嵯峨野文化通信 第7号

☆————-伝統文化プロデュース【連】メールマガジン————–
      〔嵯峨野文化通信〕 第7号 2006年5月15日
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 伝統文化プロデュース【連】は、日本の伝統文化にこめられた知恵と美意
識について、学び広めていくための活動をしている団体です。

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 ■□■ もくじ ■□■

 1.【連】の今後の催し
 2.京都をめぐる歳時記 〜小満の章〜
 3.(連載)新・都鄙の連関 第3話
 4.(連載)京都文化警察
 5.メンバー紹介

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◇――1.【連】の今後の催し――――――――――――――――――――◇

○4月に開講した〔嵯峨野学藝倶楽部〕では、現在、4講座が好評開講中です。
各講座の7月以降の日程は、〔嵯峨野学藝倶楽部〕のホームページをご覧くだ
さい。

〔嵯峨野学藝倶楽部〕は、日本の伝統文化を気軽に楽しく体験すると同時に、
より深く学ぶことができる場として様々な講座を開講しています。

●〔嵯峨野学藝倶楽部〕のホームページ
http://www.ren-produce.com/sagano/

○【連】では、京都の洛北・大原の地元の方が大切に育てた「山野草」を直送
販売しています。その「山野草」のホームページが、この度、リニューアルし
ました。季節が移り変わる中で、様々な表情を見せてくれる「山野草」のペー
ジをご覧ください。

●「山野草直送便」のホームページ
http://www.ren-produce.com/sanyasou/

◇――2.京都をめぐる歳時記 〜小満の章〜 ――――――――――――◇

 5月21日〜6月5日は、節分を基準に、1年を24等分して約15日ごと
に分けた二十四節季のひとつ「小満(しょうまん)」です。

 「小満」とは、「草木などの生物が次第に生長して生い茂る」という意味で
す。
 田に苗を植える準備を始める時期や、山野の植物が花を散らして実を結び万
物が健やかに満ちる時期でもあります。『暦便覧』には、「万物盈満(えいま
ん)すれば草木枝葉繁る」と書かれています。

 ちなみに、沖縄の梅雨は五月中旬から六月下旬頃で、二十四節気の「小満」
と「芒種(ぼうしゅ)」にあたります。沖縄では、この時期の雨を「小満芒種」
と呼んでいます。

〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜「小満」の時季を楽しむために〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜

○6月2日(金)〜4日(日)に、「都ライト ’06」が行われます。
 【連】では、昨年同様「花街文化研究会」のスタッフとして、上七軒でのイ
ベントに協力しています。

 「公」と「私」が交錯する町家の内から、格子を通じて外にもれる「暮らし
の光」を体感するイベント、「都ライト」。2回目となる今回は、「人と町」
・「人と家」・「(人と人とを繋ぐ)織り成す暮らし」をテーマに、「上七軒
通」の他、西陣織の町「浄福寺通」、京都映画の原点である千本通に位置する
「西陣文化センター」の2会場を新たに加えて開催されます。

☆上七軒でのイベント

●第2回 北野上七軒を語る会

 日時:6月3日(金) 午後7時〜9時
 内容:昭和10年前後の、上七軒界隈の貴重な映像を上映します。
 場所:有職菓子御調進所「老松」 (上七軒通)

●元お茶屋さん一部公開

 日時:6月3日(金)〜4日(土) 午後7時〜9時
 内容:築100年以上の元お茶屋建物を昨年修理復元。
    その一部を公開。
 場所:旧貴久美(井上邸) (上七軒通)

●昭和初期の上七軒の写真展示

 日時:6月2日(金)・3日(土)・4日(日) 午後7時〜9時
 内容:昭和初期の上七軒の町並み、舞妓さん、芸妓さん、祭礼などの写真を
    公開します。
 場所:長谷川邸 (上七軒通)

※以上のイベントは、すべて参加費「無料」です。
(参加ご希望の方は、当日、直接会場へお越しください)

主催:都ライト実行委員会
共催:北野上七軒界わいまちづくり準備委員会
   花街文化研究会(【連】)  他

●都ライトのホームページ
http://www.anewal.net/miyako_light/

◇――3.(連載)新・都鄙の連関 第3話―――――――――――――――◇

        ―遠山郷・上村(2)―     太田 達

 12月13日の昼すぎ、下栗の集落に着いた。信州飯田市より山深くに分け
入ると、カーブの連続。そして、長い長いトンネルを抜けると、上村に入った。

 このトンネルは最近新しく出来たものだ。これがなければ、ここには簡単に
車では来られない。それほど、山深い。上村の役場のある中心地は、いわば両
脇2000m級の山脈が連なる谷底である。ここより上は、車と同じ幅のヘア
ピンが連続する山道で、700mくらい進むと、車と同じ幅のヘアピンが連続
する山道で、天空の里、東洋のチロル、下栗である。

 車で行けるぎりぎりの行き止まりに車を置き、最後の300mくらいをあえ
ぎながら歩いて行くと、村の鎮守というたたずまいの、ほこらを兼ねた村の集
会所がある。その前には、大きな焚き火。

