嵯峨野文化通信 第3号

☆————-伝統文化プロデュース【連】メールマガジン————-
      〔嵯峨野文化通信〕 第3号 2006年3月15日
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 伝統文化プロデュース【連】は、日本の伝統文化にこめられた知恵と美意
 識について、学び広めていくための活動をしている団体です。

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 ■□■ もくじ ■□■

 1.【連】の今後の催し
 2.京都をめぐる歳時記 〜春分の章〜
 3.新・都鄙の連関(新連載)
 4.京都文化警察(新連載)
 5.メンバー紹介

◇━━ 1.【連】の今後の催し━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━◇

○二条城築城400年記念「今様公演」

 【連】のメンバーの多くが関わっている日本今様謌舞楽会(にほんいまよう
うたぶがくかい)が、普段は非公開の二条城台所において、今様合(いまよう
あわせ=今様歌を競う遊び)と白拍子舞を披露します。
 今様は、平安時代後期に流行した芸能で、おもに七五調四節からなる歌謡で
す。ぜひお越しください。

 日 時:3月25日(土)、26日(日)
     午後3時〜4時・午後7時〜8時(1日2回公演)

 場 所:二条城・台所(特別公開)

 入城料:午後4時30分まで/一般600円(午後5時閉城)
     午後6時から9時まで/一般400円(二条城ライトアップ)

●二条城のホームページ
http://www.city.kyoto.jp/bunshi/nijojo/

◇━━ 2.京都をめぐる歳時記 〜春分の章〜 ━━━━━━━━━━━━◇

 3月21日は「春分の日」ですね。これは、現在でも、立春・夏至など季節
を表す言葉として用いられている、二十四節季の一つ「春分」から示されてい
るって知ってました?

 「春分の日」の別名を「彼岸の中日(ちゅうにち)」といいます。彼岸は、
「春分の日」をはさむ前後7日間のことをさします。その、ちょうど半ばに当
る「春分の日」から冬の寒さが去って春が訪れるといわれ、「暑さ寒さも彼岸
まで」ということわざが生まれたんですよ。

 日本では第二次大戦後、昭和23年(1948)に「国民の祝日に関する法
律」で制定され[自然をたたえ生物をいつくしむ]という意味から国民の休日に
なりました。
 「春分の日」は、国立天文台の算出する天文学的春分日を元にして閣議決定
され、前年2月に官報で告示されます。天文学に基づいて年ごとに決定される
国家の祝日は世界的にみても珍しいそうで、第二次大戦前(明治初期)は春季
皇霊祭という国家の祭日でした。ヨーロッパなどでは春分をもって春の開始と
され、日本を含め幾つかの国では休日とされています。

 『暦便覧』に「日天の中を行て昼夜等分の時なり」と記されている通り、春
分では昼夜の長さがほぼ同じになります。実際には、太陽の上端が地平線と一
致した時刻を日出あるいは日没と定義しているために、春分を含む日の昼は夜
よりも数分長くなります。つまり、昼夜の長さの差が最も小さくなる日は、春
分の数日前になります。
 この日を境にして夏至まで昼間が徐々に長くなり、夜が短くなっていきます。
日本で昼夜がほとんど等しくなるのは、春分より3日前なんですよ。

〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜「春分」の時季を楽しむために 〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜

 京都市では、「春分の日」を<伝統産業の日>として制定しています。
悠久の歴史に培われた京都には、西陣織・京友禅・京焼・清水焼をはじめとし
た数多くの伝統工芸品があります。今年も3月21日を中心に、京の匠の技に
触れることができる「京の伝統工芸・技の体験教室」が開催されます。
 1200年余の古都・京都の魅力を、再発見できるかもしれませんね。

 「京の伝統工芸・技の体験教室」
  日 程:3月18日(土)〜21日(火)
  場 所:西陣・室町・岡崎・東山界隈など
  ※着物姿の方には、市バス・地下鉄無料乗車や二条城・美術館などの文化
   観光施設への無料入場などの特典があります。
   (詳しくは、下記の「伝統産業の日」のホームページをご覧下さい)

