嵯峨野文化通信 第84号

伝統文化プロデュース【連】メールマガジン 
 
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              〔嵯峨野文化通信〕 第84号
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         日々の暮らしに「和」の魅力をプラスしてみませんか?

    伝統文化プロデュース【連】は、日本の伝統文化にこめられた知恵と美意識に
          ついて、学び広めていくための活動をしている団体です。

         京都・嵯峨野から、最新の情報を皆さんにお届けします!

               毎月1日・15日(月2回)

                      ★VOL:84(2009/8/1)

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  ○【連】からのお知らせ —- 京都創生花街シンポジウムにお越しください
                老松から菓子展のお知らせ!
                茶道教室から茶会のご案内
                明倫artに熊野参詣ツアーの様子が掲載されました
  ○『新連載のご案内』
  ○(連載)『ニッポン城郭物語』———————- 第四十二幕
  ○(連載)『やまとのくには言の葉のくに』——- 第四十九首
  ○[嵯峨野学藝倶楽部]8月開講講座のお知らせ

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 【連】からのお知らせ
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 ○京都創生花街シンポジウムにお越しください

  前号メルマガ83号でお伝えしました、花街本刊行記念のシンポジウムの詳細が決まり
 ましたのでお知らせいたします!!京の花街について深く知る良い機会になりますので、
 お盆の真っ最中ではありますが、お時間おありの方はぜひご参加ください!

  京都創生花街シンポジウムは、【連】代表の濱崎加奈子と【連】メンバーの太田達も執
 筆している『京の花街 ひと・わざ・まち』の刊行を記念して開催することになりました。
 内容は執筆者が花街に関しての討議を行う第1部と、出版記念祝賀会の第2部となってお
 ります。
  第1部では、「地方(じかた)」と呼ばれるお座敷の演奏者の方にスポットをあて、お
 話を伺います。また、先斗町の芸妓・もみ鶴さんにお座敷唄の演奏を披露していただきま
 す。
  第2部では、執筆にご協力いただいた上七軒や宮川町などの芸妓さんと舞妓さんにもお
 越しいただきます。軽食もご用意しております。

 「京の花街 ひと・わざ・まち-<歌舞練場>から花街の現状と未来を考える-」
  日程:8月15日(土)
  時間:第一部 14時開演/13時30分開場 *参加無料
     第二部 17時開会/16時00分受付 *費用:8千円
  場所:京都コンサートホール (京都市左京区下鴨半木町1-26)
  出演:もみ鶴(先斗町芸妓)・勝喜代(上七軒芸妓)・美代治(宮川町芸妓)
     上林研二・平竹耕三・井上えり子・太田達・濱崎加奈子 
  
  ※第二部につきましては、事前申し込みが必要です。
   メール・FAXにてお申し込みください。

   申込み、お問い合わせはコチラまで
    メール:kagai@ren-produce.com
    FAX:075-864-9700

 ○老松から菓子展のお知らせ!

  8月18日から、京都国立近代美術館で「プラっときんび~なにがあるかな? 京都国
 立近代美術館」がひらかれます。この中で【連】の活動にも協力してくださっている老松
 さんが和菓子展を開かれるそうです!
  京都国立近代美術館のコレクションである池田満寿夫作品を和菓子で表現するという、
 聞いているだけでわくわくする企画です!
  また美術館内のカフェ505では、池田作品にちなんだ京菓子がいただけるそうです。
  アートと和菓子の共演を、ご覧になってみませんか?

  日程:8月18日(火)~23日(日)
  時間:9時30分~17時(入館は16時30分まで)
     ※21日(金)は20時まで(入館は19時30分まで)です。
  場所:京都国立近代美術館1階ロビー
  費用:無料
  ※ただし、池田満寿夫作品を鑑賞するには鑑賞チケットの提示が必要です。
   またカフェ505で京菓子をお召し上がりいただく場合は有料となります。

 ○茶道教室から茶会のご案内

  嵯峨野学芸倶楽部の茶道教室より、お茶会の案内が届きました!
 今回は「ゆかた茶会」と名付けて、蒸し暑い季節にぴったりの涼しげな趣向でお茶がいた
 だけます。
 ぜひお誘い合わせの上、お越し下さい!

