嵯峨野文化通信 第127号

 伝統文化プロデュース【連】メールマガジン

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  ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄)    [嵯峨野文化通信] 第127号
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 伝統文化プロデュース【連】は
 日本の伝統文化にこめられた知恵と美意識について
 遊びながら学び、広めていく活動をしている団体です

         
        嵯峨野文化通信は、伝統文化を「遊ぶ」ためのヒントを発信します

                毎月1日・15日(月2回)
 
                   ■VOL:127(2011/5/15)

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                ■□■もくじ■□■

  ■【連】からのお知らせ ———–「水無月の茶」のご案内
  ■(連載)『源氏が食べるー平安文学に描かれる食ー』———- 第二十八回
  ■(連載)『北野の芸能と茶屋』—————————— 第三十一回
  ■(連載)『やまとのくには言の葉のくに』——————– 第八十八首
  ■[嵯峨野学藝倶楽部]5月開講講座のお知らせ

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             □■【連】からのお知らせ■□

 ■「水無月の茶」のご案内

  有斐斎 弘道館の月釜は、皆川淇園の時代をみなさまとともに考えるお茶会で
 す。今月は、去秋の淇園展でもお世話になった、「民の謡」の皆さんとコラボし
 ます!
  茶会のテーマは「沙羅」です。どのような茶会になるのでしょうか・・?
  どうぞお誘い合わせの上、お越しください。 

  日程:6月19日(日)
  時間:11時~15時 
  場所:有斐斎 弘道館
  参加費:1,500円(申込不要)

  篠笛演奏
   11時、13時より2回行われます。それぞれ、15~20分間の演奏です。
  篠笛体験
   希望者は演奏ののち、20~30分ほど篠笛の演奏体験ができます。
   (1000円が別途かかります)

  ※もっと本格的に体験をしてみたいという方は、特別に体験稽古をしてくださ
   ることになりました。
   稽古時間は14時から16時までです(3000円が別途かかります)。
   当日お申し出ください。
  ※お茶会にお越しいただいた方は、演奏は無料でお聴きいただけます。

  民の謡HPはコチラ
  http://www.taminouta.com/

  弘道館HPはコチラ
  http://kodo-kan.com/tea.html
   
  こちらの有斐斎 弘道館月釜は2011年10月より、月釜制(会員制)に移
 行いたします。
  只今、会員申込中ですので気軽にお問合せください。
  問合せ先はコチラ
  info@kodo-kan.com

  <弘道館の月釜>
  会員制、年間1万円

  第1回 10月23日(日)
  第2回 12月18日(日) *以後の日程は決まり次第ご案内いたします。

  *原則、2月、3月、4月、5月、10月、12月の日曜日に開催。
  *毎回、楽しい趣向をご用意いたします。お楽しみに!
  *当日ビジターも受付いたします。(人数限定/参加費は毎回異なります)

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        ■『源氏が食べるー平安文学に描かれる食ー』■    

                第二十八回       

                              荻田 みどり

  今回は、既に過ぎてしまったが、『源氏物語』蛍巻における端午の節句の一
 幕を紹介しよう。
  この日、内裏で競射が執り行われる。解散後、夕霧が男たちを連れて六条院
 に帰るというので、源氏は六条院でも競射の取組をするよう提案し、夕霧の母
 代わりの花散里に準備を命じる。
  源氏は36歳の壮年期である。花散里との関係は、源氏が暇なときに不意に
 顔を出す程度であった。六条院の東北の町(花散里の居所。夕霧もここに住む)
 にある馬場殿で行われた競射も盛会に終わり、この日源氏は花散里のもとで一
 夜を過ごす。が、既に寝床を別々にするような関係になっていた。源氏はこの
 習慣に寂しく思う。一方の花散里は、不平をもらすことはない。いつもは他所
 で行われている行事を伝え聞くだけだったのが、今日は自分の住む東北の町で
 競射が行われたことを晴れがましく名誉なことと考えていた。花散里は源氏に
 対し歌を詠む。

