嵯峨野文化通信 第142号

伝統文化プロデュース【連】メールマガジン

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  ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄)   [嵯峨野文化通信] 第142号
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 伝統文化プロデュース【連】は
 日本の伝統文化にこめられた知恵と美意識について
 遊びながら学び、広めていく活動をしている団体です

         
       嵯峨野文化通信は、伝統文化を「遊ぶ」ためのヒントを発信します

                毎月1日・15日(月2回)
 
                       ■VOL:142(2012/1/1)

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                 ■□■もくじ■□■

  ■【連】からのお知らせ ————–有斐斎弘道館月釜「有斐斎初点式」のご案内
                     新年文化講座のご案内
  ■(連載)『源氏が食べるー平安文学に描かれる食ー』———- 第四十二回
  ■(連載)『北野の芸能と茶屋』—————————— 第四十五回
  ■(連載)『やまとのくには言の葉のくに』——————– 第九十八首
  ■[嵯峨野学藝倶楽部]1月開講講座のお知らせ

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                □■新年のご挨拶■□
                          
                          伝統文化プロデュース【連】代表
                                   濱崎 加奈子

  新年あけましておめでとうございます。
  昨年は、活動の中心を有斐斎弘道館に移し、茶会、展覧会、シンポジウムなど、数多くの
 事業を行ってきました。多くの人々のご声援、お力添えを賜り、本当にありがとうございま
 した。
  稀に見る数々の大災害、また世界経済、政治のありようを通して、何を幸とするかという
 問いが渦巻いた一年。そのような中、人々の絆が大きくクローズアップされました。私たち
 「連」の活動は、伝統文化を通して人と人、人と歴史のつながりを回復させることを目的と
 してまいりました。伝統文化の果たす役割がますます大きくなっていることを実感していま
 す。
  さて昨年の事業のなかでとりわけ印象的だったのは、伝統文化を通したいくつかの育成事
 業でした。企業研修やビジネスセミナーととして伝統文化を取り入れることは、私たちが長
 く計画してきたことでした。伝統は、「難しいもの」「できれば避けたいもの」ではなく、
 自身の仕事や生き方に「生かせるもの」という積極的な意味を見いだしていただけたのでは
 ないかと思います。
  伝統は「守る」だけのものではなく、私たちのもつ無二なる豊かな財産であり、新たな価
 値と創造の源泉です。本年も、この伝統の知と美のほまれを有りがたく享受させていただき
 つつ、真摯に活動に邁進してまいりたいと思います。ひきつづき、お力添えのほど、どうか
 よろしくお願いいたします。

                                     太田 達
  おおつごもりに 
                        
  今年は、なかなかメールマガジンの原稿が書けなかった。創刊以来、奮闘がんばってきた
 のだが、素敵な原稿で皆さんが繋げていただいて安心してしまった事もあるのだが甘えてし
 まった一年でした。がんばってこの一文を書こうとパソコンを開くと「消費税値上げ案が承
 認」のニュースが目に飛び込んで来た。何かおかしい、震災以来絶えず考える事が多くなっ
 た気がする。この国では、まっとうな政事が行われていない。世界中見渡しても同じ事が云
 える。政治家の資質の問題もあるのであろうが 民主主義というものの限界なのであろう。
  先日の大阪のW選挙においても刷新をもとめた結果なのか、マスコミにエンロールされた
 ようにみえる。今から80年程前のミュンヘンからおこった国家社会主義ドイツ労働者党
 (ナチス)の受容の世相に類似している事を危惧しているのは、わたしだけであろうか。
  こういった時代に何が必要なのか? 私はまさに文化の力ではないかと思う。震災の時、
 日本人がその伝承と歴史に培われた日本的な民間的互助精神で行動した時、世界の評価は非
 常に高かった。その後、政府機関が動き出したときこの評価は急降下した。 
  過去を知る事、様々な経験値に積み重ねられた教養を身につける事、それがたった一度の
 人生、そして、同時代を偶然にも共に生きる人々と楽しく生きられることに鳴るのではと思
 う。
  一月から、各時代の天皇をとりあげ、その時代の政治家、官吏にどのような人がいて彼ら
 が何を考え何をしたのか、そして、それが、どのような結果を招いたのか。
  「弘道館講座」で考えていきたいと思う。