 おそるおそる大きな木の引き戸を開けた。入口左に木戸口のようなものがあ
り、黒羽織のおじいさんがいる。煙い。室内の真ん中には、土で作った長方形
の砂場のような土台がある。これがかまどであり、そこに大きな釜が2基据え
られている。薪がどんどんくべられていく。釜のまわりには、「釜おび」とい
う縄が巻かれ、紙幣がさがっている。炎すれすれの位置にあって、大きく揺れ
ている。燃えないのが不思議なくらいだ。釜の上方には、米と豆を半紙で包ん
だ依代が据えられ、神が降臨し、とどまる場所となっている。そしてそこから、
「湯の上かざり」と呼ばれる数多くの切り紙が四方へと垂れさがっている。切
り紙は、神宝、日、月、人面、八つ橋、花、千道、ひさごなど様々な型をして
おり、この村独特の形もあるという。

 かまどの前には、上手に2人、下手に2人ずつ、村人の中より選ばれし禰宜
が座っている。ちょうど、「神帳」と呼ばれる、全国一の宮などの名を読みあ
げ、神々を祭へ招待する詞章が、歌うように堂内を響いていた。その禰宜のス
タイルに驚き、興奮した。要するに、神職の白丁姿に、なんと数珠を持ってい
る。そして、九字を切り、神の舞を舞う。これは何? 両部神道(天台密教の
神道)ではないか。神仏が習合している。
 いよいよ、湯立神事の始まりである。
                               (つづく)

◇――4.(連載)京都文化警察 ――――――――――――――――――――◇

 四条通りの御幸町あたりだろうか。風神雷神が出現しているのをご存じだろう
か。中世においては、今宮や若宮が現われることを「出現」と言ったが、まさに
そんな風である。なぜそう感じるのかを考えてみた。理由は単純。その大きさだ。
本当にでかい。目立つ看板だ。夜になれば、ライトがチカチカ点灯する。本当に
よく目立つ。広告としての観点からすれば大成功といっていいのかもしれない。
でも、前を通るたびに、なんとなく目をそむけてしまうという人はいないだろう
か? 信号待ちで停まる時、なにかコワイもの見たさで見てしまうといった感覚
はないだろうか?

 10年前、モンゴルに行った時、街の美しさに感動したことがある。看板が全
くないのだ。外国人には、どこに何の店があるのかわからない。だが、それがか
えって旅を面白くしていた。それが、3年前、再度訪れた時には、民主化が進み、
看板が続々と立てられていた。道路側に違法に押し出ている店などもあり、かつ
ての町並みは失われつつあった。自由化が進み、いいことも沢山あるのだろうが、
街の魅力は、はっきり言って半減した。残念という他ない。

 つい先日、久しぶりに清水・三年坂を歩いてみて、街の変貌ぶりに驚いた。な
んと看板が多くなったことか! それに、呼び込みをする人。音楽をかける店。
かつてのひっそりとしたたたずまいが懐かしい。石畳と、狭い路地から見え隠れ
する八坂の塔や寺院の屋根や壁。そんな心ときめく街歩きは、もう期待できそう
にない。

 先日、ヴェネツイアを訪れた。ヴェネツイアには、大きなロゴや看板がない。
貸しビデオ屋にもファストフード店にも、看板がない。四条の風神雷神の近くに
あるあのブランド店も、ヴェネツアでは小さな目立たない上品な店構えだ。ウイ
ンドウに飾られた品物も、かえって素敵に見えた。

 果たして、看板があるから商品が売れるのだろうか?
 呼び込みをするから人が来るのだろうか?
 目先のことを言えばその通りかもしれない。
 でも、街全体として、長い目で見れば、どうだろうか?  

 いま、京都は空前の観光ブームと言うが、その一方で、本当にいいモノ、いい
建物、いい環境は、知らない間にどんどんなくなっていっている。危機的状況と
いっていい。

 ヴェネツイアを年中ひっきりなしに訪れる観光客は、道に迷うのが面白いのだ
と当然のごとくに言う。看板がなくても、夜が暗くても、タクシーがなくても、
親切な地図がなくても。いや、だからこそ、ヴェネツイアは、世界中の人々が一
度は訪れたいという、あこがれの街なのだ。

 京都でも、いかがであろうか?
                                (京雀)

   ※京都文化警察では、みなさまからの告発を募集しています!
    ☆目撃情報は、こちらまで。→sagano@ren-produce.com☆

◇――5.メンバー紹介――――――――――――――――――――――――◇

【連】のメンバーによる、自己紹介のコーナー。
7人目に登場するのは、鈴木岳海さんです。

 普段は、いくつかの大学で映像人類学などの非常勤講師をしています。

 僕がこの会に関わるようになったのは、特に「伝統文化」への関心からという
わけではなく、上七軒に住む方々にお話を伺うためのアドバイスからでした。そ
のことから、いまはインタビューや映像記録とその保存活用を通して、まちの歴
史と人々の記憶、そして、まちづくりと伝統文化をどのようにすればリンクでき
るかを中心に【連】で遊ばせてもらっています。

 【連】は、伝統文化とはあまり縁がなかった僕でも心地よくいれる場です。
メルマガを読んでらっしゃる皆様にも、これまでにない視点からの伝統文化を紹
介できると思います。

○O+編集後記+O○****************************************************

 雨が多くなってきましたね。雨が降ると出掛けるのも億劫になったりしますが、
何時もとは違って見える景色や花を見に出掛けてみませんか?

 これからも、【連】では様々なイベントの開催予定や、日本の文化・歳時記な
どについて皆さんに、どんどんお伝えしていきます。

  [次の発行は、6月1日(木)の予定です。次回も、お楽しみに!]

                                  (治)

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多くの方に有斐斎弘道館の活動を知っていただきたく思っております。
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