   その駒もすさめぬ草と名にたてる 汀(みぎは)のあやめ今日やひきつる
  (駒でさえ食べない草と悪評の高いあの水際のあやめのような私を、今日は
   節句なのでお引き立てくださったのでしょうか)

 「駒」は馬の歌語で、今日の競射に関連した発想である。「駒もすさめぬ(駒
 も食べない)」は、男に顧みられなくなった女の嘆きを表す常套表現である。
 たまに源氏が訪ねてきても、寝床を別々にするようになった自分を卑下しなが
 らも、今日の栄誉を大らかに詠み上げる。
  源氏は、そんな花散里をいじらしく思い、返歌する。

   にほどりに影をならぶる若駒は いつかあやめにひきわかるべき
  (雌雄そろって離れない鳰鳥〈におどり〉と影を並べる若駒の私は、いつあ
   やめのあなたと別れることがありましょうか。)

 熟年夫婦となりながらも、「若駒」を源氏自身に見立て、花散里との若い時と
 同じような関係を取り戻そうとする(そうは言っても若い時から、たまの訪れ
 しかなかったのだが)。
  花散里は既に、源氏との若い関係よりも、夕霧の母代わりということに栄誉
 を感じている。源氏の歌に寄り添うことはなく、御几帳を隔てて別々に休む。
  「駒もすさめぬあやめ」は、名誉を与えてくれた源氏を立てつつ、卑下より
 も、源氏からの自立を表明しているのではないだろうか。

             ■『北野の芸能と茶屋』■         

                第三十一回       

                               井上 年和

   延徳元年(1489)9月23日

   「一、就当所舞、近衛殿様上○(ろう)御方御桟敷在之、仍御畳・簾・
  障子等事被仰間、御成間進上之、以西洞院殿被仰出也、」『北野社家日記』

  松梅院で舞があったようだ。桟敷を拵え、畳を敷き、簾、障子等を設え、御
 成間まで誂えるとはなかなか入念な造りである。

  松梅院は近世には北野社東門前から現在の翔鸞小学校西半を占めるほどの広
 大な敷地を有していたが、どこにこの様な桟敷を拵えていたかは今となっては
 知るすべもない。
  随分後の時代になるが、享和二年(1802)の『北野天満宮九百年御忌万
 燈之図』では、西面した門を入ると、入母屋で檜皮あるいは柿葺屋根の建物が
 2棟並び、その奥に瓦葺きの建物が数棟建っているように見える。しかし、桟
 敷を設け、舞を舞うようなスペースは見あたらない。
  延徳三年(1491)2月26日には能椿坊でも「御しはヰ」(お芝居)が、
 同年7月23日には盛輪院で舞勧進があり禅任に案内されており、明応九年(
 1500)9月9日には松梅院が能椿坊より芝居料足として332文20疋受
 け取った記事がある。

  このように宮仕達の居宅で舞やお芝居等の芸能が催されるようになったのは、
 度々の室町将軍参籠により宮仕達の居宅も休憩所や宿坊に使われ、楽人や芸能
 者と北野宮仕側との距離が近くなったためではないであろうか。また、宮仕の
 差配では大々的に外で興行を催すのも憚られたためとも考えられる。

  北野の芸能は、北野社内の広場のみならず、宮仕達の邸宅内で開催され、邸
 宅内にはそのための施設を拵え、舞や芝居を鑑賞しながら饗宴を行っていたの
 である。これは、一旦庶民に解放された宮廷文化が、天皇や将軍等の主催者を
 失ったため、宮仕の居宅に押し込められたとも捉えられる。

  近世になり、これら宮仕達の居宅が茶屋や宿坊へ化し、庶民を受け入れてい
 ったと考えると、北野社周辺で早くから花街が発生した原因が矛盾なく理解で
 きるのである。

          ■『やまとのくには言の葉のくに』■       

                第八十八首        
 
                               田口 稔恵

 恋せじと御手洗川にせしみそぎ神はうけずも成りにけるかな
 (詠み人知らず 『古今集』 巻11 恋) 

