嵯峨野文化通信 第141号

伝統文化プロデュース【連】メールマガジン

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  ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄)   [嵯峨野文化通信] 第141号
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 伝統文化プロデュース【連】は
 日本の伝統文化にこめられた知恵と美意識について
 遊びながら学び、広めていく活動をしている団体です

         
       嵯峨野文化通信は、伝統文化を「遊ぶ」ためのヒントを発信します

                毎月1日・15日(月2回)
 
                       ■VOL:141(2011/12/16)

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                  ■□■もくじ■□■

  ■【連】からのお知らせ ———— 2012年 春の弘道館文化講座のご案内
                          日本今様謌舞楽会講演会のご案内
  ■(連載)『源氏が食べるー平安文学に描かれる食ー』———- 第四十一回
  ■(連載)『北野の芸能と茶屋』—————————— 第四十四回
  ■(連載)『やまとのくには言の葉のくに』———————- 第九十七首
  ■[嵯峨野学藝倶楽部]12月開講講座のお知らせ

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             □■【連】からのお知らせ■□

  ■2012年 春の弘道館文化講座のご案内

  今年も残りあとわずかとなりました。本年弘道館講座を受講してくださった皆様、
 ありがとうございました。
  2012年の弘道館講座の日程と内容が決まりましたのでお知らせいたします。
  来年も濃い内容のさまざまな講座をご用意いたしておりますので、どうぞご参加
 ください。

  「京文化教養講座1~天皇からみる京都~」

  1月14日(土)嵯峨帝  
  2月18日(土)宇多帝  
  3月10日(土)花山帝
  4月14日(土)白河帝  
  5月12日(土)崇徳帝  
  6月 9日(土)後白河帝

  時 間:11:00~12:30
  講 師:太田達
  参加費:6回12,000円(1回毎2,000円)*茶菓子付き
  ※1回毎の場合は要事前予約
  

  「京文化教養講座2~茶の湯の文化を識る~」

  1月17日(火) 正月の茶
  2月21日(火) 江戸初期の茶室を廻って 講師:桐浴邦夫
                          (京都伝統建築専門学校講師)
  3月13日(火) 雛の茶と利休忌
  4月17日(火) 本願寺と藪内
  5月15日(火) 初風炉とは
  6月19日(火) 古田織部~へうげたるもの~

  時 間:13:00~14:30
  講 師:桐浴邦夫、太田達、濱崎加奈子
  参加費:6回12,000円(1回毎2,000円)*茶菓子付き
      ※1回毎の場合は要事前予約

  「京菓子専門講座2」

  「春の餅と葛」をテーマに、京菓子の歴史、理論、製作技法、デザインを学びます。
  1月17日(火) はなびら餅と餅文化
  2月21日(火) 梅の思想と梅の菓子
  3月13日(火) 上巳と草の餅(ひちぎり)
  4月17日(火) 実習:桜の主菓子を作る(講義「桜の思想」付き)
  5月15日(火) 葛菓子について
  6月19日(火) 実習:ご自身の葛菓子をデザインし、創菓する

  時 間:15:00~16:30
  講 師:太田達 ほか
  参加費:6回30,000円 *茶菓子付き

  お申込み、お問合せはコチラ
  TEL :075-441-6662
  MAIL:kouza@kodo-kan.com

  有斐斎弘道館(上京区上長者町通新町東入ル元土御門町524‐1)
  http://kodo-kan.com/access.html

  ※4月より開講予定の講座
   「茶会はじめ 中級」(全5回)
   「今様・白拍子・平家物語」(全6回)

 ■日本今様謌舞楽会講演会のご案内

  【連】が支援している、日本今様謌舞楽会の護持会が主催する、講演会が行われま
 す。
  第4回となる今回は、同志社大学文学部教授の植木朝子先生をお招きし、「
 『梁塵秘抄』と今様」と題して講演いただきます。植木先生は、今様研究の第一人者
 でいらっしゃいます。
  貴重なお話を聴くことができますので、ぜひご参加ください!

  日程:2012年1月29日(日)
  時間:17時より(16時30分受付開始)
  場所:ハイアットリージェンシー京都(京都市東山区三十三間堂東)
  会費:1万円(講演の後、懇親会にご参加いただけます。食事付)
  内容:「『梁塵秘抄』と今様」
      植木朝子先生(同志社大学文学部教授)

 お問合せ・お申込みはコチラ
  info@imayou.jp

 日本今様謌舞楽会のHPはコチラ
  http://imayou.jp/

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          ■『源氏が食べるー平安文学に描かれる食ー』■       

                   第四十一回       

                                 荻田 みどり

  源氏千年紀から3年、映画『源氏物語 千年の謎』が封切した。公開初日に観に
 行ってきたが、“スペクタクル源氏物語絵巻”と銘打たれた通り、「スペクタクル」だっ
 た。

