伝統文化プロデュース【連】メールマガジン
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〔嵯峨野文化通信〕 第98号
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日々の暮らしに「和」の魅力をプラスしてみませんか?
伝統文化プロデュース【連】は、日本の伝統文化にこめられた知恵と美意識に
ついて、学び広めていくための活動をしている団体です。
京都・嵯峨野から、最新の情報を皆さんにお届けします!
毎月1日・15日(月2回)
★VOL:98(2010/3/1)
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○【連】からのお知らせ ———— 北野天満宮の梅が見頃です!
老松社の祭祀
京都名産品展 「京(みやこ)のあきない」
上七軒「北野をどり」のご案内
メルマガ100号へのカウントダウン!
○(連載)『餅と饅頭ー和漢の境まぎらわす事ー』—— 第十二回
○(連載)『ニッポン城郭物語』———————- 第四十九幕
○(連載)『北野の芸能と茶屋』———————- 第二回
○(連載)『やまとのくには言の葉のくに』———— 第六十二首
○[嵯峨野学藝倶楽部]3月開講講座のお知らせ
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【連】からのお知らせ
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○北野天満宮の梅が見頃です!
最近は暖かい日も多く、段々と春に近づいていることが感じられますね。北野天満宮で
も、鮮やかな梅の花が春を告げています!
北野天満宮で毎年公開されている、梅苑公開が今年も行われています。暖かい日に梅の
花を観賞して、春の芽吹きを感じてみませんか?
【連】の活動に協力して下さっている、有職菓子御調進所「老松」さんの茶菓子がい
ただけます!
「北野天満宮 梅苑公開」
日程:~3月中旬まで
時間:10時~16時
場所:北野天満宮(京都市上京区馬喰町)
費用:大人600円、小人300円(茶菓子付)
HPはコチラ
http://www.kitanotenmangu.or.jp/top.html
○老松社の祭祀
【連】にご協力いただいている、有職菓子御調進所「老松」にゆかりがある老松社では、
3月12日に祭祀が行われます! 老松社は北野天満宮の境内にあり、祭神は菅原道真公
の岳父、島田忠臣です。島田忠臣は漢詩の才能に長けていたそうです。
見学は自由にしていただけますので、お時間おありの方は足を運んでみてくださいね。
「老松社 祭祀」
日程:3月12日(金)
時間:10時より
場所:北野天満宮境内、三光門前
費用:無料、見学自由
○京都名産品展 「京(みやこ)のあきない」
京都物産出品協会創立60周年記念展「京のあきない いま・むかし・そしてあしたへ」
が、京都高島屋において開催されます。この名産品展では、メルマガ第85、86号でお
知らせしていました「学生デザインコンテスト」に応募された作品が展示されます。名産
品展と併せてご覧下さい。
この京都名産品展は、【連】代表の濱崎加奈子が監修しています。開催中は、京都の伝
統文化や芸能に関するイベントが、毎日企画されており、商いが盛んに行われた活気ある
洛中洛外を再現したような心躍る名産品展です!! ぜひ、体感して下さい!
「京のあきない いま・むかし・そしてあしたへ」
日程:3月18日(木)~23日(火)
時間:10時~20時
場所:京都タカシマヤ 7階催会場グランドホール
詳しくはコチラをご覧下さい(PDFにてご覧いただけます)。
http://www.takashimaya.co.jp/kyoto/event2/common/img/kyoto_100318.pdf
○上七軒「北野をどり」のご案内
昭和27年から行われている、京都上七軒の「北野をどり」が、この春も開催されます。
開催場所である、昭和22年に建てられた上七軒歌舞練場は、今年、約60年ぶりに改
修されました。今年の「北野をどり」は、新しい上七軒歌舞練場のこけら落とし公演でも
ある、記念の公演です。
改修に伴い、新しく作られた緞帳(どんちょう)は、おそらく世界初であろう“和紙”
を使ったもので、縦4メートル、幅13メートルの巨大な和紙に、上七軒の五つ団子の透
かしが入っているそうです。
「北野をどり」を観賞し、華やかな京都の春を感じてみてはいかがでしょう?
