嵯峨野文化通信 第122号

 伝統文化プロデュース【連】メールマガジン

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  ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄)     [嵯峨野文化通信] 第122号
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 伝統文化プロデュース【連】は
 日本の伝統文化にこめられた知恵と美意識について
 遊びながら学び、広めていく活動をしている団体です

         
          嵯峨野文化通信は、伝統文化を「遊ぶ」ためのヒントを発信します

                毎月1日・15日(月2回)
 
                      ■VOL:122(2011/3/1)

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                ■□■もくじ■□■

  ■【連】からのお知らせ —————————- 「蕪村の春」茶会
                            京菓子講座が始まります
                            今様教室が新聞に掲載されました!
  ■『餅と饅頭ー和漢の境まぎらわす事ー』————- 第三十二回
  ■(連載)『ニッポン城郭物語』——————— 第六十幕
  ■(連載)『源氏が食べるー平安文学に描かれる食ー』- 第二十三回
  ■(連載)『北野の芸能と茶屋』——————— 第二十六回
  ■(連載)『やまとのくには言の葉のくに』———– 第八十四首
  ■[嵯峨野学藝倶楽部]3月開講講座のお知らせ

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             □■【連】からのお知らせ■□

 ■「蕪村の春」茶会
  『奥の細道』や『のざらし紀行』で有名な与謝蕪村は、各所を歴遊したのち、京都に
 居を構え、京都でその生涯を終えました。
  淇園と親交があったと言われている蕪村の残した春の句とともに、春を感じるひと時
 をお楽しみください!

  日程:3月6日(日)
  時間:11時~15時
  場所:有斐斎(弘道館京都市上京区上長者町通新町東入ル元土御門町524-1)
     ※KBS京都の北東角を西に入り、一筋目を越えて北側
  費用:1,000円

 ■京菓子講座が始まります

  4月13日より、NHKの神戸文化センターにて京菓子についての講座が始まります!
  講師は、【連】の太田達です。講座では実際に菓子をいただきながら、京菓子と日本
 文化との関わりを探っていきます。
  途中受講も可能です。この春から、日本文化に触れてみませんか?

  NHK文化センター講座「京菓子で感じる日本文化」第1回目

  日程:4月13日(水)
  時間:13時~14時30分
  場所:NHK文化センター神戸教室(兵庫県神戸市中央区東川崎町1-2-2)
  費用:15,750円(全6回、全ての講座を受講される場合の金額です。要申込)

  ※講座は月1回、9月までの半年間行われます。
   日程は毎月第2水曜日であり、時間は毎月変わりません。

  申込・詳細はコチラ
  NHK文化センターHP
  http://www.nhk-cul.co.jp/programs/program_595531.html

 ■今様教室が新聞に掲載されました!

  2月17日(木)発行の京都新聞の朝刊に、今様教室の記事が掲載されました!
 舞の練習や教室の様子などの写真も載っており、華やかな雰囲気が感じられます。
  ぜひご覧ください。
  また、興味をもたれた方はぜひ一度教室にお越しください!
  メンバー一同お待ちしています。

  今様・白拍子教室へのお問合せはコチラ
  imayou@ren-produce.com

  京都新聞のHPはコチラ
  http://www.kyoto-np.co.jp/

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            ■『餅と饅頭ー和漢の境まぎらわす事ー』■

                    第三十二回

                                    太田 達
  □閑話休題 その八□

  吉野
  夕暮れ近く、川上上社直上の高原集落に立ち寄る。真下を走る国道169号線旧東熊
 野街道から、この集落の気配は伺えない。垂直型隠里。この里にも、自天王伝説が残る。
 集落の最も高位の場所にある曹洞宗福源寺に、自天王の兜が祀られる。今も2月5日の
 朝拝式に、川沿いの神之公の妹背山金剛寺に持ち出されると聞いていたので、時間も遅
 かったがその場所を訪ねた。今は曹洞宗であるが、もともとは天台修験の寺院、木地師
 の祖といわれる惟喬親王御所の伝承ももつ。
  夕方、境内を大人数が断りもなくうろうろしていると、案の定不審がられた。京都か
 ら自天皇の遺蹟を訪ね来た旨を告げると、本堂に上げていただきお話を伺う事ができた。