  日程:8月29日(土)
  場所:老松 嵐山店2階(京都市右京区嵯峨天龍寺)
       京福電鉄「嵐山」駅下車、徒歩3分
       JR「嵯峨嵐山」駅下車、徒歩10分
       阪急電車「嵐山」駅下車、徒歩12分
  席入り:10時30分
      11時30分
      13時30分
      14時30分 の4回です。
  料金:一服 800円

   お問い合わせ・お申し込みはコチラまで
    メール:rieandaskaandrie@yahoo.co.jp

 ○明倫artに熊野ツアーの様子が掲載されました

  【連】代表、濱崎加奈子が執筆を担当している京都芸術センター発行の「京都芸術セン
 ター通信 明倫art」の8月号のレビューに、熊野参詣ツアーの記事が掲載されました!
  粛然たる熊野の自然と今様、白拍子舞の奉納の様子が書かれております。
  明倫artは、京都芸術センターにて配布されております。8月号は7月20日発行で
 す。
  ぜひご一読ください!

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                 新連載のご案内        
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                                   太田 達

  月2回のメールマガジン、本音でいうと、書いたとたんにすぐ〆切がきます。でも83
 回も続けてきたので意地でも落とさないでおこうと言い聞かせてがんばっておりますが、
 こう言い訳から入ってくるという事は、もう察しがつかれたかと思います。雑文がより雑
 になると云う前置きという事です。

  今、私は「マンホールの穴は何故丸いか?」「素数蝉はなぜ素数年ごとに大量発生する
 のか?」「ウニの産卵と株主総会が同時期に集中する相関について」など今日中が〆切に
 なっている訳の分からない文章を11本持っています。また、『往生要集』をあと三日で読
 み取らなければなりません。「茶道点前における動作解析」についての三次元加速度の考
 察もあります。ある雑誌から、「はんなりの構造」についてという難しいのもあります。
 自覚しているのがこれくらいで、まだまだ、あるようです。今日は、京都の学校で講演が
 始まる前に、名古屋の中日新聞文化センターから電話があり「先生、受講生が待ってはり
 ますが」「あー、やってしもた、でも私のは、確か第二木曜じゃないか」「そうか、世間
 はもうすぐお盆なのだ、いろんなものが日程変更されているのだ」
  と、メールチェックをすると未読メールが70件ぐらい。すんません。また言い訳をし
 ています。ということで、唐突なのですが次回から新連載を始めたいと思います。
  と、宣言をして支離滅裂の等号の筆を置かしてください。

  次号予告 『餅と饅頭ー和漢の境まぎらわす事ー』

                               
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                           (連載)『ニッポン城郭物語
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             ─第四十二幕─  ~園部城の話~ 

                                   梅原 和久

  現在の京都府には幕末時点で9つの藩があった。旧山城国に1つ(淀)、旧丹波国に5
 つ(亀山・園部・山家・綾部・福知山)、そして旧丹後国に3つ(田辺・宮津・峰山)で
 ある。ほとんど跡形もない宮津や峰山は論外としても、京阪電車が城内を貫通している淀
 や、大本教が管理している亀山・綾部のように、史跡としての整備が進んでいないところ
 が多い。その中で、当時の姿を一番よく伝えているのが、今回取り上げる園部である。

  園部は京都府のほぼ中央、京都駅から特急で30分のところにある小さな町である。室
 町時代には丹波八上城主波多野氏の支配下にあって、いくつか山城も築かれたが、現在の
 町の基礎を築いたのは、元和5年(1619)に但馬出石から2万6千石で園部に転封して
 きた外様大名の小出吉親である。小出氏は無城主格の大名であったため、その居城は「園
 部城」ではなく、「園部陣屋」と称され、城のシンボルとなる天守は言うに及ばず、櫓の
 設置も許されなかった。小出氏は外様でありながら江戸時代を通じて一度も転封されるこ
 となく、十代英尚(ふさなお)の時に明治維新を迎えることになる。
  …と、このままでは園部は特筆すべきことのない城下町となってしまうが、実はこの後
 の出来事のために、園部は日本城郭史に残ることになる。