「北野をどり」
日程:3月25日(木)~4月7日(火)
時間:13時30分~/16時~(全日2回公演)
場所:上七軒歌舞練場
費用:(お茶席券付) 4,500円
(お茶席券なし) 4,000円
(お茶席券) 600円
チケットは、上七軒歌舞会HPよりお申し込みいただけます。
http://www.maiko3.com/event/ev-4.html
○メルマガ100号へのカウントダウン!
「嵯峨野文化通信」第100号まで、残すところ2号です!!
約4年もの間続けてこれたのも、変わらず勢力的に活動している連メンバー、先輩編集
部の方々、そして何よりも、購読して下さっている読者の方々のおかげなのだなぁ、とし
みじみ感じる今日この頃。
記念すべき100号には、そんな皆さんへ素敵な企画をお届けできたらと考えています!
どうぞ、お楽しみに♪
また、過去のメルマガを読み返していただけると、連のメンバー紹介や、面白い連載記
事が満載ですので、ぜひご覧下さい!
メルマガ創刊号はコチラ
http://archive.mag2.com/0000185716/20060220160500000.html
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(連載)『餅と饅頭ー和漢の境まぎらわす事ー』
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第十二回
太田 達
日本における「米」は、この国の文化の創成の基幹たるものという認識、それは、確固
たるべきものであることは、何人も異存を唱えることはないであろう。しかし、「米」が
日本に自生していた植物ではないということも間違いない。
では、どこから来たのかという問題は、「稲」の起源地は何処かという議論とともに語
られた。起源地の説には、インドデカン高原の稲作、インド平原稲作、東南アジア平原稲
作、照葉樹林稲作、そして、現在最も有力視されている長江下流域がある。イネ科植物に
含まれるガラス質の細胞プラントオパールの分析において、長江下流域では、7000年
前の水田での稲作が証明されている。日本では、1997年、岡山市の朝寝鼻(あさねば
な)貝塚から、約6000年前の稲のプラントオパールが発見されているが、陸稲である。
日本最古の水田稲作の遺構は、佐賀県唐津の菜畑遺跡でおよそ2500年前、つまり縄
文中期にすでに水田稲作は伝来していたと考えられている。その伝来のルートは、琉球経
由の南島説、北方説、そして、朝鮮半島説、長江下流域からの直接やってきたとする諸説
が存在している。なかでも、DNAの塩基配列を根拠とする長江下流域からの直接伝播が、
科学的に有力視されているが、「餅」という立場から、北方説をささえる伝承が京都にあ
る。
それを実証するのが、現在、国内に3万、いや、屋敷祭祀、会社などに祀られる小祠も
含めるとその数、数万ともいえる日本で最も信仰されている稲荷神社の創祀を記した『山
城国風土記』の逸文である。
「伊奈利と称ふは、秦中家忌寸(はたのなかつえいみき)等が遠つ祖、伊侶具秦(はたの
いろぐ)公、稲梁(いね)を積みて富み裕ひき。乃ち、餅を用て的と為ししかば、白き鳥
と化成りて飛び翔りて山の峯に居り、伊禰奈利(いねなり)生ひき。遂に社の名と為しき。
其の苗裔(すえ)に至り、先の過を悔いて、社の木を抜じて、家に殖えて祷み祭りき。今、
其の木を殖えて蘇きば福を得、其の木を殖えて枯れば福あらず」
餅を弓矢の的としたら白鳥に成り飛び去った、というのである。同様な話は、『豊後国
風土記』にもみられる。これは、渡来氏族である秦氏が、山城国だけでなく、豊後にもそ
の勢力をもっていた証明になるわけであるが、そういうことより、なぜ、餅が白鳥に化成
するのか、次号で考察したい。
☆講座「京文化を語ろう」ご案内☆
太田達が講師をつとめる講座「京文化を語ろう」、今月3月13日(土)のテーマは
「稲荷」です!