  兜は数年前、神之公の自天王神社の収蔵庫に移されたそうだ。600年の間細々と、
 しかし、その形を変えることなく伝承された祭儀は、この10年の間に急激に変化しよ
 うとしている。
  600年の間、自天王の祭儀は川上の一部の人々の間のみに存在していた。しかし、
 明治政府による作為的な南朝至上主義、また戦後のGHQによる天皇制統治政策の混乱
 が招いた幾つかの「熊沢天皇的現象」などにより、現在、多くの「隠れ後南朝マニア」
 が存在する。公にされた秘儀は今後いかなる形で次世代に語り継がれるのであろうか?

                ■『ニッポン城郭物語』■

              ─第六十幕─  ~城の復元について~ 

                                   梅原 和久

  国の平成23年度予算案は3月1日未明、民主党会派離脱を表明した16名が本会議
 を欠席するという事態の中、与党の賛成多数で可決した。なかなか全国的なニュースに
 はならないものの、全国の都道府県や市町村の予算も同様に、秋頃から長い時間をかけ
 て議論を尽くし、議会の議決を得た上で、この時期に出そろう。

  HPで公表されている各地の自治体予算を見てみると、城の整備に大きな予算を付け
 ていることが分かる。
  平成の築城ともいうべき大工事を続けている熊本城については、「熊本城第二期復元
 整備事費」として6,430万円が熊本市予算に計上されている。同様に京都市は「世
 界遺産・二条城本格修理事業」として6,960万円を、大きなところでは名古屋城の
 本丸御殿復元工事費として11億6,100万という巨額予算がつけられている。
  一大土木事業なので予算規模が膨れあがるのは仕方がないところはあるが、だからこ
 そどの自治体でも取り組めるものではない。
  
  そこで注目されるのが、近江八幡市の、安土城復元に関する取り組みである(※1)。
 事業名は「VR(バーチャルリアリティ)による安土城再現事業」、予算額は59万4
 千円。失われた安土城天守をバーチャルに再現し、城跡に立つと情報端末にCGが映し
 出せるようにする仕組みを3年かけて実現しよう、というのだ。

  安土城については、これまでから何度も復元の話が持ち上がりながら、復元案が定ま
 らないことや莫大な費用がかかることから計画倒れに終わってきた経緯がある。この復
 元なら一度作っても、最新の説による修正も容易だし、何より総工費が雲泥の差である。
 作りようによってはかなり詳細な、迫力あるものができる(※2)ので、2年後の本格
 導入が楽しみである。 

 (※1)新聞報道。ちなみに平成の大合併により、由緒ある「安土町」は平成22年度
     から近江八幡市の一部になっている。
   http://www.kyoto-np.co.jp/top/article/20110220000088

 (※2)奈良県明日香村が実用化した、「バーチャル飛鳥京」の紹介ページ。
   http://www.cvl.iis.u-tokyo.ac.jp/research/virtual-asukakyo/research.html

          ■『源氏が食べるー平安文学に描かれる食ー』■         

                   第二十三回       

                                  荻田 みどり

  父八の宮の死後の初春、阿闍梨(あじゃり)から贈られた春のたよりに対し、大君と
 中の君は心を傾けることができなかった。
  それにもかかわらず、早蕨巻では再び阿闍梨が春のたよりを贈っている。

   阿闍梨のもとより、「年あらたまりては、何ごとかおはしますらん。御祈禱(いの
   り)はたゆみなく仕うまつりはべり。今は一ところの御ことをなむ、やすからず念
   じきこえさる」など聞こえて、蕨、つくづくし、をかしき籠に入れて、「これは童
   べの供養じてはべる初穂なり」とて奉れり。

