嵯峨野文化通信 108号

 伝統文化プロデュース【連】メールマガジン

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  ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄)     [嵯峨野文化通信] 第108号
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 伝統文化プロデュース【連】は
 日本の伝統文化にこめられた知恵と美意識について
 遊びながら学び、広めていく活動をしている団体です

         
          嵯峨野文化通信は、伝統文化を「遊ぶ」ためのヒントを発信します

                毎月1日・15日(月2回)
 
                     ■VOL:108(2010/8/1)
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                ■□■もくじ■□■

  ■【連】からのお知らせ ———————- 弘道館 暁天茶会
                         花街文化シンポジウム開催!
                         長月の茶への誘い
                         「老松」さんの特集です
  ■『餅と饅頭ー和漢の境まぎらわす事ー』—— 第二十一回
  ■『ニッポン城郭物語』———————- 第五十四幕
  ■『源氏が食べるー平安文学に描かれる食ー』– 第九回
  ■『北野の芸能と茶屋』———————- 第十二回
  ■『やまとのくには言の葉のくに』———— 第七十二首
  ■[嵯峨野学藝倶楽部]8月開講講座のお知らせ

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             □■【連】からのお知らせ■□

 □弘道館 暁天茶会

  弘道館では、このたび暁天講座を行います!お茶と粥をいただきながら眺める夏の朝
 焼けは、きっととても清々しいはず。
  ぜひ、ご参加ください。

  日程:8月22日(日)
  時間:午前6時30分
  費用:3,000円 ※要申込・先着順

  お申込み・お問合せはコチラ
   メール:info@kodo-kan.com

  弘道館HPはコチラ
   http://kodo-kan.com/event.html

 □花街文化シンポジウム開催!

  今月29日に、花街文化の継承を考えるシンポジウムが行われます!
  第3回目となる今回は、弘道館での開催となります。花街を総合的にまとめた書『京
 の花街 ひと・わざ・まち』の執筆者の一人である平竹さんや、このメルマガ「嵯峨野
 文化通信」で連載をしてくださっている井上さんも出演されます!
  井上さんは連載『北野の芸能と茶屋』で上七軒について執筆されていますので、ぜひ
 お読みいただき、シンポジウムにお越しください!

  日程:8月29日(日)
  時間:18時開会(17時30分開場)
  場所:弘道館
  費用:500円 ※要申込・先着順

  <プログラム>
 18:00 開会 ご挨拶:太田達 (花街文化研究会 代表)
 18:10 報告1「花街の発生と展開 上七軒を例に」井上年和 (財団法人建築研究
        協会 主席研究員)
 18:30 報告2「文化行政と花街」平竹耕三 (京都市文化市民局文化芸術都市推進
        室長)
 18:50 報告3「新潟古町の歴史とまちづくり」岡崎篤行 (新潟大学工学部 建設
        学科 准教授)
 19:10 座談 パネリスト:井上、平竹、岡崎  進行:太田
 20:00 閉会(予定)

【連】HPはコチラ
http://ren-produce.secret.jp/news.html

 □長月の茶への誘い

 【連】の太田達が弘道館で行っている「淇園時代」を考える茶会企画シリーズの、9月開
 催日が決定いたしました!
  弘道館は江戸時代の儒者、皆川淇園にゆかりのある場所です。
  9月は「長月の茶」と題したお茶会です。ぜひ、ご参加ください!

  「長月の茶ー田能村竹田的ー」
  日程:9月12日(日)
  時間:11時頃より17時頃まで(予定)
  費用:1000円 ※申込不要・先着順

  弘道館HPはコチラ
   http://kodo-kan.com/event.html

 □「老松」さんの特集です

  【連】のイベントに協力いただいており、弘道館での行事でもおなじみの有職菓子御調
 進所「老松」さんの特集が、スカパー!で放送されます。
  8月のまるまる1カ月を通して何度も放送されますので、ぜひご覧ください!