●「伝統産業の日」のホームページ
http://www.city.kyoto.jp/sankan/densan/densannohi/

◇━━ 3.新連載『新・都鄙の連関』━━━━━━━━━━━━━━━━━◇

       新・都鄙の連関 ―1―         太田 達

 日本列島にクニと呼ばれる都市的集落が誕生してから、1800年あまり。
その三分の二近くの1100年間は、「京都」と「地方」(京都でない場所)」
との間のヒトの営みの歴史である。
 ヒトが生み出したモノは文化であり、モノは移動する―たとえば、律令体制
下の租・庸・調、『風土記』にみられる物語、『延喜式』にみられる諸国貢進、
神人、供御人、その後の商人たちのモノの流通。
 これらは、道の発達を促し、京都を中心に日本国中にミクロメッシュの連絡
網を作り上げた。それは、人体の血管の動静脈のようである。
 物流に重なるように、心の流れである仏教や、貴族文化の様式、祭礼など、
様々な文化の流れもある。
 [地方=鄙]。この表現は、京都人の身勝手な中華思想ととられがちである
が、実は、多少の例外はあるものの、日本の歴史の中には、京都とそれ以外の
場所しかなかった。今回、[地方=鄙]と表記するのもそれゆえである。
 地方を旅した時、京都人である私にとって、なつかしさや、類似点を、その
土地の衣食住、まつり、芸能などにみつけることがある。その一つひとつを次
回から尋ね歩いてみることにしよう。             
                               (つづく)

◇━━ 4.新連載『京都文化警察』━━━━━━━━━━━━━━━━━━◇

 今年もまた、東山一帯で開催される「花燈路」のポスターがここかしこで目
につくようになった。
 一度目が[成功]と評価されたのか、昨冬は嵐山嵯峨一帯でも催されたほど
著名になったこのイベント。新たに、衣笠あたりでの計画もあると聞く。これ
ら一連の事業は観光客誘致に大きな成果をあげたとされている。が、はたして、
このまま続けていっていいのだろうか?

 実際、嵐山での花燈籠には疑問符を打たざるを得ない。
 とくに、[アート]を意識したと思われるオブジェ的[行燈]は、美の概念
からはほど遠いと言ってもいいだろう。いや、あるいは、悲しくも不本意に不
似合いなものを置くことで、景観に対する意識を高めようという、皮肉を込め
たショック効果を狙ったものではないかと最大限の良心的解釈を加えてはみた
ものの、いやいや違う、そうではないと、首をかしげざるを得ない。灯りがと
もる夜もさることながら、昼に見た時の情けなさと言ったら、見る者が目のや
りどころに困るほどだから気の毒としか言いようがない。
 闇の中の山々の稜線の美しさは、まさに墨絵の濃淡のごとくであり、日本の
美の世界をみいだすことができる。「点灯!」ではなく、「消灯!」の号令こ
そ望まれる。
 また、京福電鉄嵐山駅前の長辻通りは歩行者天国。そこに設置されていた赤
いコーンの列。あろうことにか、それらコーンの頂点には、洋花の造花の束が!
これは、犯罪である。美観を損ねるゴミと同じ。いや、生活感がない分、さら
に罪は大きい。
 一体、誰が、誰にはかり、これらのことが決められていったのだろうか。歴
史的かつ静かな日常の美を犯す権利が、一体誰にあるというのだろうか?

 「くまなき月の渡るに似る(亀山上皇)」とたとえられた渡月橋(法輪寺橋)
は、過去の景色か。月光はもう地上には降りられない。
                                (京雀)

◇━━ 5.メンバー紹介━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━◇

【連】のメンバーによる、自己紹介のコーナー。
3人めに登場するのは、教員の田口稔恵さんです。

 和歌山の熊野から、幼少からの憧れであった京都に来て、10年近くになろう
としています。現在は府立高校の国語科の教員です。大学院生の頃、太田達先生
の授業を聴講させていただいたご縁で、今様、茶道の世界へと足を踏み入れ、【
連】設立の際のメンバーに加えていただきました。
 明治・昭和の二度の大きな転換点を超え、忘れ去られようとしている日本人の
感性や宗教観、自然観などを、共に考え、次世代に引き継いでいきたいと考えて
います。

○O+編集後記+O○−-−-−-−-−-−-−-−-−-−-−-−-−-−-−-−-−

 今回も【連】のメンバーによる、新たな連載が始まりました!
連載モノって、話の続きが気になりますね。

 これからも、日本の文化に関する身近な話題や、京都の歳時記などについて、
皆さんにどんどんお知らせしていきます。

  [次の発行は、4月1日(土)の予定です。次回も、お楽しみに!]

   意外と知らない日本の文化を、一緒に楽しんでみませんか?
                                 (治)

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多くの方に有斐斎弘道館の活動を知っていただきたく思っております。
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