  映画では、光源氏の藤壺への思慕、六条御息所の生霊事件などの場面を主軸に
 源氏の恋愛遍歴を描く。それと織り交ぜて、美しい着物をまとった人々が管絃に親し
 み、舞を舞う。みやびやかな平安王朝を感じさせる。それがどう「スペクタクル」なの
 かは、ここでは触れないでおこう。

  今回は12月に描かれる源氏の食を、と思っていたのだが、少し映画のことについ
 て触れてみたい。ただし、個人的な所感が混ざっており、まだ御覧になっていない方
 には内容に踏み込んでしまうことをお断りしておく。また、これが映画のすべてではな
 いことも念押ししておく。

  平安期の王朝物語は、食を露骨に表現することを「はしたない」と感じ、忌避した、と
 いうのは、これまで述べてきたとおりである。左大臣の娘である光源氏の正妻・葵の
 上であれば、なおさらである。

  葵の上は、もともと東宮妃候補として教育されてきた。それが、突然臣下である年
 下の源氏と結婚することになり、プライドが邪魔をして、なかなか源氏に心を開けな
 い。

  映画では、この様子が次のように描かれる。

  閨でまどろむ源氏は葵の上に対し、「このまま二人だけの世界になればよいのに。」
 と語りかける。そうすればあなただけを見て日々を過ごせるのに、という口説き文句で
 ある。その言葉に対し、葵の上はすげなく返す。「そんなの嫌だわ。もし本当に二人き
 りになってしまったら、誰が顔洗いの水を用意するの?誰が食事の準備をするの?」

  日常の支度もできない葵の上の上流貴族ぶりを発揮させ、葵の上の拒否する姿勢
 を明示しようとした台詞なのだろうが、もちろん『源氏物語』原文にはそのようなやりと
 りはない。なぜなら、本当の上流貴族なら、食事の準備を誰かがしてくれることに対し
 、何の疑問も抱かないから。マリー・アントワネットの「パンがないならお菓子を食べれ
 ばよい」の世界と同じなのである。それなのに、映画版葵の上は、食事の準備をしてく
 れる人がいないことを不安がる。この言葉を聞いた相手が生田斗真でなく本物の光
 源氏なら、夕霧が生まれることも六条御息所が嫉妬に狂うこともなかったかもしれない。

  
               ■『北野の芸能と茶屋』■           

                   第四十四回              

                                   井上 年和

  寛永九年(1632)9月21~25日
   「△廿一日より能有之、松梅院へさじき二間、廿五日迄取被申候、松梅院よりノ
   衆ねずミ戸銭も無之候、
   △目代さじき壱間、松梅院ノニ同し、御門跡様御内衆理ニテ札取見物、
   △能之中 御門跡様より太夫御樽被下候
   廿一日  かも(賀茂) 田村 江口 紅葉かり しねんこし あま
   廿二日  皇帝 八嶋 ゆや(熊野) かんたん(邯鄲) ミわ(三輪) うかい(鵜飼)
   廿三日  きんさつ(金丸) あつもり(敷盛) 桜川 ちやうりやう(張良) 葵上 と
   をる(融)
   廿四日  志賀 源氏供養 頼政 たいゑ(大会) かんやうきう(咸陽宮) うとう
   (善知鳥)
   廿五日  東方朔 七き(騎)落 千手 花月 春日龍神 くれは(呉服)(略)」
                                『北野天満宮史料 目代記録』

  北野経堂北の芝で行われた能の演目である。8月中に能演者の隈谷紀伊守から
 曼殊院門跡へ申込みがあり、松梅院も賛同し興行の運びとなったようだ。普段は目
 代あるいは松梅院へ申込みをするようだが、紀伊守は門跡へ直に申込みを行ったよ
 うで、少し手続きの順序が違ったと記されている。

  北野社に於いて興行を行うときは、興行主(小屋主または座元)が町奉行所に願い
 出て公儀の興行赦免を得、さらにその土地の所有者である北野目代(ないし松梅院)
 の許可を得る必要があった。また、北野目代(ないし松梅院)には借地料として地口
 銭(もしくは地子銭)を払い、あわせて一定の桟敷・通り札を差し出さなければならな
 かった。
  今回の能では松梅院へは2間、目代へは1間の桟敷が用意され、観覧料は無料で
 ある。また、門跡へはVIP席が用意され、祝義に樽を賜った。