この記事を読んで稲荷信仰に興味をもたれた方は、ぜひご参加下さい。
講座詳細はこのメルマガの下部にございますので、ご覧下さい。
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(連載)『ニッポン城郭物語』
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─第四十九幕─ ~京都府の城ベスト10の話~
梅原 和久
先日、『日本の名城 都道府県別ベスト10』(中井 均著、新人物文庫)という新刊
が出版された。タイトルどおり、都道府県ごとに10の城を選び、歴史性や遺構の残存度、
更には交通アクセスや登城難易度まで加味して順位付けたものである。
早速この本から、京都府のベスト10を見てみよう。
1位 二条城 (中京区) 6位 八木城 (南丹市)
2位 山科本願寺(山科区) 7位 福知山城(福知山市)
3位 周山城 (右京区) 8位 御土居掘(北区など)
4位 鹿背山城 (木津川市) 9位 物集女城(向日市)
5位 園部城 (南丹市) 10位 笠置城 (笠置町)
1位の世界遺産・二条城は別格としても、一般的には馴染みのない名前が多いのではない
だろうか。この辺りがこの本の渋いところだが、京都府のベスト10は、他府県に比べて
明治まで存在した近世城郭が少ないのが特徴である(1位・5位・7位のみ)。
これは京都における近世遺跡全般の問題なのだが、整備状況や残存状態が非常に悪いこ
とが要因であろう。全国的にも有名な伏見城や聚楽第、他にも淀城や丹波亀山城など、京
都府には近世城郭もかなりあったにも関らず、軒並みベスト10の圏外となっている。
10位の笠置城は、後醍醐天皇で有名な南北朝時代の城。9位の物集女城は、室町時代
の土豪物集女氏の城館である。城内は現在は民家と畑になっているが、当時の堀や土塁が
良好な状態で残っている。8位の御土居掘は、秀吉によって作られた、京都市中をぐるっ
と囲む土塁と堀だが、現在では市内各地に点々と残っているだけである。近世遺跡の破壊
の代表例のようなものである。京都歴史講座を担当していただいている中村武生さんの専
門分野の一つでもある。
6位の八木城は、3位の周山城と共に、明智光秀関連の山城である。4位の鹿背山城は
松永久秀関連の城で、ここ数ヶ月でも発掘調査の成果が次々に出ている。堀の残存状況が
素晴らしい。3位の周山城。明智光秀が築いた城だが、ここは何と言っても石垣がすごい。
所々崩れている箇所はあるものの、山の上に累々と続く石垣は圧巻である。
そして、2位の山科本願寺。なぜ2位が寺?と思われるかもしれないが、対象となった
のは寺ではない。蓮如が越前吉崎から山科に本願寺を移した際に築かれた、巨大な寺内町
の遺構なのだ。寺だけでなく、町の周囲をも囲んでいた巨大な土塁と堀の一部が今も残っ
ている。
さて、この山科本願寺については個人的に思い入れが深い。大学の卒論の題材も、実は
この山科本願寺及び寺内町なのだ。という訳で、次回の連載50回目は、山科本願寺につ
いて。
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(連載)『北野の芸能と茶屋』
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第二回
井上年和
明応二年(1493)3月24日「北野社家日記」
一、今夜亥剋当所御子茶屋西隣イ子ト云付火、出合打消其外今小路檜物師并合河餅屋同
付火由注進在之、兩所事者 社頭遠之間、先一往事者可致用心、イ子茶屋事者 社頭近所、
当坊近所之間、可造別之在所之由申付者也、但自今日廿日之間令借物、可移他所之由侘事
仕候間、令領状也
北野の茶屋の発祥が、御子の茶屋であったと言われるが、これはその根拠となる記事で
ある。北野社祠官家の松梅院の西隣にある「イ子」という茶屋(イ子という御子の茶屋?)