  同じく新年の贈物であるが、今度は前年に大君が亡くなっている。中の君はさらに孤
 立してしまった。そんな折の阿闍梨からの蕨、つくづくし(つくし)である。
  歌も添えられており、一生懸命に想いを凝らして詠んだのであろうと、今回は「いと
 あはれ」と好感をもって迎えられている。しかも、

   なほざりに、さしも思さぬなめりと見ゆる言の葉をめでたく好ましげに書きつくし
   たまへる人の御文よりは、こよなく目とまりて、涙もこぼるれば、

 と、それほど深い気持ちではないだろうと見える言葉を立派に飾って書き尽くしている
 匂宮の文と引き比べ、阿闍梨の無骨ながらも心のこもった歌に一層感動し涙する。中の
 君は既に匂宮と結婚し、二月には京の匂宮邸に移ることになっている。阿闍梨の文はそ
 の匂宮に勝るのである。

   この春はたれにか見せむなき人の かたみにつめる峰のさわらび

  自分を理解してくれる姉大君も亡くなってしまった今、父の形見に摘んで下さった蕨
 を誰に見せたらいいのだろうか、と返す歌は、前回挙げた椎本巻と似通うが、文使いに
 禄をとらせたことが描かれる点でも、中の君は阿闍梨の心を汲んでいる。
  宇治で過ごす最後になるかもしれない春を、父も姉もいなくなった中、変わらず贈ら
 れる蕨とともに中の君は噛み締めているのだろう。

               ■『北野の芸能と茶屋』■             

                   第二十六回                 

                                   井上 年和

  文禄二年(1593)2月29日

   「一、殿下へ参之処ニ、北野社西之野へ御出也、弓被遊了、則罷向了、次北山之金
    閣へ御出、夕食御相伴了、北野邊ヨリ帰宅了、」
                                  『言経卿記』

  当時左大臣であった豊臣秀次は北野で遊山した後、金閣寺を参拝し、北野辺から帰った
 ようだ。花見にでも訪れたのであろう。また、秀次は文禄三年(1594)10月5日に
 も北野を訪れている。これも紅葉狩りであろう。

  平安初期には歴代天皇が遊猟し、その後も平安から鎌倉時代にかけて、内裏にほど近く
 手頃な遊山スポットであった北野は、室町時代にも歴代将軍が度々参籠していたし、勿論
 『言経卿記』の筆者である山科言経(やましな ときつね)も北野によく散歩に来ている。
 北野は時の権力者の一族として高貴な身分となって遊山に訪れたいあこがれのスポットと
 なっていたのであろうか。

  豊臣家に秀頼が生まれたのは文禄二年(1593)8月3日で、秀次は次第に秀吉から
 疎まれるようになり、結局文禄四年(1595)7月8日、秀吉の命令で高野山に追放さ
 れ出家し、同年7月15日に切腹を命じられ青巌寺・柳の間にて死亡している。享年28
 であった。

  北野、金閣寺と歴代の覇者に縁のある寺社を参拝した秀頼は、まさに我が世の春を謳歌
 していたのであろうか。或いは秀頼誕生により、この春が束の間であることを既に予感し
 ていたのかもしれない。

            ■『やまとのくには言の葉のくに』■          

                   第八十三首                 
 
                                   田口 稔恵

   真幸くて逢はむ日あれや荒樫の下に別れし君にも君にも
  (幸いにも命永らえて、また逢う日があるだろうか。この荒樫の木の下で別れた君に
   も、君にも。)

  はじめにお断りしておくが、この歌の出典である本が手許にない。これは、国文学者・
 大濱真幸氏の父君が、学徒出陣に際して、別れる友たちに向けて詠んだ歌である。
  大濱氏が書かれた『万葉集』の特集記事の中にあった歌で、強く心打たれたために暗記
 していた。もし誤りがあったならば、ご教示いただきたい。

