嵯峨野文化通信 第53号

 伝統文化プロデュース【連】メールマガジン
 ☆★—–━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━—☆★☆
             〔嵯峨野文化通信〕 第53号
 ★☆★—━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━—–☆★

         日々の暮らしに「和」の魅力をプラスしてみませんか?

    伝統文化プロデュース【連】は、日本の伝統文化にこめられた知恵と美意識に
          ついて、学び広めていくための活動をしている団体です。

         京都・嵯峨野から、最新の情報を皆さんにお届けします!
               毎月1日・15日(月2回)

                       ★VOL:53(2008/4/15)

 ━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━
 ┏━┓┏━┓┏━┓
 ┃も┃┃く┃┃じ┃
 ┗━┛┗━┛┗━┛

  ○【連】からのお知らせ———————–嵯峨芸術大学・連続講座
                         京都流議定書
                        「花街の文化とまちづくり」感想
  ○(連載)「源氏物語を勉強しよう」———–紫式部のひいおじいちゃんは
                         すごいの巻

 ━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━

 ━━━━━━━━━━
 【連】からのお知らせ
 ━━━━━━━━━━

  京都嵯峨芸術大学で開催されてる連続講座「京の美意識」は、2004年5月に完成し
 た罧原キャンパス「有響館」開設記念事業として始まった講座です。今月の26日(土)
 に行われる第33回目の講座に、【連】メンバーの太田達が講師として登場いたします。
 神仏を祀る上で欠かせないお供物としての菓子について、その変遷と現代社会における
 変容についてです。お時間のある方は、ぜひ、お足お運びください。

 タイトル:第33回「信仰と菓子−祈りの変容−」
 日程:4月26日(土)
 時間:午後2時20分〜
 講師:太田 達氏 (株式会社「老松」代表取締役社長)
 会場:G401教室(罧原キャンパス有響館4F)

 お申込みは、下記のURLから
 http://www.kyoto-saga.ac.jp/ukyokan/kyoto/extension_form.html

 <講師プロフィール>
  1957年(昭和32年) 京都に生まれる。
  1981年(昭和56年) 有職菓子御調進所「老松」四代目として家業を受け継ぐ。
  現在、池坊学園教授。京都女子大学・立命館大学・京都精華大学非常勤講師。 NHK
 「課外授業ようこそ先輩」「今日の料理」などに出演。食の原点を求めて世界各地を巡
  る。国内外問わずユニークな茶会を多数開催。
 【著書】 共著に『茶道学大系4懐石と菓子』(淡交社/1999年)、『菓子の茶事を
 楽しむ』(淡交社/2002年)などがある。

 【有職菓子御調進所 老松】 1908年(明治41年)北野上七軒にて創業。有職儀式
 典礼にもとづく婚礼菓子、茶席菓子を中心に製造。菓子を通して京都の歴史と文化を伝
  えている。

 ○【連】協力イベント
    京都流議定書【Do you Kyoto? Do you Kyotostyle?】へのお誘い

  株式会社ウエダの70周年記念式典共催イベントである「京都流議定書」が、5月1
 日からの3日間、ハイアットリージェンシー京都で行われます。その2日目、「もっと
 京都を知る一日〜伝統〜」と題した5月2日には、【連】のスタッフが企画運営を担当
 した、「源氏物語〜六条院の四季〜」と題した今様の舞台と、源氏物語にちなんだ呈茶
 を行うことになりました。
  会場となるホテルのあった場所は、かつて後白河法皇が建て、「今様合」の舞台とし
 た法住寺殿の跡地。その同じ場所で、時を超えて行われる今様の舞台をお楽しみ下さい。
 また、呈茶では源氏物語にちなんだ茶菓子を味わうこともできます。
  更に、併設展として、「京宴〜現代に活きる源氏物語〜」を開催。こちらも、【連】
 のスタッフが全体プロデュースを担当した、異なる分野の女性アーティストによる作品
 展示コラボレーションです。順に見ることで源氏物語の壮大なストーリーの風景が浮か
 んでくるものとなっています。
 
  詳細はホームページで→ http://www.ueda-h.co.jp/press/080407.html

 ○「京都発 花街の文化とまちづくり」参加者の感想が届きました

  前号で予告したとおり、3月16日に祇園甲部歌舞練場で開催されたイベントの感想
 を掲載します。まずは、このイベントのポスター・チラシのデザインを担当した、三木
 佑美さん。

