伝統文化プロデュース【連】メールマガジン
☆★—–━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━—☆★☆
〔嵯峨野文化通信〕 第55号
★☆★—━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━—–☆★
日々の暮らしに「和」の魅力をプラスしてみませんか?
伝統文化プロデュース【連】は、日本の伝統文化にこめられた知恵と美意識に
ついて、学び広めていくための活動をしている団体です。
京都・嵯峨野から、最新の情報を皆さんにお届けします!
毎月1日・15日(月2回)
★VOL:55 (2008/5/15)
━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━
┏━┓┏━┓┏━┓
┃も┃┃く┃┃じ┃
┗━┛┗━┛┗━┛
○【連】からのお知らせ ————————「三船祭」「都ライト’08」
○(連載)『源氏物語を勉強しよう』——- 題名からしてモメている『源氏物語』
○(連載)『やまとのくには言の葉のくに』———————– 第二十七首
○(報告)————————————————–「京都流議定書」
○[嵯峨野学藝倶楽部]5月開講講座のお知らせ
━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━
━━━━━━━━━━
【連】からのお知らせ
━━━━━━━━━━
○【連】協力イベント 「三船祭」
三船祭は、5月14日に行われる車折神社例祭の延長神事(行事)で、今年は18日
に嵐山を流れる大堰川一帯で行われます。御座船・龍頭船など、20数隻が大堰川に浮
かび、平安時代の船遊びが再現されます。【連】メンバーも協力している日本今様謌舞
楽会による「今様船」も参加していますので、来られた方は、ぜひ探してみてください
ね。
日程:5月18日(日)
会場:嵐山大堰川一帯
「三船祭」のホームページ
●http://www.kurumazakijinja.or.jp/mifunemathuri.html
○【連】協力イベント 「都ライト'08」
5月30日(金)〜6月1日(日)の3日間、今年も「都ライト ’08」が行われ
ることになりました。【連】では、2005年の初回開催以来、「花街文化研究会」の
スタッフとして、上七軒でのイベントに協力しています。
格子を通じて外にもれる「暮らしの光」を体感しに、ぜひお越しください。
日程:5月30日(金)〜6月1日(日)
時間:午後6時〜9時
会場:上七軒通周辺、浄福寺通大黒町周辺、西陣文化センター周辺、京町家ギャラリー
花小径周辺、京都市内の町家(有志)
「都ライト’08」のお知らせのホームページ
●http://miyako-light.anewal.net/
━━━━━━━━━━━━━━
(連載)源氏物語を勉強しよう
━━━━━━━━━━━━━━
題名からしてモメている『源氏物語』 橋場 愛
皆さん、こんにちは。『源氏物語』について調べていたら、とても初歩的なところ
でいろいろ「ええ?」という意外な点を発見しましたので、今回はその報告をさせてい
ただきたいと思います。初っぱなから謎が多くて、なかなか内容に迫るところまでいき
ません。
まず、『源氏物語』という題名についてです。いや、当初から『源氏物語』でしょ?
と何気ない気持ちで、手近な資料集なんかを手にとって調べてみると・・・。『源氏の
物語』、『光源氏の物語』、『光る源氏の物語』、『光源氏』、『源氏』、『源氏の君
』と、たくさんあるじゃありませんか。他にも『紫のゆかりの物語』など、紫式部かも
しくは作品中の登場人物・紫の上を連想させる題名もあります。おお・・・題名からし
てすでに混沌としている。本物はどれだ。
そもそも『源氏物語』の題名は、筆者の紫式部本人が命名したものではないそうです
。今の『源氏物語』という題名は、とりあえず今は皆がこの題名を妥協して使っている
と理解して良いんでしょうか? しかし、妥協したにしても、この作品をもしどこかの
池田亀鑑(きかん)級の偉い先生が「やっぱり題名は『紫の物語』がいい! いいんだい
!」と言い出したらどうなるんでしょう。そんなわがままな意見は却下したくとも、決
定的に言い負かすだけの理論武装がありえないのです。つまりは、様々な呼び名はあれ
ど、どれが紫式部のつけた題名かはわかってないのです。まあ世界中に翻訳されて出回
