嵯峨野文化通信 第121号

 伝統文化プロデュース【連】メールマガジン

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  ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄)     [嵯峨野文化通信] 第121号
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 伝統文化プロデュース【連】は
 日本の伝統文化にこめられた知恵と美意識について
 遊びながら学び、広めていく活動をしている団体です

         
          嵯峨野文化通信は、伝統文化を「遊ぶ」ためのヒントを発信します

                毎月1日・15日(月2回)
 
                     ■VOL:121(2011/2/17)

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                ■□■もくじ■□■

  ■【連】からのお知らせ —————————-「梅香清風」茶会
                            「蕪村の春」茶会
                            「まめ市」のお知らせ
  ■『餅と饅頭ー和漢の境まぎらわす事ー』————- 第三十一回
  ■(連載)『源氏が食べるー平安文学に描かれる食ー』- 第二十二回
  ■(連載)『北野の芸能と茶屋』——————— 第二十五回
  ■(連載)『やまとのくには言の葉のくに』———– 第八十三首
  ■[嵯峨野学藝倶楽部]2月下旬・3月開講講座のお知らせ

  「嵯峨野文化通信 第121号」の配信が遅れましたこと、お詫び申し上げます。
  今後とも、読者の皆様のご期待にそえるよう精進してまいりますので、どうぞよろし
 くおねがいいたします。

             □■【連】からのお知らせ■□

 ■「梅香清風」茶会

  昨年12月、本年1月のお茶会に続く、有斐斎弘道館のお茶会です。
  弘道館は、江戸時代の儒学者皆川淇園が開いた学問サロンのような場所でした。有斐
 斎弘道館は、その跡地とされる場所に建っています。
  京都の街中にありながら、苔ふす庭が美しい趣ある邸宅です。若い学者たちが集った
 江戸の頃に思いを馳せたり、ゆったりとお庭を眺めたりと、穏やかな時間を過ごしに、
 ぜひ、いらしてください。申込み不要ですので、お気軽にどうぞ。

  日程:2月20日(日)
  時間:11時~15時
  場所:有斐斎 弘道館(京都市上京区上長者町通新町東入ル元土御門町524-1)
     ※KBS京都の北東角を西に入り、一筋目を越えて北側
  費用:1,000円

 ■「蕪村の春」茶会

 『奥の細道』や『のざらし紀行』で有名な与謝蕪村は、各所を歴遊したのち、京都に
 居を構え、京都でその生涯を終えました。
  学問サロンの弘道館に蕪村が訪れていたかはわかりませんが、蕪村の残した春の句
 とともに、春を感じるひと時をお楽しみください!

  日程:3月6日(日)
  時間:11時~15時
  場所:有斐斎(弘道館京都市上京区上長者町通新町東入ル元土御門町524-1)
     ※KBS京都の北東角を西に入り、一筋目を越えて北側
  費用:1,000円

 ■「まめ市」のお知らせ

  【連】の活動に協力してくださっているenfant(アンファン)さんが、「まめ市」に
 て和菓子を出展されます!
  「まめ市」は、悪性リンパ腫で闘病中の高田テルヨさん(豆ずきん作家)を応援する
 チャリティーイベントです。当日は高田さんを応援する作家、ミュージシャン達がイベ
 ントを行い、出店の売上げ、投げ銭は高田さんへカンパされます。
  ぜひお立ち寄りください。

  日程:2月27日(日)
  時間:12時~18時
  場所:河原町丸太町の路地裏カフェ「カフェ アイタルガボン」
     (京都市上京区中町通丸太町上ル俵屋町435)
  費用:入場無料

  enfantさんのHPはコチラ
  http://bestone.exblog.jp/

  「まめ市」HPはコチラ
  http://salicoo.net/mameichi/

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            ■『餅と饅頭ー和漢の境まぎらわす事ー』■

                    第三十一回

                                    太田 達

  □閑話休題 その七□

  吉野

  結界門は、女性差別に対しての落書きで無惨ともいえる印象を持った。2005年大峰
 山の女子禁制反対騒動の時の残跡のようである。どちらが先であったか不明なのだが、同
 時期に、大相撲の大阪場所で優勝力士に大阪府知事杯の贈呈の為に、太田房江知事が土俵
 に登る事の有無が問題になったことがあった。

  現在も残る禁制のエリアは、この「大峰」と、福岡宗像神社の「沖の島」くらいであろ
 う。明治維新の廃仏毀釈、特に修験道の解体により、明治5年の白山、立山、比叡山、明
 治10年の御岳、明治37年の高野山、そして、平成になって出羽三山の女子解禁とほと
 んどの修験の聖地が解放された今、神秘主義の最後の砦としての大峰はそっとしておいて
 ほしいと思う。

