嵯峨野文化通信 67号

伝統文化プロデュース【連】メールマガジン 
 
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              〔嵯峨野文化通信〕 第67号
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         日々の暮らしに「和」の魅力をプラスしてみませんか?

    伝統文化プロデュース【連】は、日本の伝統文化にこめられた知恵と美意識に

          ついて、学び広めていくための活動をしている団体です。

         京都・嵯峨野から、最新の情報を皆さんにお届けします!
               毎月1日・15日(月2回)

★VOL:67 (2008/11/15)
 
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 ○【連】からのお知らせ ———————- 大覚寺夜間特別拝観 今様奉納
  ○(連載)『京都タイムトラベル』————- 第三十二回
  ○(連載)『伝統文化と私』——————- 第七回
  ○(連載)『やまとのくには言の葉のくに』—– 第三十六首
  ○[嵯峨野学藝倶楽部]11月開講講座のお知らせ
 
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 【連】からのお知らせ
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 ○大覚寺夜間特別拝観 今様奉納

  11月29、30両日、大覚寺夜間特別拝観にて、最終週の土曜・日曜に今様奉納を行
 います。
  嵯峨野学藝倶楽部の「今様・白拍子教室」は、右京区が行っている「まちづくり支援制
 度」の一環として教室受講料の補助を受けています。今回の大覚寺奉納は、教室参加者も
 出演するなど、この事業の報告会を兼ねたものでもあります。
  今様に関わりの深い右京区の方に、もっと今様を身近に感じてもらい、そしてこの芸能
 を現代に生かそうという活動についても知っていただきたいと思います。もちろん、他地
 域にお住まいの方も、ぜひ今様の世界を体感してみてください!!
  宵闇の中、ライトの明かりに美しく浮かび上がるもみじの葉、紅葉に色づく境内、優雅
 な今様歌に白拍子。11月の終わり、空気の済んだ気持ちの良い夜空の下、秋の夜長を風
 流に過ごしてみてはいかがでしょう。
  大覚寺の拝観料500円は必要ですが、今様の奉納は自由に観ていただけますので、お
 時間おありの方は、ぜひお立ち寄りください!!
 
  日程:11月29日(土)、30日(日)
  時間:午後6時〜/午後7時〜 (2回公演)
     ※夜間特別拝観は午後5時〜午後8時30分です。
  場所:大覚寺(JR京都駅から市バス28系統・京都バス71系統「大覚寺行き」)
    ※申込み不要です。観覧自由ですのでお気軽にお越しください。

 ※大覚寺HP(夜間特別拝観特設項)より
   http://www.daikakuji.or.jp/news/index.html

 ※市民しんぶん 右京区版HPより
   11月15日発行の市民しんぶん「うきょう」にも今様・白拍子教室について掲載さ
  れています。
   http://www.city.kyoto.lg.jp/ukyo/page/0000049996.html

 ※リビング京都(西南版と東南版)より
   11月8日発行のリビング京都にも今様・白拍子について掲載されています。
   リビング京都は駅などに置かれているフリーペーパーですので、ぜひ手にとってご覧
  下さい。
   http://www.kyotoliving.jp/watching/1108w/06.pdf

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        (連載)『京都タイムトラベル』―京都・時空・逍遥・記―
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第二十三回 此岸と彼岸、結ばれるもの
                  太田 達

  洛中洛外図における、五条の橋(秀吉以前、今の松原橋)は二重橋として描かれている。
 「二重橋」と聞くと皆さんは皇居を思い出すのではないだろうか。「はとバス」を利用し
 て観光をするとラストに「二重橋」をバックに記念写真を撮ってくれるはずである。皇居
 の「二重」とは多分、眼鏡橋構造をさしているのであろう(※)。橋というものは、1ア
 ーチが一橋と数えることもあるのだろうか。岩国錦帯橋はどう考えればいいのだろう?古
 代においては、中州を島として石垣などで補強し短い橋をつなぐ工法の方が容易である。