  無城主格の大名は幕府内の序列においてもはっきりと格下扱いであるために、いわゆる
 「城持大名」への憧れが大きかった(※1)。園部の小出氏も幕末、京の政情不安定を理
 由に陣屋の修築(櫓・櫓門の新築等)を願い出ているが、幕府からあっさり却下されてい
 る。しかし、大政奉還によってその風向きは大きく変わる。
  明治元年(1868)、新政府に対して旧幕府に提出していたものと同内容の修築願い
 を出したところ、今度はすんなり許可されたのだ。旧幕府側と戊辰戦争の最中であり、御
 所に万が一のことがあった場合に備えて、園部を明治天皇を迎えるための「行在所(あん
 ざいしょ)」とするため、というのがその理由であった。
  つまり園部は、他の城が無用の長物とされた明治の世になってから、特別に新政府から
 築城の許可を受けたのだ。そして結果的に、これが日本最後の築城となったのである。

  明治2年(1869)に完成した園部城は、本丸に二層の乾櫓、巣鴨櫓、太鼓櫓(市内
 八木町安楽寺に移築現存)、巽櫓(現存)をあげ、背後の小麦山には天守に相当する三層
 の遠見櫓まであった。櫓門も大手門、御城門(現存)など3棟あり、天皇を迎える可能性
 もあった本丸御殿は、御城門を入ってすぐのところに車寄、大広間・大書院など九棟が連
 なる立派なものだった。園部はここにきて初めて、城と呼ぶにふさわしい構えとなった。
  しかし、歴史が知るように、結局園部への天皇の行幸はなく、完成からわずか数年後の
 明治5年(1872)には、他の城と同様ほとんどの建造物が取り壊される運命となるので
 ある。

  現在、園部城趾は府立園部高校の敷地となっており、旧御城門が校門となっている。城
 門を校門としている学校は他にもあるが、これだけ立派な櫓門を持つ学校は他にない。し
 かも、門の隣には番所、巽櫓や土塀まで築城当時の形で現存しているのだ(※2)。こん
 な高校に通える教員や生徒が羨ましい…と言いたいところだが、園部高校は「やまとのく
 には言の葉のくに」の田口先生の前任地であり、このメルマガの編集者岸本さんはそのと
 きの教え子、というオチなのでした。

 (※1)幕末に城持大名に格上げされた際に、蝦夷地松前藩主が詠んだ喜びの歌がこれ。
  「東にて搗きたてそめし白餅(城持)を 堅く備えんふるさとの神」
  
 (※2)櫓が現存している例はそれほど多くなく、京都府内では二条城に2棟あるだけで
  あり、それらは当然のように国の重要文化財に指定されている。しかし、園部城の遺構
  はいずれも国どころか府や市の文化財にさえなっていない。そもそも、これらが貴重な
  文化財であるという認識が、地元にさえ余りないことは一つの要因だろう。一刻も早い
  文化財登録が望まれる。      
                                   

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                     (連載)『やまとのくには言の葉のくに』
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                  第四十九首                 

                                   田口 稔恵

  風吹けば蓮の浮き葉に玉越えて涼しくなりぬひぐらしの声
  源俊頼 (『金葉集』 夏)

 (風が吹くと池が波立ち、水面に浮かんだ蓮の葉に玉が転がり越える。涼しくなったこと
 だ。ちょうど、ひぐらしの声も聞こえてくる。)