              □■【連】からのお知らせ■□

  ■ 有斐斎弘道館月釜「有斐斎初点式」のご案内

   2012年を迎えまして、最初の有斐斎弘道館の月釜です!
    こちらは前年通り弘道館月釜会員以外の方もご参加いただけますが、時間予約制となっ
  ており、会員以外の方は14時、15時のお席をご用意いたしております。
   現在の時点ではご希望のお時間をお選びいただけますので、どうぞお問い合わせくださ
  い。たくさんの方のお越しをお待ちしております!  

 日 程:1月22日(日)
 時 間:11時~15時 
 場 所:有斐斎弘道館
 参加費:3,000円(会員の方は不要)
  
 詳細はコチラ
 http://kodo-kan.com/tea.html
  
 申し込み、問合せ先はコチラ
 TEL :075-441-6662
 MAIL:tea@kodo-kan.com
  
 有斐斎弘道館(上京区上長者町通新町東入ル元土御門町524‐1)
 http://kodo-kan.com/access.html
  
 ただいま、月釜会員募集中ですので気軽にお問合せください。
 年会費:1万円(各回の参加費は不要です)

  ■ 新年文化講座のご案内

   前号でもご案内しておりましたが、新年より新しい文化講座が始まります!
   昨年の文化講座を受講しておられた方、また受講出来なかった方も、有斐斎弘道館の庭
  園を眺めながら学びませんか?今年も濃い内容の講座が揃っております。
   ただいま受講受付中ですので、お問い合わせの上ぜひご参加ください!

  「京文化教養講座1~天皇からみる京都~」

  日程 :1月14日(土)
  テーマ:「嵯峨帝」
  時間 :11時~12時30分(90分)
  場所 :有斐斎 弘道館 
  講師 :太田 達(京都女子大学非常勤講師)
  参加費:6回12,000円(1回毎2,000円)*茶菓子付き
    ※1回毎の場合は要事前予約

  
  「京文化教養講座2~茶の湯の文化を識る~」

  日程 :1月17日(火)
  テーマ:「正月の茶」
  時間 :13時~14時30分(90分)
  場所 :有斐斎 弘道館 
  講 師:桐浴邦夫、太田達、濱崎加奈子
  参加費:6回12,000円(1回毎2,000円)*茶菓子付き
    ※1回毎の場合は要事前予約

  「京菓子専門講座2」

  「春の餅と葛」をテーマに、京菓子の歴史、理論、製作技法、デザインを学びます。
  日程 :1月17日(火)
  テーマ:「はなびら餅と餅文化」
  時間 :15時~16時30分(90分)
  場所 :有斐斎 弘道館 
  講 師:太田達 ほか
  参加費:6回30,000円 *茶菓子付き

  ※上記の講座を受講するには申込みが必要です。
  お申込み、お問合せはコチラ
  TEL :075-441-6662
  MAIL:kouza@kodo-kan.com

  講座についての詳細はコチラ
   http://kodo-kan.com/seminar.html

  有斐斎弘道館(上京区上長者町通新町東入ル元土御門町524‐1)
  http://kodo-kan.com/access.html

  ※4月より開講予定の講座
   「茶会はじめ 中級」(全5回)
   「今様・白拍子・平家物語」(全6回)

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          ■『源氏が食べるー平安文学に描かれる食ー』■       

                   第四十二回       

                                  荻田 みどり

 あけましておめでとうございます。本年もどうぞよろしくお願いいたします。

 今回は、『枕草子』の正月記事を見てみたい。「正月一日は」の章段である。

 正月一日は、まいて空のけしきもうらうらとめづらしう、霞みこめたるに、世にありとあ
る人は、みな姿、かたち心ことつくろひ、君をもわれをもいはひなどしたる、さまことにを
かし。