 (「恋い慕いはしまい」と、賀茂の御手洗川でしたあの禊ぎを、賀茂の神はお
 受けにならなかったのだなあ。私の恋心は募る一方だ。)

 『古今集』の部立の中での和歌の配列は、時間や物事の深まりに沿っている
 ことはよく知られている。恋もまた、噂にのみ聞いて恋い焦がれる歌、ちらっ
 と見たばかりに恋に苦しむ歌など、男女の関係の深まりに即して配列されてい
 る。

 この和歌は、ひそかに恋する心を詠んだ一群に属する。相手に知られぬよう
 に心を焦がす恋のつらさに、「もうあの人を思うまい」と誓いを立てて禊する
 が、想いはいやますばかり。「賀茂の神は願いを納受してはくださらなかった」
 というため息が、恋煩いを物語るという修辞である。

 5月15日は葵祭。葵は歴史的仮名遣いでは「あふひ」と記され、和歌では
 「逢ふ日」の掛詞として用いられることが多い。現在でも縁結びの社として名
 高い賀茂社には、恋の成就を願うほうがお似合いなのかもしれない。

 東北の震災を受けて、今年度の葵祭の開催も議論されたようだが、邪を祓う
 ことが目的で始まった祭だから、という理由で開催が決定された。祭には、人
 々の、安穏な生活に対する切実な想いが込められている。

 「政事ーまつりごと」は「祀りごと」。人々の生命の安からんことを神に祈
 り、身を慎むのが、政治の根幹なのだ。だからこそ、天皇の生活は祭祀で埋め
 尽くされているのだ。
 国の安穏のために、天皇に代わって神に奉仕した未婚の皇女が斎王。その代
 理が斎王代。今年の斎王代も、国のために身を捧げて祈る心で、奉仕してくれ
 るに違いない。

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     □■[嵯峨野学藝倶楽部] 5月開講講座のお知らせ■□

 詳しくは、http://www.ren-produce.com/sagano/club/をご覧ください。

 ■「茶道教室(水曜日コース)」
  日程:5月25日(水)
  場所:嵯峨野三壷庵
  時間:10時~20時(ご都合の良い時間にお越しください)
  講師:西村 宗靖・太田 宗達
  ※見学/体験も、随時受付けています。

 ■「茶道教室(土曜日コース)」
  日時:5月28日(土)
  場所:嵯峨野三壷庵
  時間:10時~20時(ご都合の良い時間にお越しください)
  講師:西村 宗靖・太田 宗達
  ※今回は調整のため、臨時で日曜日に開いております。ご注意ください。
  ※見学/体験も、随時受付けています。

 ■「京都文化教養講座1~信仰からみる京都~」
  日程:5月21日(土)
  場所:有斐斎 弘道館
  時間:11時~12時30分(90分)
  講師:太田 達
  テーマ:「葵と桂」
  参加費:1回2,000円(生菓子、抹茶付き)
  ※1回のみの参加も、随時受付けています。
  ※要申込 メール:kouza@kodo-kan.com

 ■「今様・白拍子教室」
  日程:5月21日(土)
  場所:嵯峨野三壷庵
  時間:13時~14時(60分)
  講師:石原 さつき
  ※見学/体験も、随時受付けています。
   性別・年齢・経験は問いません。

 ■「うたことば研究会」
  日程:5月21日(土)
  場所:嵯峨野三壷庵
  時間:15時~16時(60分)
  監修:田口 稔恵
  ※資料代等が必要です。詳細はお問合せください。

 ●URL
  http://www.ren-produce.com/sagano/club/

 お問合せ・お申込みはコチラまで→ sagano@ren-produce.com

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               ■□■ひとこと■□■

今回は、久々にピンチヒッターです。またしても発行予定日中の発行ができ
 ず、失礼しました。次回こそは!  
 
                               (梅原)
 
  [次回は、6月1日(水)に配信予定です!次回もお楽しみに。]

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多くの方に有斐斎弘道館の活動を知っていただきたく思っております。
記事が面白かったら是非、シェアいただけると幸いです。