  源俊頼は父の源経信、息子の俊恵法師とともに、父子3代に渡り百人一首に歌を採られ
 ている。いずれも当代一流の文化人であった。
  『金葉集』は5番目の勅撰和歌集であり、勅命は白河院。幼少の折、父とともに冷遇さ
 れたが、長じて摂関家に舵を取られていた政を、天皇親政に戻し、院政を敷いたことで知
 られる。
  断固たる意志を持つ白河院の性質を反映してか、俊頼が撰者をつとめた『金葉集』は、
 二度までも改訂を求められ、三奏本がようやく嘉納される、という異例の経緯をたどる。
 そのため、伝本による異同が多いのも特徴である。

  俊頼の作風は、視覚を刺激するような、俳諧的側面が見受けられ、当時としては斬新す
 ぎたためか批判も受けている。上記の歌も、夏の夕、風が立ったそのことよりも、その風
 が池の波を起こし、蓮葉の上に玉を作った、というその事柄が涼しさを演出している。発
 想の妙といえるが、当時としては遊戯的で格調の高さを欠くと批判される可能性も孕んで
 いただろう。しかし、その一方で俊頼は歌論『俊頼髄脳』をものす、学者でもあった。
  当時の歌壇を俊頼とともに牽引したのは、二つ後の勅撰集『千載集』の撰者である藤原
 俊成の師・藤原基俊で、彼もまた偏屈の呼び声高い人物であった。
  しかし、世評に屈しない彼らの美意識が、来たるべき歌道の大成への道しるべになった
 ことは疑いようがない。

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 ◆[嵯峨野学藝倶楽部] 8月開講講座のお知らせ ◆
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 詳しくは、http://www.ren-produce.com/sagano/club/をご覧下さい。

 ★「茶道教室(土曜日コース)」
  日程:8月1日、8日、25日(いずれも土曜)
  時間:15時~20時(ご都合の良い時間にお越し下さい)
  講師:西村 宗靖・太田 宗達
  ※見学/体験も、受付けています

 ★「茶道教室(水曜日コース)」
  日程:8月5日、19日(いずれも水曜)
  時間:13時~18時(ご都合の良い時間にお越し下さい)
  講師:西村 宗靖・太田 宗達
  ※見学/体験も、受付けています。
 
 ★「京文化を語ろう」
  日程:8月8日(土曜)
  時間:11時~12時30分(90分)
  講師:太田 達
  テーマ:「宗教から京都を考える~浄土宗~」
  参加費:1回1,000円(茶菓子付)
  ※1回のみの参加も、受付けています。

 ★「京都歴史講座」
  日程:8月16日(日曜)
  時間:11時~12時30分(90分)
  講師:中村 武生
  テーマ:「山城・加茂・笠置町の旧蹟」
  参加費:1回 1,000円 (茶菓子付)
  ※1回のみの参加も、受付けています。

 ★「うたことば研究会」
  日程:8月29日(土曜)
  時間:10時~11時
  監修:田口 稔恵
  ※資料代等が必要です。詳細はお問合せ下さい。

 ★「今様・白拍子教室」
  日程:8月29日(土曜)
  時間:13時~14時 
  講師:石原 さつき
  ※見学/体験も、随時受付けています。
   性別・年齢・経験は問いません。

 ●URL
  http://www.ren-produce.com/sagano/club/
 
 お問合せ・お申込みはコチラまで→sagano@ren-produce.com

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  新型インフルエンザの影響で試験期間が短くなり、レポートに追われています。
 1日で10枚を書き終わるという荒技をやってしまいました・・。
 次回はもう少し前倒しして頑張らないといけないですね。

  ところで、もう8月になりますね。今年は去年に比べて、気温が低いような気がします。
 勉強には最適ですが、ここ最近の異常気温は心配です・・・。
 メルマガ読者の皆様、風邪に気をつけてお過ごしくださいね。

                                    (まつだ)

     [次回は、8月15日(金)に配信予定です!次回もお楽しみに。]
 
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多くの方に有斐斎弘道館の活動を知っていただきたく思っております。
記事が面白かったら是非、シェアいただけると幸いです。