  行場においての異性の存在は、やはり「行」のさまたげであろう。それと、「金の御嶽」
 と呼ばれ、黄金神話につつまれた吉野奥駆道の周辺に、男女がそろい、そこに営みがもた
 れ集落ができることが、ここ吉野では、最もおそれられたことかもしれない。琉球の御嶽
 (ウガン)には、今も男子禁制のところがあるので、引き分けということでいかがでしょ
 うか、と、落書きに語りかけた。日暮れも近いので下山をいそぎ、また、川上村に引き返
 した。

          ■『源氏が食べるー平安文学に描かれる食ー』■         

                   第二十二回       

                                  荻田 みどり

  前回の春のたよりは、阿闍梨から宇治の大君・中の君に届けられた。父八の宮を亡く
 し、心細い冬を送っていた大君・中の君を励ますための雪間の芹と蕨であろう。
  しかし、父の死に打ちひしがれている大君・中の君に、阿闍梨の気遣いは届かない。
 「草木の様子によって、月日の移り変わりがわかるのも面白いことですね」と人々が言
 うのを、何が面白いのかと聞いているのである。そして、二人の歌、

   〈大君〉君がをる峰のわらびと見ましかば 知られやせまし春のしるしも
      (父君が生きて折り摘んでくださった峰の蕨と見えるのであれば、春が訪れ
       たしるしとうなずけるでしょうに。もう父君はいらっしゃらないので、こ
       のようなものを見ても春とは思えない。)

   〈中の君〉雪深きみぎはの小芹誰(た)がために 摘みかはやさん親なしにして
      (雪深い水際の小芹を、いったい誰のために摘んで興じようというのでしょ
       う。親もいない今。)

 父八の宮の死は、大君・中の君姉妹の心を頑ななまでに閉ざさせてしまった。宇治十帖
 の初めの巻である橋姫巻には、「春のうららかなる日影」に、八の宮と姫君たちが池の
 水鳥などを見て唱和する和やかな様子が描かれていた。
  八の宮亡き春の訪れは、姉妹の心を躍らせることはない。宇治十帖に秋の描写が多い
 由縁であるかもしれない。

               ■『北野の芸能と茶屋』■             

                   第二十五回                

                                   井上 年和

  天正十五年(1587)10月1日~10日

   「天正十三年十月朔日北野松原におゐて茶の湯を御興行有て、都鄙数寄者共の気味、
    或風情或茶具等を一覧なさるべきとなり。」   『太閤記』

  天正十五年(1587)10月朔日、豊臣秀吉は北野社拝殿において自ら点茶して奉
 献し、境内には茶席を設けて天下の数寄人を集め、珍器を展観し、貴賤に拘わらず雅筵
 を設けることを許して境内を賑わし神慮を慰めた。いわゆる北野大茶会である。

  北野大茶会については竹内秀雄著の『天満宮』に詳細が記されており、これをなぞる
 格好になるが一応ここでも紹介しておこう。

  天正十五年(1587)5月には九州の島津氏を平定した秀吉は、茶道を利用して殺
 伐とした戦国の世風を取り除き、和平の気風を助長するとともに、天下の名器を出陳し
 てその威光を示し、人心に風雅の趣味を持たせようとしたのである。

  8月には既に洛中、堺、奈良など諸所に北野大茶湯の高札が立てられた。また、9月
 13日には聚楽第が造営されたので大阪から移り住み、北野大茶会の準備に取りかかっ
 た。

  会場設営には吉田神社の神主である吉田兼見が携わっていたようで、天正十五年(1
 587)9月3日に薬院から北野茶の湯のことを仰せつけられ、同9日には皆で相談し、
 同19日には小屋構えのことを大工吉左右衛門・平二郎に命じ、28日には造立に着手
 し、29日に大部分が完成した。この時北野経王堂から松梅院近傍まで一間の空所もな
 く茶席8百余りが造作されたのである。そして、30日には茶湯道具を長櫃に入れるな
 どの準備を整えていたが、関白秀吉が自ら北野へ下見に現れた。

  さて当日、秀吉は朝の4時から北野境内へ姿を見せ、拝殿を屏風で囲み、日頃から集
 めておいた茶道具を取り出し、五所に座敷を構え、秀吉自ら茶を点じて公卿や家康、秀
 長、利家、利休等に御茶をくだされてから、御小姓を10人ほど引き連れ会場へ乗り出
 したのだ。会場では様々な趣向、思い思いの営みによる数寄が披露されており、この日
 北野松原一帯は大茶湯場と化したのだ。