  「ビクトリーチャンネル」
  番組名:『匠』(たくみ)

 ビクトリーチャンネルのHPはコチラ
 http://www.victory-ch.tv/

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            ■『餅と饅頭ー和漢の境まぎらわす事ー』■

                    第二十一回

                                    太田 達

  「唐菓子(からかし)」について、すこし整理してみよう。
  『和名類従抄(わみょうるいじゅうしょう)』(承平年間〈931年~938年〉に
 源順により編纂)にその名をみることができる、「八種唐菓子(やくさのからかし、か
 らくだもの)」が、その推定できる形状が簡便であるため「唐菓子」の初源的な物と類
 推する。また、平安末期から鎌倉期における旧儀の食饌の調理方法を伝える『厨事類記
 (ちゅうじるいき)』には、この「唐菓子」群の製法が、お およそ四群に分け、挙げら
 れている。

  第一説 「或説に云う。糯けなき米を白めて、粉に搗き、篩ひて、粢(しとぎ)のや
      うにしとねて、押し平めて、湯をさらさら沸かして、湯に浮くほど茹でて、
      亦、臼に入れて、目出たく搗き合わせて、取り出して、布を濡らして、それ
      に包て、布の片端を開けて、冷まさずして、少しずつとりて、何にも作るな
      り。」
  第二説 「異説に云う。茹づる時、生大豆の粉を、よく搗き、篩ひて、この捏ねたる
      粉に打ちはふりて、よくよく搗き交ぜて、豆の粉に、塩を少し入れて、搗き
      合わすべし。さて何にも作るべし。豆の粉を搗き交ずる事は、冷れども、軟
      らかにて作りよきなり。」
  第三説 「又説に云う。小麦の粉をぐすべし。色の黒く、赤く、斑にてよきなり。作
      りて後は、よき油を濃く煎じて入るべし。」
  第四説 「青菜の葉を、まを除けて、油に入るれば、火のつきてもゆるがきゆるなり。
      又、団喜は丸く作りて、茹でて、甘葛を塗て、参らす。粉にても参らす。」

  これらの多くは、祀り事の儀礼の場から実物が姿を消してから後、あれこれ推理され
 た製法である。しかし、現在、全国に僅かに残る神饌菓子の唐菓子的な物と照らし合わ
 せると、興味深い事が解る。渡来した当時は、中国的に小麦粉を原料としていたものが、
 日本においては、日本的ともいえる米粉や大豆の粉に、その材料を変化させている事が
 見て取れるのだ。

                 ■『ニッポン城郭物語』■

               ー第五十四幕ー  ~城と樹木の話~

                                   梅原 和久

  城跡はそのほとんどが公園として整備されているため、城と言えば緑豊かな場所、とい
 うイメージが一般的だろう。桜の名所となっている城も多い。しかし、城内に桜が植えら
 れるようになったのは明治の廃城後のことであり、江戸時代の城の樹木は、御殿の庭園を
 除いて軍事用に植えられたもので、その数も限定的だった。

  まず、城はあくまで軍事施設である。樹木も、意図を持って植えられた。ほとんどは城
 の外から城内を見通されるのを防ぐための、翳の植物(かざしのうえもの)と呼ばれた木
 である。土塁や石垣の上は、通常櫓や土塀が設置される。翳の植物は、それがないような
 城の外郭部分などに、土塀の代用として植えられた。そして、どの城にもあったのは松で
 ある。松は樹脂を含むために篭城の際の燃料にできる上に、松明にもなるからである。ま
 た、葉がよく茂る杉が植えられた城も多かった。
  一方で、城は権威の象徴でもあり、城下から見えるようにする必要もあった。つまり、
 機密となる部分は隠しつつも、誇示すべきところは植樹せず、視界を開けたのである。城
 内の整備は、建造物だけでなく、植栽にも及んでいた(※1)。

  明治になって城が公園として民衆に開放される際に、観賞用の桜などが植えられたが、
 それまでのように秩序だって植樹された訳ではなかったために、百数十年が経って弊害が
 表面化するようになった。まず、そこが城だと分からないほど繁茂しすぎて、石垣はおろ
 か天守等の建物さえ城下から見えなくなってしまったことである。そしてもう一つは、さ
 らに深刻な事態である。
  かつて石垣上に植樹する際は、必ず石垣の縁から4~5メートルは離していた。しかし、
 廃城になってその配慮がなされなくなったために、木の根が石垣を壊す例が後を絶たない
 のである。樹木の整理は、自然保護の立場からの反対が多いが、遺跡保存の見地から、ま
 た昔の風景を蘇らせるためには絶対に必要な取り組みなのである(※2)。

 (※1)津山城の復元イメージ。画像の上にマウスを持ってくると、往時の姿が蘇る、
  という趣向のHP。現在は緑豊かな山だが、昔はそうでもなかったことが分かる。
   このHPでは、他にも素晴らしいイラストを見ることができる。
  http://1st.geocities.jp/golden_shiro/55tsuyama.html