  ともあれ、9月1日には南北30間、東西28間におよぶ能演地の縄張りを行い、9月
 5日には能演地に「来廿一日より此所においてくわんしん能(勧進能)仕候、大夫ハし
 ふや孫三郎にて御座候、御見物可有之候」という立札を立て、東の鳥居前にも立てよ
 うとしたが、松梅院らによって却下されている。
  9月21日から始まった能演は、1日6題目ずつ、合計30題目で、現代でも受け継
 がれているものもあるのではないだろうか。
  10月1日には紀伊守がお礼の挨拶に来て、料足300疋、諸白両樽(「古法」による
 濁酒造りと一線を画する「新法」ともいえる「添(そえ)方式による「段仕込・諸白つくり」
 の酒で、武将や富豪が飲んでいた高級酒」)と肴を受け取り、こういう形が「常ノ作法」
 であると書き記している。

  お国もそうであったように、北野で芸能を開催するには、土地の所有者である松梅
 院の許可を得て、終演後は料足と贈答品を持って挨拶に伺うのが通例であったのだ。

             ■『やまとのくには言の葉のくに』■          

                  第九十七首               

                                   田口 稔恵

   思ふどち夜半の埋み火かきおこし闇のうつゝにまとゐをぞする
   (建礼門院右京大夫 『建礼門院右京大夫集』)

  (親しい者同士で、夜半に火鉢の埋み火をかきおこしながら、暗闇の中で判然とし
 ないような現実の中、団らんをすることだよ)

  作者の建礼門右京大夫は、藤原行成を祖とする藤原北家一流の世尊寺家の末裔
 として生まれた。生年や実名は不詳。平清盛の娘で、高倉天皇中宮となった徳子に
 仕えた。
  宮仕えの中で、清盛の孫である平資盛と恋仲となるも、資盛は壇ノ浦で戦死。哀し
 みの癒えない中、七夕に擬えて自身の恋を詠んだ50首からなる歌群を残している。
  太平洋戦争中は、愛する人の出征を見送った若い女性達に広く愛読されたという。

  この歌は、建礼門院が天皇の側に上がった際付き添った女房たちが戻ってきたと
 ころで、気の合う女房たちで集まって火鉢の周りで団らんした際に詠まれたものであ
 る。
  「今日は、心の中で思っていること、すべて話し合いましょう」というコンセプトでの
 おしゃべりだったらしい。火は人の心を和ませる。特に、非現実のような冬の闇の中
 での、静かな埋み火の明かりのもとで、親しい者同士、何でも話せる雰囲気があった
 のかもしれない。

  続けて次の歌が記される。
  「誰もその心の底は数々に言ひはてねどもしるくぞありける」-皆、言葉ではすべ
 てのことは言い尽くさないけれど、思っていることははっきりと分かるものだ。

  埋み火は、互いの心の奥を遠慮がちに照らし、却って真実を顕わにするようだ。

  右京大夫は、比較的短期間で宮仕えを退き、他家に仕えたこともあるようだが、こ
 の時代が彼女の人生にとって特別なものだったと見られる。のち、藤原定家が、右京
 大夫の歌を歌集に載せる際、「どの時代に使っていらしたあなたの名前で載せましょ
 うか」と問い合わせた際、「最も思い出深い『建礼門院右京大夫』で」と依頼している。

          
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       □■[嵯峨野学藝倶楽部] 12月開講講座のお知らせ■□

 詳しくは、http://www.ren-produce.com/sagano/club/をご覧ください。

 ■「茶道教室(水曜日コース)」
  日程:12月21日(水)
  場所:嵯峨野三壷庵
  時間:10時~19時(ご都合の良い時間にお越しください)
  講師:西村 宗靖・太田 宗達
  ※見学/体験も、随時受付けています。

 ■「茶道教室(土曜日コース)」
  日時:12月23日(金、祝)
  場所:嵯峨野三壷庵
  時間:10時~18時(ご都合の良い時間にお越しください)
  講師:西村 宗靖・太田 宗達
  ※見学/体験も、随時受付けています。
 
■「今様・白拍子教室」
  日程:12月24日(土)
  場所:嵯峨野三壷庵
  時間:13時~14時
  講師:石原 さつき
  ※見学/体験も、随時受付けています。
   性別・年齢・経験は問いません。

■「うたことば研究会」
  日程:12月24日(土)
  場所:嵯峨野三壷庵
  時間:15時~16時(60分)
  監修:田口 稔恵
  ※資料代等が必要です。詳細はお問合せください。

 ●URL
  http://www.ren-produce.com/sagano/club/

 お問合せ・お申込みはコチラまで→ sagano@ren-produce.com

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               ■□■ひとこと■□■
  
  段々と、寒さが増してきました。靴下を二重履きする日が続いています。
  インフルエンザが流行ってきているようですので、お気をつけてお過ごしください。
  良いお年をお迎えください。

                                (まつだ)

     [次回は、1月1日(土)に配信予定です!次回もお楽しみに。]

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多くの方に有斐斎弘道館の活動を知っていただきたく思っております。
記事が面白かったら是非、シェアいただけると幸いです。