  五条橋に戻ろう。平安期、此の橋は大観音霊場である清水へのエントランスゲートであ
 った。『清水寺参詣曼荼羅』に描かれている中島は、まさに此岸と彼岸の境界にみえる。
 平安後期様々な祭祀場(迎接会)であったことは間違いないであろうし、そこは、折口的
 な境界に存在する「中間にどちらから来ても踏み越えねばならぬ空虚な地帯」であったで
 あろう。中島には大黒堂があり勧進聖の長柄の杓がみえる。これは江戸時代から明治にか
 けて、伊勢は五十鈴川の宇治橋の、銭ひろいの長柄にみえる。中心と周縁の対立構造では
 なく、俗から聖への入門である橋は、霊場(祈りの空間)として構造化された空間の一部
 分と考えられよう。
  橋単体を構造として考察する時、橋の真ん中が高く盛り上がった所謂「太鼓橋」形状こ
 そ、この中島と、同様の効果と考えていいと思う。『山城名勝巡行志』に「待賢門院、此
 橋にて弥陀尊聖衆、空中に来現したまふを拝見し給所也」の「橋」は双ガ丘東麓の法金剛
 院、境内西側の御室川に掛かっていた「極楽橋」の伝承である。待賢門院が橋の上で、嵐
 山の嶺から半身を現す山越阿弥陀の尊容を見た、と云う橋の上ど真ん中が、弥陀迎接会の
 装置となる事が橋のもつ本来の意味を示唆しているであろう。
  『山城名勝巡行志』からさらに時代をのぼる『播磨国風土記』にその答えの示唆がある。
 「石の橋ありつたえていえらく、上古の時、此の橋天に至り、八十人衆上がり下り往来」
 天地をつなぐ、天上への往来、住吉神社や多賀大社の角度50度もありそうな強烈な「太
 鼓橋」を思い出して頂きたい。あの急坂が実用の為ではない事は明白である。下から見上
 げると頂上の橋板の先には天空しか見えない。
  早速、双び丘あたりに天上のエントランスをさがしにいきたい。
                                      了

  ※城マニアから突っ込みを一つ。現在は、西の丸大手門の手前にかかる石造の橋と、奥の
   鉄筋の橋が、堀端から見ると二重に見えることから「二重橋」だと説明されることが多
   い。しかし、実際は、江戸時代にこの奥の橋(当時は木造)の下に足場のための橋があ
   って、二段構造になっていたことから「二重橋」と呼ばれた、というのがそもそもの由
   来である。(梅原)
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                            (連載)『伝統文化と私』
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                  第七回
                              大学1回生 杉浜奈菜

  伝統文化に触れたきっかけと言われても、よく思い出せない。幼いころから歴史好きで、
 勾玉から昭和レトロに至るまで昔のものが大好きだった。私の中では長らく伝統文化と歴
 史はイコールだった。伝統文化っていいよなぁ、どっぷり浸かって暮らしてみたい…と思
 うようになったものの、調べれば調べるほど、能や華道や歌舞伎といった伝統文化は私に
 とって遠いものになっていった。費用が多くかかるし、コネがものを言う世界という先入
 観もあり一般人にはどうしても入りにくいように見えた。結局、触ることが不可能な、神
 棚に飾られているのを遠くから観ているだけ、というのが私にとって伝統文化だった。

  その後、ふとしたきっかけから寺社案内のボランティアを経験するようになる。これが
 なかなか大変で、事前に何回も下見をし、寺社の方の説明を聞き資料を捲り、声を枯らし
 ながら説明の練習をして、場合によっては周辺の地図まで眺めながら、拝観者の予期せぬ
 質問に備えるのだ。こうして拙いながらも人に文化財について説明する側にまわったとき、
 充実感とともに「やっぱり伝統文化を、観ているよりも触りたい。そして他の人にも触っ
 てもらいたい。」と思うようになった。伝統文化はもっと気軽なものになってもいいので
 はないか、「日本の伝統文化」と銘打つくらいなら、もっとそれを一般の人々が共有して
 もよいのではないか。「知らない」と「知りたい」という気持ちを持って伝統文化に向か
 っていくことはできないかと考えるようになった。

  さらにその後、連の活動に参加させてもらうようになり、伝統文化との距離が少し近く
 なったような気がする。いきなり「お茶立ててみて」と言われたり、様々な場所で今様を
 奉納させていただいたりと「素人の私がいきなりこんなことやって許されるのかしらん」
 と心配になってしまうようなことをいろいろと体験させてもらった。そして伝統文化につ
 いて、気軽な気持ちであっても、大して知らずとも「知りたい」と思う心を持っていれば、
 近づいてもいいのだなと思えるようになった。

  文化は、安定を得ようとしすぎると硬直化し、逆に自由を求めすぎると解体してしまう。
 定型化した文化を反復するものはなにも新しいものは生み出さないが、永遠に革命的であ
 り続けられるような文化は存在しない。秩序と変化の両方に配慮しながら均衡を保つこと、
 それが伝統文化の構造だろう。連の活動は、「内」と「外」とか「今」と「昔」とかの境
 界線をひょいと飛び越えるような、軽やかさを持っている。伝統に一定の敬意を払いつつ、
 よりよいものに変えていこうとするエネルギーを感じる。文化とはこのようなところに存
 在していくのではないだろうか。もっと伝統文化が人々にとって、観ているだけのものか
 ら触れられるものへと変わっていけばいいと思う。連での活動を通して、伝統文化と人々
 の関わりをこれからも模索していきたい。