が、放火の被害者であるにもかかわらず、社頭や松梅院の近所であることから移転を命ぜ
られたという内容である。
松梅院の西隣は、江戸時代の史料では「七軒茶屋」となっている場所なので、上七軒の
茶屋の前身と言っても差し支えないであろう。
中世には、社寺組織のものが、茶や菓子等の供物調進に関わることで、その技能を活か
し、境内で参詣人に茶を接待したり、門前で茶屋を経営するものが現れてくるが、現在の
お茶屋が何故お茶を飲む所でもないのにお茶屋と言われているか考える上で、その前身で
ある「イ子茶屋」の存在は非常に重要なのである。
☆ご意見、ご感想はコチラまで☆
伝統文化プロデュース【連】
メール:info@ren-produce.com
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(連載)『やまとのくには言の葉のくに』
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第六十二首
田口 稔恵
心にもあらで憂き世にながらへば恋しかるべき夜半の月かな
(三条院 『後拾遺集』 巻15 雑)
(不本意にも、この苦しい世の中に生きながらえていまったならば・・・きっと今宵の月
を恋しく思い出すことであろう。)
月、といえば、空気が冴えて美しく映える秋をイメージするのだが、3月は例年自殺者
が最も多い月とニュースで知り、この歌を取りあげようと考えた。
後拾遺集巻15雑の部に、「例ならずおはしまして、位など去らむとおぼしめしけるこ
ろ、月のあかかりけるをご覧じて」との詞書とともに採られている。「例ならず」とは、
体調がすぐれない、病であることなどを意味する。この頃、三条天皇は失意のどん底にあ
った。
在位した4年のうちに内裏が二度も炎上。体調がすぐれない上に失明寸前となり、おま
けに藤原道長が、先帝の子に当たる自分の孫を皇位につけようと圧力を強めてくる。まだ
幼い娘・禎子内親王の髪を撫でながら、「この美しい髪を、自分の目で見られないのが残
念だ」とつぶやくのを聞き、周囲は涙を止められなかったという。
生きながらえたのなら、その時には視力を完全に失っていよう。わずかに見える目に映
った今宵の月が、いつかは目が見えたころの形見となろう。辛い現在を、将来の自分は少
し客観的に受け止められていればよい、という希望のようにも取れる。
言葉の調べは流麗で、ややもすれば上滑りになる危険性があるのに、三条院の人生と相
俟って、腹の底にずしんと響く切実さがある。
ちなみに「この世をばわが世とぞ思ふ」と詠みあげた道長の息子・頼通が入内させた娘
たちは、いずれも皇子をもうけることができず、170年ぶりに藤原を外戚としない親王
が皇統を嗣ぐこととなる。その親王の母は、かつて三条天皇が髪を撫でた、あの禎子内親
王である。親王は即位して後三条天皇となった。善政をしいたとの誉れ高い。祖父の名を
受け継いだ英明の君には、祖父・三条天皇への格別の想いがあったに違いない。
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◆[嵯峨野学藝倶楽部] 3月開講講座のお知らせ ◆
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詳しくは、http://www.ren-produce.com/sagano/club/をご覧下さい。
※3月、茶道教室の開講時間に変更がございますのでご注意下さい!
★「茶道教室(水曜日コース)」
日程:3月3日、17日(いずれも、水)
時間:13時~18時(ご都合の良い時間にお越し下さい)
※3日のみ、10時~15時に変更いたします。
講師:西村 宗靖・太田 宗達
※見学/体験も、随時受付けています。
★「茶道教室(土曜日コース)」
日時:3月6日、13日、27日(いずれも、土)
時間:15時~20時(ご都合の良い時間にお越し下さい)
※6日のみ、13時~20時に変更いたします。
講師:西村 宗靖・太田 宗達
※見学/体験も、随時受付けています。
★「京文化を語ろう」
日程:3月13日(土)
時間:11時~12時30分(90分)
講師:太田 達
テーマ:「宗教から京都を考える~稲荷~」
参加費:1回1,000円(茶菓子付)
※1回のみの参加も、随時受付けています。
★「今様・白拍子教室」
日程:3月13日、27日(いずれも、土)
時間:13時~14時(60分)
講師:石原 さつき
※見学/体験も、随時受付けています。
性別・年齢・経験は問いません。
★「京都歴史講座」
日程:3月21日(日)
時間:11時~12時30分(90分)
講師:中村 武生
テーマ:「京都の実業家たちも史蹟碑を建てていた-京都史蹟会の建碑」
参加費:1回 1,000円 (茶菓子付)
※1回のみの参加も、随時受付けています。
★「うたことば研究会」
日程:3月27日(土)
時間:10時~11時(60分)
監修:田口 稔恵
※資料代等が必要です。詳細はお問合せ下さい。
●URL
http://www.ren-produce.com/sagano/club/
お問合せ・お申込みはコチラまで→ sagano@ren-produce.com
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きのう、菜の花を食べました。まさに春を味わったわけですが、最近の暖かさに
加えて、さらにふわふわと心地好い気分になりました。
春、卒業式、出会いと別れ、雪解け、梅の花に色づく新芽、夜空ににじむ朧月。
春、いいですよね・・・。大好きな季節です。
(きしもと)
[次回は、3月15日(月)に配信予定です!次回もお楽しみに。]
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