  大濱氏の名前は、万葉集に収められた有間皇子の悲歌に由来する。蘇我赤兄に唆され、
 父・孝徳天皇に離反した中大兄皇子とその母・斉明天皇を打倒する計画を練っていた有間
 皇子は、赤兄に裏切られ、死刑に処せられる。紀伊国で最期を迎えた皇子が詠んだ歌が、
   岩代の 浜松が枝を 引き結び ま幸くあらば また還り見む
   (岩代の浜松の枝を引き結んで身の安全を祈る。幸いにも生きていたならば、またこ
    の松を見よう)
  大濱氏の父君は、この歌を本歌に、前述の和歌を詠出された。

  大濱氏は、若き日の父が「逢はむ日あれや」と疑問の形でしか詠めなかったことに深く
 思いを致している。本歌に比して、ひたひたと寄せ来る戦争の足音ゆえにか、自分たちの
 宿命の不透明さに揺らぐ心を感じさせる。

  平和な時代でありながら、自分たちの生き方さえ見つけにくくなっている現代。卒業生
 を送る時、いつも私自身が、大濱氏の父君の歌を本歌に、心の中でエールを送る。

  真幸きくてあらばまた見む楠の下に巣立し君にも君にも
  (幸いにも、お互い生きていたならば、また逢おう。この楠の香り高い学舎から巣立っ
   た君にも、君にも。)

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       □■[嵯峨野学藝倶楽部] 3月開講講座のお知らせ■□

 詳しくは、http://www.ren-produce.com/sagano/club/をご覧ください。

 ■「茶道教室(土曜日コース)」
  日時:3月5日、19日、26日(いずれも、土)
  時間:15時~20時(ご都合の良い時間にお越しください)
  講師:西村 宗靖・太田 宗達
  ※見学/体験も、随時受付けています。

 ■「茶道教室(水曜日コース)」
  日程:3月9日、23日(いずれも、水)
  時間:13時~18時(ご都合の良い時間にお越しください)
  講師:西村 宗靖・太田 宗達
  ※見学/体験も、随時受付けています。

 ■「京文化を語ろう」
  日程:3月12日(土)
  時間:11時~12時30分(90分)
  講師:太田 達
  テーマ:「上巳について」
  参加費:1回1,000円(茶菓子付)
  ※1回のみの参加も、随時受付けています。

 ■「今様・白拍子教室」
  日程:3月12日(土)
  時間:13時~15時(60分)
  講師:石原 さつき
  ※見学/体験も、随時受付けています。
   性別・年齢・経験は問いません。
  ※3月26日のお稽古は、12日の14時~15時に振替させていただきます。

 ■「うたことば研究会」
  日程:3月12日(土)
  時間:16時~17時(60分)
  監修:田口 稔恵
  ※日にちが変更されました。お気をつけください。
  ※資料代等が必要です。詳細はお問合せください。

 ●URL
  http://www.ren-produce.com/sagano/club/

 お問合せ・お申込みはコチラまで→ sagano@ren-produce.com

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               ■□■ひとこと■□■

  先日、北野天満宮の梅苑に行ってきました。
  紅、薄紅、白色の花をつけた梅がとりどりに咲いていて、きれいな風景でした。
  気温も高く、春の訪れを感じた一日。昨日今日の雨で、花が落ちていないといいのです
 が…。

  十分見終わった後は、有職菓子御調進所「老松」さんのお茶とお菓子をいただき、ほっ
 こりして帰ってきました。

  3月下旬まで見ることができるようです。

  北野天満宮 梅苑
  http://www.kitanotenmangu.or.jp/ume/info.html

                                   (まつだ)

     [次回は、3月15日(火)に配信予定です!次回もお楽しみに。]

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多くの方に有斐斎弘道館の活動を知っていただきたく思っております。
記事が面白かったら是非、シェアいただけると幸いです。