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                       (連載)やまとのくには言の葉のくに
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                   第三十六首
                                   田口 稔恵

  秋の田のかりほの庵の苫をあらみ わが衣手は露に濡れつつ
  (天智天皇 後撰集 秋中)

 (秋の稲田に作られた仮の番小屋で夜を明かしていると、その屋根を葺いた苫の編み目
  が粗いので、私の袖はしきりに夜露に濡れるのだ。)

  百人一首の冒頭の一首として、あまりに名高い歌である。百人一首は、天智・持統の父娘
 である天皇の歌二首から始まり、後鳥羽・順徳の悲劇の天皇の歌二首で締めくくられている。
 百人一首が、どのような意図のもとで構成されたかが垣間見られ、興味深い。
  天皇の歌が「かりほの庵」「露にぬれつつ」とは面妖な、と、初めてこの歌に接した時、
 思いはしなかっただろうか。現在、この歌は、天皇が、農民の収穫時の苦労を思いやって、
 その身になりかわって詠んだとされている。一方で、「万葉集」巻10の詠み人知らずの歌
 「秋田刈る仮庵を作りわが居れば衣手寒く露そ置きにける」が改作され、天皇御製とされた、
 という指摘もなされている。

  この歌が、天智天皇の手になるものか、という真贋はこの際問題でなく、天智天皇ならそ
 う詠んだであろう(そうあってほしい)と考えられていたということが重要である。
  当時の人々から見た天皇は、国を統率するが、それは決して武力による圧迫ではなく、国
 民の心に寄り添い、痛みを分かち、祈ることによって国を平らかならしめるのが理想だ、と
 されていたことがわかる。
  秋の夜寒に身をおくことは立場上叶わないけれど、心は常に、国の栄えのため田畑を耕す
 農民の側に在る、という天皇の想いを詠み込んだ歌といえる。農は国の礎であるべき、とい
 う理想に対して、現代人の認識は著しく甘い。農に対する価値観をうち捨ててきた日本の食
 料自給率の低さを認識していれば、食品偽装の問題もこれほどまでではなかったかもしれな
 い。

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 ◆[嵯峨野学藝倶楽部] 11月開講講座のお知らせ ◆
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 詳しくは、http://www.ren-produce.com/sagano/club/をご覧下さい。

 ★「茶道教室(水曜日コース)」
  日程:11月19日(水)
  時間:午後1時〜6時(ご都合の良い時間にお越しください)
  講師:西村 宗靖・太田 宗達
  ※見学/体験も、受付けています。

 ★「茶道教室(土曜日コース)」
  日程:11月15日、29日(いずれも土曜)
  時間:午後3時〜8時(ご都合の良い時間にお越しください)
  講師:西村 宗靖・太田 宗達
  ※見学/体験も、受付けています

 ★「今様・白拍子教室」
  日程:11月29日(土)
  時間:午後1時〜2時(60分)
  講師:石原 さつき
  ※見学/体験も、随時受付けています。
  性別・年齢・経験は問いません。

 ★「京文化を語ろう」
日程:11月29日(土)
時間:午前11時〜12時30分(90分)
  講師:太田 達
テーマ:「観光」
参加費:1回1,000円(茶菓子付)

 ★「京都史跡ものがたり〜三宅安兵衛の石碑をたずねて」
  日程:11月30日(日)
  時間:午前11時〜12時30分(90分)
  講師:中村 武生
  テーマ:「石川丈山・長澤蘆雪・与謝蕪村ら旧蹟」
  参加費:1回 1,000円 (茶菓子付)
  ※1回のみの参加も、受付けています。
 
 ●URL
  http://www.ren-produce.com/sagano/club/
 
お問合せ・お申込みはコチラまで→sagano@ren-produce.com

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  先週11月9日のもみじ祭りで、お船に乗ってきました!
  赤や黄色に色づいた嵐山を見ながら、静かな波に揺られるのが本当に気持ちよくてう
 とうとしたのはここだけの話です。(笑)
  将来は舟遊びができるお池を作れるようなお屋敷に嫁ぎたいなぁ、と真剣に考えてし
 まいそうです・・・。
  少し寒かったですが、ゆったりと充実した時間でした。最近急に冷え込んだので、紅
 葉がきれいだそうですね。いろんな所をめぐって美しい日本の秋を楽しみたいです。

                                  (きしもと)

     [次回は、12月1日(月)に配信予定です!次回もお楽しみに。]
 
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多くの方に有斐斎弘道館の活動を知っていただきたく思っております。
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