  大変面白く、大事な話が沢山ありました。以下に個人的な感想を記させていただきま
 す。まず、井上氏の、「まちづくりイコールまちおこしではないのではないか」という
 お話の中で、観光地になることは本当に御茶屋さんが望む姿なのか、また京都の住民が
 本当に望むべき姿なのかという問題提起はとても大事なポイントだと思いました。
  また、上林氏の”町並は人並”、地域のことはその地域の伝統をもって、そこに住む
 人たちが判断するべきだという祇園甲部の街づくりの事例もとても感心しました。
  太田氏と山崎氏の、花街の文化を一般の人々へ広めようという試みからは、それ以前
 に、旦那さんの育成や現在の税制、文化の教育面で課題が多く存在することもわかりま
 したし、島原の高橋氏の、太夫を存続させていきたいという切実な思いも知ることがで
 きました。
  本日のシンポジウムをもって、現在の京都にはとても多くの問題が存在することが判
 明しました。その多くの問題を、まず市民が共有して共に議論していかなくてはいけな
 いと思います。解決策を探すというよりも、まずは現状の問題をみんなで相談できるよ
 うにするべく、呼びかけていく。大きく言えば、市民一人一人が花街を含め、京都をど
 うしたいかということについて考えなくてはいけないと思いました。
 このような思いを得て、本日の会場を出ましたら、花見小路を行き交う若者が沢山いま
 した。この、目の前の若者が本日のシンポジウムを聞いていないことを残念に思いまし
 た。チラシ制作時に、少しでも若者にも来てもらえるようにと思って作成したのですが、
 やはりかなわず、ちょっと残念でした。このような話し合いの場がもっと多くの場所で
 されるように、市にもさらに取り組んで頂きたいと思います。

  次は遠山怜欧さん。彼は最近【連】に参加し始めた大学生です。

  3月16日に祇園甲部歌舞練場で花街の文化を考えるシンポジウムが行われました。
 とても興味深い話が聞けたのですが、その中でも花街の抱える後継者不足の問題が気に
 なりました。現状、どこの花街でも多かれ少なかれその問題を抱えていますが、とりわ
 け顕著に現れているのが島原。島原は、かつては公許の花街であったにもかかわらず、
 今では京都五花街にも入っていません。その大きな理由が人材不足だということです。
  特に島原の太夫に関しては、修得すべき技芸の多さなどから、芸妓よりも育てるのが
 難しいとのことで、それが現状につながっているとの話を聞きました。
  私は、花街の人材不足というのはある程度仕方がないことだと思っています。なぜな
 ら、太夫や芸妓というのは、幼い頃からその文化に触れ、芸事を磨くことが大事なのに、
 今の社会には他にも楽しみが多すぎるからです。たとえ、幼い頃に伝統文化に触れる機
 会があっても、他のことにも興味を持ち、そちらの方に流れやすいのではないでしょう
 か。ですから、もし無理矢理に教育の現場に伝統的な文化をねじ込んだとしても、子供
 たちにとって自主的な取り組みにはならず、あまり効果は期待できないように思います。
 ならば、どうすればよいか?もっと幅広く、伝統文化の良さをアピールすることが必要
 なのではないでしょうか。たとえば、テレビの情報番組などで「伝統芸能(文化)って
 こんなに“かっこいい”んだよ」とアピールするのです。もちろん、近年そのような取
 り組みも見られますが、まだまだ工夫が足りないように思います。とくに、子供はテレ
 ビに影響されるところが大きいと思います。どうせテレビを見るのならば、少しでも伝
 統文化の良い面をアピールすることができれば・・・というのがこの問題に対する私の
 考えです。私も、つい最近【連】に出会って、伝統文化について、知らない魅力がまだ
 まだたくさんあることに気付きました。私が影響されたように、工夫次第で、もっと「
 良さ」をアピールできるのではないでしょうか。
  まだまだ机上の空論ではありますが、シンポジウムを聞き、意見を同じくする仲間を
 地道に増やすことが大事だと思いました。いや、そのために、私はこんな下手な文章を
 書いているのかもしれません。「何この下手な文!花街のこともよくわからないじゃな
 いか!」と思われるかもしれませんが、私の感想を読んで、花街のことを《逆に》知り
 たくなる人が一人でもいればいいなあと願っています。

                       ━━━━━━━━━━━━━━━━━
                        (連載)「源氏物語を勉強しよう」
                       ━━━━━━━━━━━━━━━━━

            紫式部のひいおじいちゃんはすごい        橋場 愛

  今回からメルマガで連載をさせていただく橋場と申します。多分不定期連載になるか
 と(苦)。メルマガ連載の依頼をいただいて三ヶ月(長!)、うんうん考えた結果、今
 年は「源氏物語千年紀」という言葉が飛び交っておりますし、今様でも『源氏物語』を
 題材にした演目を行うとのことでしたので、連載内容は『源氏物語』でいこうと思い、
 第一回目はこんな題名になりました。でも実は私、恋愛より今日の夕飯のほうが興味津
 々の人生を送ってまいりましたので、色恋沙汰満載の『源氏物語』については全然知ら
 ないことだらけ。なんと『あさきゆめみし』を高校生のとき読んだくらいで、明石の君
 が前髪センター分けだったくらいの知識しかありません。ですから、これからは自分の
 勉強がてらちょこちょこっと『源氏物語』について書かせてもらおうと思います。もう
 知ってるYO! という内容でもどうぞご勘弁ください。

  ということで第一弾。今回は紫式部のひいおじいちゃんにスポットライトを当ててみ
 たいと思います。さかのぼりすぎたよ!というツッコミは左へ受け流す。紫式部の才能
 を育てた環境みたいなものを理解していただけたら幸いです。