ってしまったので、世界の皆さんのお力で、今更題名の変更は無いと信じたいです。こ
んな文学史の覚え直しは勘弁してほしいですね。
そのままいろいろ調べていって次に出てきたのは、実は知られざるもう一つ、いや二
つ、いや結構ある何種類かの『源氏物語』が存在しているかもしれないという件です。
まだ誰も発見してないけど、どうやらあるらしい・・・と。まさにポケモン級。そんな
超レア本はどこにあるんでしょう。なんせ千年も昔に書かれた書物ですので、今の世ま
で残っているのが既に奇跡で不思議。散逸した部分や写し間違いもあるんでしょう。そ
のおかげで伝本の研究があるわけなんですが。とすると、今私たちが読んでいる『源氏
物語』は完璧なものではなく、ほぼそれらしいものを読んでいるだけなんですね。もし
かしたら『宇治十帖』とかも後付けされたもので紫式部は書いてなかったりして、と疑
ってしまいます・・・と思っていたら、やっぱりありました。『宇治十帖』はどうやら
紫式部の娘が書いたらしい説。与謝野晶子が言及しているらしいですが、そうなるとも
はや何を信じていいかわからない。そして、大学で私も習ったあの『竹河』の巻。作者
が別だとか、もっとちがうところに挿入するべきだとか、この巻だけ成立時代が違うと
か、うんたらかんたら。そんなたよりない巻は省いて読みたい。もしくはずっと知らな
いままでいたかった。白黒つけたい私にとってはもどかしいばかりです。案の定、その
先生の講義は6点で落としました。必須単位だったんで、2回生の時に取り直しました
よ。トホホ。
他にも五十四帖の数え方の問題や、題名はあれど中身は存在しない『雲隠』等々、謎
がてんこもりの作品ということがわかりました。さすが千年の壁は伊達じゃありません。
その千年前の男が何を考えて、どのような女性と恋に落ちたか、次回からは迫っていき
たいとおもいます。遅々としてすすまない原稿ですが、また掲載されたら読んでやって
くださいまし。
(つづく)
━━━━━━━━━━━━━━━━━
(連載)やまとのくには言の葉のくに
━━━━━━━━━━━━━━━━━
第二十七首 田口 稔恵
み熊野の浦の浜木綿 百重(ももえ)なす
心は思(も)へど 直(ただ)に逢はぬかも
(『万葉集』巻四 柿本人麻呂)
(熊野の海岸に群生する浜木綿。君のことを心の底から想っているのに、幾重にも重な
ったその浜木綿の葉に隔てられたように、直接逢うことはできないのだなあ。)
柿本人麻呂は、言わずと知れた万葉前期の代表歌人である。詳しい経歴や、生没年さ
え未詳でありながら、その修辞技法が駆使された格調高い詠みぶりから、後世では「歌
の神」とさえ称えられた。
人麻呂が紀伊国を訪れたという記録は残されていないが、宮廷歌人としての任を負っ
ていたことが推測される仕事ぶりから、大宝元年(701)の紀伊行幸に供奉したと考
えられている。
都より遠く離れた紀伊国で、ふと目にとめた浜木綿の姿。幾重にも重なる葉、白く繊
細に咲く花の姿に、残してきた妻の姿が想われたのだろうか。「心は君のすぐ側にある
のだが・・・」と、身を隔てた距離の遠さを巧みになぞらえている。
紀伊国は、古来温泉地として行幸も度々行われており、すでに歌枕として、想像でそ
の景物を詠む対象とされていたかもしれない。人麻呂もまた、都に身を置きながら、こ
の歌を詠んだのかもしれない。しかし、海風の匂いや、かすかに揺れる浜木綿の姿が、
作者の切ない心とともに脳裏に浮かぶような歌ではないか。
序詞の魔術師・柿本人麻呂の面目躍如たる美しい作品である。
━━━━━━━━━━━
(報告)京都流議定書
━━━━━━━━━━━
○【連】協力イベント 京都流議定書【Do you Kyoto? Do you Kyotostyle?】
53号・54号と2回にわたって案内させていただいた、「京都流議定書 もっと京
都を知る一日〜伝統〜」が、5月2日に開催されました。会場となったハイアットリー
ジェンシー京都のフロアでは、西陣織や京都検定など様々なブースが出されており、実
際に体験される方や、設けられているお茶席でまったりとしていかれる方など、賑わい
を見せていました。また、午後のステージでは【連】プロデュースの「源氏物語〜六条
院の四季〜」と題した今様合と白拍子舞も演じられ、多くの方に見ていていただくこと
ができました。
では、「京都流議定書」の参加者、お二方からの報告&感想を掲載したいと思います。
>>まず、今回のイベントの運営を担当してくださった 竹原 希光子さん!