 (※2)最近報じられた小田原城のケース。他にも宇和島・大洲・津山等で同様の試み
  が行われている。
  http://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20100705-00000029-kana-l14

           ■『源氏が食べるー平安文学に描かれる食ー』■

                    第九回

                                  荻田 みどり

  夏真っ盛りの京。日が長く、雲一つない空に、蝉の声が暑苦しく感じる。今回は、そ
 んな炎暑の日を過ごす貴族たちを取りあげる。

   いと暑き日、東の釣殿に出でたまひて、涼みたまふ。中将の君(夕霧)もさぶらひ
   たまふ。親しき殿上人あまたさぶらひて、西川より奉れる鮎、近き川のいしぶしや
   うのもの、御前にて調じてまゐらす。

  常夏巻の冒頭である。源氏は、夕霧や親しい殿上人を大勢従えて、池にせり出した釣
 殿に出て涼んでいる。西川(大堰川・桂川)より献上された鮎や、近き川(鴨川)のい
 しぶし(石斑魚。今の川鰍(かわかじか))のようなものを源氏の前で料理してお出し
 になる。今でいうところ、鴨川の屋根のある納涼床で、料理人が目の前で包丁さばきを
 見せる様相であろうか。

   例の、大殿の君達、中将の御あたり尋ねて参りたまへり。「さうざうしくねぶたか
   りつる。をりよくものしたまへるかな」とて、大御酒まゐり、氷水召して、水飯な
   どとりどりにさうどきつつ食ふ。

  内大臣の子息たちが夕霧を尋ねてやって来た。退屈していた源氏はよい時に来たと、
 酒をお出しになり、氷水を取り寄せる。水飯などをそれぞれはしゃぎながら食べる。暑
 くても喉を通る氷水や水飯は、涼やかである。味は描かれていないが、『源氏物語』中
 において、貴族たちが旨そうに食べる唯一の描写ではないかと思う。
  目を楽しませる魚料理、喉を潤す氷水や水飯。はしゃぐ貴族たち。夕霧や内大臣の子
 息など、ここにいるのは生気がみなぎった若者たちばかりである。その中に、この時代
 では壮年ともいえる36歳の源氏が一人。「水の上(釣殿)にいるのも役に立たないよ
 うな暑さだ」と物に寄りかかり、横になっている。源氏は、他の者にもこの六条院では
 気ままにくつろぐよう言い、眠気覚ましになるような話を求めるが、太政大臣である源
 氏を前に、恐縮しきってできるはずもない。
  「やうやうかやうの中に厭はれぬべき齢にもなりにけりや」(だんだんこうした人た
 ちの中ではいやがられてしまう年になってしまったものだな)。栄華を極めた源氏の、
 年齢や時代の流れに勝てない孤独感がじりじりした暑さに絡みつき、日は落ちていく。

                                   (つづく)

               ■『北野の芸能と茶屋』■

                   第十二回                 

                                   井上 年和

   正徳元年(1711)7月15日

   「 一、十五日晴、能什・能山・能二・常能・能玉・能音入来、踊之日わり下書共
   有之也、晩方七間茶屋年寄和泉屋半兵衛来ル、口上云、今年も踊御座候、床進上仕
   候、御見物御出 可被成之由也、何茂様御方入口御座候、人を御付可被下候由也、」
                           『北野天満宮史料 宮司記録』

  今回は七軒茶屋の盆踊りの話題に触れよう。というのも、このまま時系列で連載を重
 ねると、七軒茶屋の盆踊りに辿り着くのは随分と先のことになりそうだからである。

  七軒茶屋年寄の和泉屋半兵衛は、宮司に踊りの日割を伝え、宮司専用の入口があるの
 で、来て欲しいと誘いに松梅院を訪れたのである。この年の踊りは7月17日 から始ま
 ったようだ。

  享保四年(1719)7月には「七軒茶屋鳥井前ニ而踊之事、丑ノ年よりか十三年か
 十二年かと存候、」とあるので、宝永六年(1709)頃から毎年開催されるようになっ
 たのであろう。昨年から復活した北野の盆踊りは約300年前から開催されていたので
 ある。

  「七軒茶屋鳥井前」は東門の前で、現在は少し狭くなっているが、近年オープンしたフ
 ランス料理屋や電気屋が立ち並ぶ鳥居前町の一角は、明治の初年までは宅地化されていな
 い広場であったので充分なスペースが確保できたのである。

