13時~18時(ご都合の良い時間にお越し下さい)
  講師:西村 宗靖・太田 宗達
  ※見学/体験も、受付けています。
 
 ★「茶道教室(土曜日コース)」
  日程:7月4日、11日、25日(いずれも土曜)
  時間:15時~20時(ご都合の良い時間にお越し下さい)
  講師:西村 宗靖・太田 宗達
  ※7月18日分は、25日に振替えになりました。
  ※見学/体験も、受付けています

 ★「京文化を語ろう」
日程:7月11日(土曜)
時間:11時~12時30分(90分)
  講師:太田 達
テーマ:「宗教から京都を考える~天台・真言~」
参加費:1回1,000円(茶菓子付)
  ※1回のみの参加も、受付けています。

 ★「今様・白拍子教室」
  日程:7月18日(土曜)
  時間:12時~14時
  講師:石原 さつき
  ※7月4日、25日分は、18日に振替えになりました。
  ※見学/体験も、随時受付けています。
   性別・年齢・経験は問いません。

 ★「うたことば研究会」
  日程:7月18日(土曜)
  時間:14時~15時30分
  監修:田口 稔恵
  ※資料代等が必要です。詳細はお問合せ下さい。

 ★「京都歴史講座」
  日程:7月19日(日)
  時間:11時~12時30分(90分)
  講師:中村 武生
  テーマ:「精華町の旧蹟」
  参加費:1回 1,000円 (茶菓子付)
  ※1回のみの参加も、受付けています。

 ●URL
  http://www.ren-produce.com/sagano/club/
 
お問合せ・お申込みはコチラまで→sagano@ren-produce.com

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  梅雨に入りましたね。京都は連日雨が降ったりやんだりしています。

  先日、上七軒の「感謝の集い」にボランティアスタッフとして参加してきました。この
 日も昼から雨が降ってしまったのですが、夜になるとさらに激しく降りました。
  お茶屋さんのお母さんとお話をさせていただいたのは初めてだったのですが、とても優
 しく気遣っていただき、雨でも頑張ろう!!と気合いを入れました。
  長く伝統を守り続けてきた上七軒の、魅力の理由を垣間見たような気がしました。
 
                                   (まつだ)

     [次回は、7月15日(金)に配信予定です!次回もお楽しみに。]
 
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多くの方に有斐斎弘道館の活動を知っていただきたく思っております。
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