 年が改まって、空の様子も何やらいつもと違う気がする。人々の気持ちもいつもより念入
りに身づくろいをし、新しい年を祝おうという気持ちが満ちている。そんな、いつもとは異
なる雰囲気が、清少納言には「をかし(面白い・興味深い)」と感じられる。

 この章段で食が見られるのは、まず七日のこと。

 七日、雪間の若菜摘み、青やかにて、例は、さしも、さるもの目近からぬ所に、もてさわ
ぎたるこそをかしけれ。

 今でも行われる七日の行事、七草を食すため、雪間の若菜を摘む。若菜は、高貴な場所で
は普段なら見慣れないようなものである。それを、正月七日の今日だけは、もてはやして騒
いでいる。
 若菜という食は、『源氏物語』四十の賀において、玉鬘が源氏に若菜を献上している。
そのような、ハレの食べ物であった。しかし、普段は上流貴族がもてはやすような代物では
ない。若菜は、ハレの時だけハレの食になる。そして、その若菜を食すことにより、一年の
初めに万病邪気を払う。清少納言にとっては、それが「をかし」いのだ。
 食の露骨な表現を避ける平安期の王朝物語だが、ハレの儀式の場に描かれることもままあ
る。食には特別な時だけ特別な物に変化するという特徴があるのではないだろうか。

  
               ■『北野の芸能と茶屋』■           

                   第四十五回            
                                   井上 年和  

 正保三年(1646)10月16日

  「十六日、晴天如春日也。予自鶏鳴、喫朝食、而赴七本松也。今度観世太夫勧進能於七
本松、而有之也。(後略)」『隔メイ記』

 『隔メイ記』(「メイ」は草冠に冥)は金閣寺の住職である鳳林和尚の日記であるが、北
野七本松での勧進能の様子を伝えている。

15日が雨だったので16日から始まり、17日も公演したが、18・19・20・21日
が雨で、22・23日に公演し結局たったの4日間で終了している。

 舞台は三間四方南向で、外側には外屋を廻し、後は板張り、水引幕は無く、橋掛は十一間。
橋掛の北側には板を張り、北方に二本・南方に三本、合計五本の松を植えている。舞台の近
所に畳三百畳余り一般客席と、それを取り囲むように八十三間のVIP桟敷がある。
 一畳に付き一両であるが、4日間貸切なので、籠もる奴がいる。畳に籠もる奴はただだが、
桟敷に籠もる奴は白銀5~10枚の貸賃を要した。恐らく屋根が架かっていたのであろう。

 鼠戸口(入場口)を出入すると、1回に付き銀二銭目かかる。鼠戸口には札は無いが、鼠
戸口の上には白い幕が張ってあって、藤丸の文が付いている。楽屋口にも幕が張ってあって、
周囲には竹垣に藁の筵を廻らせている。その柵との間は空地が広い。桟敷の正面には公方用
の桟敷、その両脇には所司代用の桟敷がある。所司代からは板倉周防守と侍が来ていた。

 この時の桟敷の様子は荻野家文書『観世太夫勧進能仕候絵図』にも描かれている。この絵
図は寛文十二年(1672)3月12日に若狭守様へ指し上げた扣であるので、精度は高くな
いが、竹内芳太郎著『日本劇場史』に記載されている『観世太夫勧進能場図』や富田屋文書
『聚楽内野ニ而観世織部勧進能場絵図』では、元禄十五年(1701)の劇場図がかなり詳細
に記されている。南側は仁和寺街道、東側は七本松通、西側はあをや通により仕切られた約
一町四方の広場に柵で区画をし、中には南向きの舞台の前に一般客席が並び、84間の桟敷
が周囲を取り囲み、背面には楽屋があり、柵と桟敷の空地には水茶屋が立ち並び、雪隠も用
意されている状況がよくわかる。七軒茶屋も出茶屋を出している。この区画には宝永五年
(1708)に大火で焼失した立本寺が京極今出川(寺町今出川)から移転している。