  今日開催予定の北野の盆踊りは、少し狭めのスペースではあるが、どんな盛り上がりを
 見せるのだろうか楽しみである。

             ■『やまとのくには言の葉のくに』■

                   第七十二首                 

                                   田口 稔恵

   玉くしげ箱根の海はけけれあれや二山かけて何かたゆたふ
                  (源実朝『金槐和歌集』)

  (箱根の海には、心があるのだろうか。どうして二つの国にまたがって、その間にた
  ゆたっているのか。)

  「玉くしげ」は美しい箱の意味で、この場合は「箱」にかかる枕詞である。「二山」の
 「ふた」は「蓋」に通じるので、「箱」の縁語であろう。「けけれ」は「こころ」。上代
 の東国の方言と思われ、古今集の東歌に用例がある。万葉ぶりを得意とした実朝ならでは
 の表現である。
  この歌は伊豆山、箱根両権現に参詣した時詠んだ歌で、相模、伊豆の両国にまたがる海
 は、何を思うのだろうというこころである。

  実朝は、鎌倉右大臣として、鎌倉将軍家の一員として(あるいは三代将軍として)、本
 来守るべき、憧憬の対象としての朝廷との権力闘争に苦しんできた。
  藤原定家の弟子の一人として、都の宮廷、貴族の文化にも深い関心を寄せており、後鳥
 羽上皇から手紙を受け取った際には、感激のために

   「東の国に我がをれば朝日さすはこやの山のかげとなりにき」
  (私は東国におりますので、東から差す朝日の影のように、仙頭御所にいらっしゃるあ
  なたの影となります)

 と詠んだ。
  将軍として朝廷に睨みをきかすべき立場にありながら、朝廷に心を寄せる姿勢は、やが
 て彼の命さえも奪う。
 
  実朝が見た、両国にまたがる箱根の海への問いかけは、歌の表面的な意味よりも、ずっ
 と深刻なものであったに違いない。
  二国にまたがっているという微妙な立場なのに、どうして平穏な水面を保っていられる
 のか。朝廷と幕府にはさまれた自分は、いったいどのように生きていけばいいのか。
 
  彼の内心の懊悩も知らず、時代の潮流はうねり続ける。そしてやがては鎌倉幕府を滅亡
 へと追いやることになった。

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       □■[嵯峨野学藝倶楽部] 8月開講講座のお知らせ■□

 詳しくは、http://www.ren-produce.com/sagano/club/をご覧ください。

 ■「茶道教室(土曜日コース)」
  日時:8月7、21、28日(いずれも、土)
  時間:15時~20時(ご都合の良い時間にお越しください)
  講師:西村 宗靖・太田 宗達
  ※見学/体験も、随時受付けています。

 ■「茶道教室(水曜日コース)」
  日程:8月11、25日(いずれも、水)
  時間:13時~18時(ご都合の良い時間にお越しください)
  講師:西村 宗靖・太田 宗達
  ※見学/体験も、随時受付けています。

 ■「京都歴史講座」
  日程:8月15日(日)
  時間:11時~12時30分(90分)
  講師:中村 武生
  テーマ:「豊臣期京都惣構(御土居堀)の復元」
  参加費:1回 1,000円 (茶菓子付)
  ※1回のみの参加も、随時受付けています。

 ■「今様・白拍子教室」
  日程:8月21日、28日(いずれも、土)
  時間:13時~14時(60分)
  講師:石原 さつき
  ※見学/体験も、随時受付けています。
   性別・年齢・経験は問いません。

 ■「京文化を語ろう~遷都1300年記念・京都のなかの奈良」
  日程:8月21日(土)
  時間:11時~12時30分(90分)
  講師:太田 達
  テーマ:「春日大社と興福寺」
  参加費:1回1,000円(茶菓子付)
  ※1回のみの参加も、随時受付けています。

 ■「うたことば研究会」
  日程:8月28日(土)
  時間:10時~11時(60分)
  監修:田口 稔恵
  ※資料代等が必要です。詳細はお問合せください。

 ●URL
  http://www.ren-produce.com/sagano/club/

 お問合せ・お申込みはコチラまで→ sagano@ren-produce.com

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               ■□■ひとこと■□■

  だんだんと蒸し暑くなってきますね。
  ついクーラーをかけてしまう日中ですが、家にいる休日くらいはベランダに水をまき、
 エコな生活をしたいと思う今日この頃です。
  
                                 (まつだ)

     [次回は、8月15日(日)に配信予定です!次回もお楽しみに。]
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多くの方に有斐斎弘道館の活動を知っていただきたく思っております。
記事が面白かったら是非、シェアいただけると幸いです。