  『源氏物語』を書いた紫式部は、一条天皇の中宮彰子に仕えた才女です。名門藤原北
 家(ふじわらほっけ)の子孫ですが、父親はようやく越前・越後の守の官職を得た程度
 で中央政界で大活躍! というような家柄の人ではありませんでした。ただ、越前国は
 大国なので収入はソコソコあったようです。でもどんなに収入があっても都から遠く離
 れた所に行くのはつらかっただろうなあ。

  家系には文学者が多く、紫式部のひいおじいちゃんに藤原兼輔(かねすけ)という人
 がいます。兼輔さんは賀茂川堤に邸宅があったことから堤(つつみ)中納言とも呼ばれ
 ていました。『堤中納言物語』の名前の由来にもなった人だそうです(一説)。作者と
 か主人公とかではありません。作品が一話一話バラバラにならないよう包んであったの
 を、実在の「堤(つつみ=包み)」中納言にちなんだという説があります。ダジャレに
 使われるくらい有名な人だったようです。

  兼輔さんは和歌・管弦に優れており、三十六歌仙の一人でもあります。「みかの原 
わきて流るる泉川 いつ見きとてか 恋しかるらむ」という和歌は百人一首に収録され
ており、有名です。紫式部の文学的才能はおじいちゃんから受け継いだものだったかも
しれません。紫式部も「めぐり逢ひて 見しやそれとも わかぬ間に 雲隠れにし 夜
半の月かな」という和歌が百人一首に入っています。和歌の才能は遺伝なのか?

   初めは下級官吏でしたが、兼輔さんの娘の一人が醍醐天皇の子供を産んだことから、
 兼輔さんは親王のおじいちゃん(外戚)として政治の中枢を担うようになりました。

 また、兼輔さんは紀貫之のパトロンとしても有名です。醍醐天皇が「古今和歌集」を
 編纂する企画を立ち上げたとき、紀貫之に編纂の話をもっていったのは兼輔でした。紀
 貫之は下級官吏であったので、天皇から直接命令をうけることはなく、兼輔が紀貫之に
勅命を告げたのでした。兼輔がいなかったら、紀貫之のかの有名な「やまとうたは 人
のこころをたねとして・・・」の「仮名序」は『古今集』にはなかったかもしれません。
(というのは言い過ぎかな?)

  そのような曾祖父を持ち、父からも薫陶をうけ、紫式部は当時最先端のキャリアウー
 マンとして宮中で活躍しました。そしてかの大作、『源氏物語』が書かれるわけであり
 ます。ちょっとだけ、おじいちゃんもお父さんも私も代々東大よ!みたいな雰囲気を感
 じます・・・。ただ、おじいちゃんは外戚として頑張ったけど、おとうさんは地方公務
 員程度でおわってしまったところは、学者家系らしい不器用さというものも感じてしま
 ったりします。あんまり裏工作とか出世栄達にあくせくする人じゃなかったのかなあ。
 ここらへんは想像の域ですが、学問を愛する清廉なお家柄だったのかもしれませんね。

                                   (つづく)

          (参考文献『ビギナーズクラシック 土佐日記』角川文庫
               『文法全解 源氏物語』 旺文社  古典辞書類多数)

 ━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━
         ◆[嵯峨野学藝倶楽部]4月開講講座のお知らせ ◆
 ━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━

        詳しくは、http://www.ren-produce.com/sagano/club/から

  ★「花街文化講座」
   日程:4月19日(土)
   時間:午前11時〜12時30分(90分)
   内容:「島原」
   参加費:1回1,000円(茶菓子付)
   ※1回のみの参加も、受付けています。

  ★「茶道教室(土曜日コース)」
   日程:4月19日(土)
   時間:午後3時〜8時(ご都合の良い時間に、お越しください)
   ※見学/体験も、随時、受付けています。

  ★「京都歴史講座」
    日程:4月20日(日)
    時間:午前11時〜12時30分(90分)
    内容:「」
    参加費:1回1,000円(茶菓子付)
    ※1回のみの参加も、受付けています。

  ★「茶道教室(水曜日コース)」
    日程:4月23日(水)
    時間:午後3時〜8時(ご都合の良い時間に、お越しください)
    ※見学/体験も、随時、受付けています。

  ●URL
  http://www.ren-produce.com/sagano/club/

         お問合せ・お申込みはコチラまで→sagano@ren-produce.com

 ┌─┐┌─┐┌─┐┌─┐
 │ひ││と││こ││と│
 └─┘└─┘└─┘└─┘

  「京都発 花街の文化と町づくり」へのご感想をいただいた、三木さん・遠山さん、
 ありがとうございます☆ ご参加いただいた方で、ご感想をいただけると嬉しいです。

   [次回は、5月1日(木)に配信予定です! 次回もお楽しみに(^▽°)]
        ☆治☆
================================================================================

 

多くの方に有斐斎弘道館の活動を知っていただきたく思っております。
記事が面白かったら是非、シェアいただけると幸いです。