            ■『やまとのくには言の葉のくに』■          

                   第八十三首                 
 
                                   田口 稔恵

  春や疾(と)き花や遅きと聞き分かむ鶯だにも鳴かずもあるかな
  (『古今和歌集』春上 藤原言直)

 (春になったのに梅がまだ咲かない。それは、春が来るのが早すぎたのか、それとも梅の
 花が咲くのが遅いのか。鶯に聞いてみたいのだが、その鶯もまだ鳴かないのだよ。)

  この時期は、取り上げるべき歌にいつも迷う。暦の上では春であり、寒さの中にも春の
 気配をそこはかとなく感じ取ることが多いのだが、前回、梅の宴を取り上げたとたんに寒
 波が帰ってきた。

  参考にすべく歌論集をめくっていると
  「雪をおきて梅をな恋ひそあしひきの山かたつきて家ゐせる君(雪をさしおいて、梅を
  慕ったりしないでください。山のふもとに住んでいるあなた)」
 という歌が目に入ってどきりとした。
  思えば、桜よりも梅を愛した万葉人は、冬と春のはざまで「梅はまだか」と気を揉んで
 いたはずなのだ。空からやってくる、神秘的で美しい雪も好き。でも春だから、そろそろ
 梅が恋しいのだよ、という、巡り来る季節そのものに心弾ませる息吹が感じられる。

  現代の我々からいにしえ人を見る時、例えば彼らの桜を思う心には、少なからず桜をシ
 ンボライズした痕跡があるに違いないと考える。しかし、国風文化華やかなりし平安時代
 には、必ずしも「桜=無常」との位置づけが為されていたとも言えないようだ。

  もっと素朴な、盛りを過ぎるものへの哀惜であり、焦燥である心が詠まれていたと思わ
 れる。後の世の人間が過去を振り返るという行為において、そのシンボライズの過程を見
 るのだ。

  「春や疾き」の歌には、万葉の匂いがする。800年代後半から900年代にかけての、
 国風文化の爛熟期に向かう時代は、我々が想像する画一化された「平安時代」ではないの
 だ、と知らせてくる。

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     □■[嵯峨野学藝倶楽部] 2月下旬・3月開講講座のお知らせ■□

 詳しくは、http://www.ren-produce.com/sagano/club/をご覧ください。

 ■「今様・白拍子教室」
  日程:2月19日、3月12日、26日(いずれも、土)
  時間:13時~14時(60分)
  講師:石原 さつき
  ※見学/体験も、随時受付けています。
   性別・年齢・経験は問いません。

 ■「うたことば研究会」
  日程:2月19日(土)
  時間:10時~11時(60分)
  監修:田口 稔恵
  ※資料代等が必要です。詳細はお問合せください。

 ■「茶道教室(土曜日コース)」
  日時:2月19日、3月5日、19日、26日(いずれも、土)
  時間:15時~20時(ご都合の良い時間にお越しください)
  講師:西村 宗靖・太田 宗達
  ※見学/体験も、随時受付けています。

 ■「茶道教室(水曜日コース)」
  日程:2月23日、3月9日、23日(いずれも、水)
  時間:13時~18時(ご都合の良い時間にお越しください)
  講師:西村 宗靖・太田 宗達
  ※見学/体験も、随時受付けています。

 ■「京文化を語ろう」
  日程:3月12日(土)
  時間:11時~12時30分(90分)
  講師:太田 達
  テーマ:「上巳について」
  参加費:1回1,000円(茶菓子付)
  ※1回のみの参加も、随時受付けています。

 ●URL
  http://www.ren-produce.com/sagano/club/

 お問合せ・お申込みはコチラまで→ sagano@ren-produce.com

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               ■□■ひとこと■□■

  昨日はすごい雪でしたが、皆さんは無事にご帰宅できたでしょうか?

  梅も咲き、春を感じてきたところの雪でした。また寒くて、嫌だなとも思いますが、
 季節が行ったり来たりしながら移り変わっていくのも、それはそれで楽しいなと思うこ
 とにしました。
  いずれ春は巡ってくるので、体調に気を付けつつ、気長に待ちましょう。

  皆さんも、風邪などひかれないようにお気を付けください。
                                               
                                  (きしもと)

     [次回は、3月1日(火)に配信予定です!次回もお楽しみに。]

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多くの方に有斐斎弘道館の活動を知っていただきたく思っております。
記事が面白かったら是非、シェアいただけると幸いです。