昨年末から、【連】の活動に参加しながらプロデュースの勉強をさせていただいてい
ます。5月1日から3日間、ハイアットリージェンシー京都で「京都流議定書」という
催しが行われましたが、その中でも、<伝統>をテーマにしたイベントの一部を、プロ
デュースの立場から関わらせていただきました。
担当したのは、展示「京宴〜現代に活きる源氏物語」、今様「六条院の四季〜源氏物
語千年紀にちなんで〜」、お茶席「賀茂まつりの茶礼〜源氏物語千年紀によせて〜」で
す。ご覧のとおり、すべて『源氏物語』に関連していますが、これは、源氏物語千年紀
にちなみ、テーマに一貫性を持たせることで相乗効果を生む仕掛けです。
「プロデュース」の仕事は初めてでしたが、いきなりスタッフ間の連絡や会議運営を
任されました。また、展示については、製作者の方々にコンセプトから説明しなけれ
ばなりませんでした。最初に直面したことは、自分が『源氏物語』について深く知らな
いという事実でした。そこで私は、『源氏物語』を読み直すことから始めました。とこ
ろが、物語が進めば進むほど、読むスピードは遅くなり・・・。美男子の肩書きを持つ
光源氏に全く共感出来ず、最後まで感情移入できませんでした。今思えば、これが今回
のイベントの最初の壁だったのかもしれません(笑)。
今様では、実際に演じ手にもなりながらプロデュースするという使命を与えられたた
めに、猛特訓の末、初舞台を踏ませていただくことになりました。しかも、光源氏の役
でした(笑)。今様の舞は決められた型がなく、振りに加えてその時感じたことを表現
してもよいので、伝統芸能としては珍しいものだと思いました。今様が流行った当時、
「今様=現代風」という意味合いが含まれていたので、時代の流れの中で変化し続けて
いく芸能なのかもしれません。
当日は、様々な年齢層の方に来場いただき、自分がプロデュースに関わった展示や舞
台、茶席に足を運んでいただく様子を見て、慌ただしい中にも、嬉しさを味わうことが
できました。
私は現在学生ですが、一足先に企業やアーティストの方々と一緒にイベントを<創る
>という仕事に関わることができました。夢や思いを形にすることは難しく、形に出来
ることのほうが少ないと言われます。今回、いろいろな方の思いを目の当たりにし、そ
れをどのように形にすることができるのかという可能性の一つを、経験することができ
ました。とても貴重で素敵な経験ができ、つくづく幸せ者だと感じています。
>>次に、今様合せの歌人として参加してくださった 松田 菜月さん!
5月2日に、ハイアットリージェンシー京都で行われた『源氏物語〜六条院の四季』
の今様合に歌人として参加させていただいた。当日までに何度か打ち合わせがあり、漠
然と想像はしていたものの、実際の舞台はかなりきらびやかで後ろの金色の屏風に衣装
が映えてとてもきれいだった。
今回私は生まれて初めて狩衣を身につけさせていただいたのだが、歌人としての舞台
は観客として観る舞台とは大きく異なっていた。まず、今様合をするということで緊張
感があり、舞台の上の調度や出演者の方々の衣装によって平安時代に戻ったかのような
錯覚があった。歌合は歌人にとって自分をアピールする絶好の機会であったろうが、私
はあたかもこれから自分の昇進に影響するような、失敗の許されない勝負の場に出てき
たような気がした。その後、白拍子の舞とお家元の朗詠を袖から見せていただいたが、
思わず舞に合わせて手拍子を打ちたくなった。
このような体験は、文献を読んでいるだけではわからないと思う。経験したからこそ、
普段なら読み過ごしてしまいそうな箇所に目を止めて自分の体験と重ねて読むことがで
きるのではないかと思うと、とても楽しい。
今回は歌人の役をさせていただいたが、これから練習を重ねて、今様歌に合わせて舞
うことができたらと思っている。
━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━
◆[嵯峨野学藝倶楽部]5月開講講座のお知らせ ◆
━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━
詳しくは、http://www.ren-produce.com/sagano/club/から
★「茶道教室(土曜日コース)」
日程:5月17日(土)・24日(土)
時間:午後3時〜8時(ご都合の良い時間に、お越しください)
※見学/体験も、随時受付けています。
★「今様・白拍子教室」
日程:5月17日(土)・31日(土)
時間:午後1時〜2時(60分)
※見学/体験も、随時受付けています。
★「京都歴史講座」
日程:5月18日(日)
時間:午前11時〜12時30分(90分)
内容:「八幡」
参加費:1回1,000円(茶菓子付)
※1回のみの参加も受付けています。
★「茶道教室(水曜日コース)」
日程:5月21日(水)
時間:午後3時〜8時(ご都合の良い時間に、お越しください)
※見学/体験も、随時受付けています。
★「華道教室」
日程:5月31日(土)
時間:午前10時〜午後7時(ご都合の良い時間に、お越しください)
※見学/体験も、随時受付けています。
●URL
http://www.ren-produce.com/sagano/club/
お問合せ・お申込みはコチラまで→sagano@ren-produce.com
┌─┐┌─┐┌─┐┌─┐
│ひ││と││こ││と│
└─┘└─┘└─┘└─┘
はじめまして! 今回からメルマガ担当になった2人の内の1人、岸本です。
5月2日に催された『源氏物語〜六条院の四季』、私も白拍子として出させてもらいま
した。本格的に舞というものをやるのは初めてだったのですが、白拍子の奥の深さを垣
間見ることができました。
今様に合わせた少ない動きの中に、どれだけの感情をこめられるのか。
これからも精進していきたいと思います。
(きしもと)
[ 次回は、6月1日(日)に配信予定です! 次回もお楽しみに。]
================================================================================