 このように、仮設的とはいえ大規模な劇場が度々建てられるほど、当時は大量消費社会で
あったのだ。
                                   
   
             ■『やまとのくには言の葉のくに』■          

                   第九十八首               
                                   田口 稔恵

  青柳の緑の糸を繰りかへし いくらばかりの春をへぬらむ
                            (清原元輔・拾遺集巻5 賀)
  (青々と長い柳の糸を手繰るように、もうあなたも何度目の春を迎えられたことでしょう)

 969年12月9日、藤原実頼の七十の賀の際に詠まれた歌とされている。明けて970年の5月
には、実頼は病により世を去っており、現代でも祝いが行われる年齢は、もっとも健康に留
意すべき年であり、厄の一種であるとされているが、その考え方は、強ち間違いでもなさそ
うだ。
 清原元輔は清少納言の父。祖父の深養父、娘の清少納言とともに百人一首に入集している。
「梨壺の五人」として後撰集の編纂や、万葉集の訓読作業に関わった、当代きっての歌人で
ある。

 藤原実頼は摂政関白太政大臣・藤原時平の長男として生まれた。母方の流れでは宇多天皇
の孫にあたる。異母弟の師輔とともに天暦の治を支えた。
 師輔が村上天皇に入れた娘、安子が皇子を次々ともうけたのに対し、実頼が入れた娘・述
子は皇子をもうけないまま亡くなったため権力争いには遅れをとった。自らを「揚名関白
(名ばかり関白)」と嘆いたというが、有職故実に詳しく、朝廷儀礼の一流である「小野宮
流」を形成したほか、和歌や筝、笙に秀で、気難しさを秘めた多才多趣味の人格者として知
られた。

 元輔は、そんな実頼の長命を、長く、青々とした生命力の象徴としての春の柳をたとえに
祝った。たとえ不如意な人生であったとしても、命あっての物だね、命は何にもまして素晴
らしい。

          
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       □■[嵯峨野学藝倶楽部] 1月開講講座のお知らせ■□

 詳しくは、http://www.ren-produce.com/sagano/club/をご覧ください。

 ■「茶道教室(水曜日コース)」
  日程:1月11、25日(いずれも、水)
  場所:嵯峨野三壷庵
  時間:10時~19時(ご都合の良い時間にお越しください)
  講師:西村 宗靖・太田 宗達
  ※見学/体験も、随時受付けています。

 ■「茶道教室(土曜日コース)」
  日時:1月7、28(いずれも、土)15日(日)
  場所:嵯峨野三壷庵
  時間:10時~19時ご都合の良い時間にお越しください
     (28日のみ、10時~12時、15時~19時)
  講師:西村 宗靖・太田 宗達
  ※見学/体験も、随時受付けています。
 
■「今様・白拍子教室」
  日程:1月14、28日(いずれも、土)
  場所:嵯峨野三壷庵
  時間:13時~14時
  講師:石原 さつき
  ※見学/体験も、随時受付けています。
   性別・年齢・経験は問いません。

■「うたことば研究会」
  日程:1月28日(土)
  場所:嵯峨野三壷庵
  時間:15時~16時(60分)
  監修:田口 稔恵
  ※資料代等が必要です。詳細はお問合せください。

 ●URL
  http://www.ren-produce.com/sagano/club/

 お問合せ・お申込みはコチラまで→ sagano@ren-produce.com

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               ■□■ひとこと■□■
  
  昨年は【連】で色んなことをたくさん学ばせていただいたとともに、本当に
  慌ただしく一年が過ぎていきました。私は以前ガラス工芸を学んでおりまして
  今年はそれを再開し、制作に励もうと思っております。日本の他工芸に比べる
 とガラスの歴史は浅いですが、ガラスを通じて日本の伝統文化に沿えることが
  今年の目標です。今年もよろしくお願いいたします!
                                (いまむら)

     [次回は、1月15日(日)に配信予定です!次回もお楽しみに。]

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多くの方に有斐斎弘道館の活動を知っていただきたく思っております。
記事が面白かったら是非、シェアいただけると幸いです。