嵯峨野文化通信 第69号

 伝統文化プロデュース【連】メールマガジン 
 
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              〔嵯峨野文化通信〕 第69号
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         日々の暮らしに「和」の魅力をプラスしてみませんか?

    伝統文化プロデュース【連】は、日本の伝統文化にこめられた知恵と美意識に

          ついて、学び広めていくための活動をしている団体です。

         京都・嵯峨野から、最新の情報を皆さんにお届けします!
               毎月1日・15日(月2回)

    ★VOL:69(2008/12/15)
 
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 ○【連】からのお知らせ ———————————— 連載執筆者募集
  ○(連載)『京都タイムトラベル』————————— 第二十四回
  ○(連載)『やまとのくには言の葉のくに』——————- 第三十七首
  ○[嵯峨野学藝倶楽部]12月開講講座のお知らせ

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 【連】からのお知らせ
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 ○連載執筆者募集!

  [嵯峨野文化通信]では、伝統文化に関する連載を執筆してくださる方を募集していま
 す。ご意見等の投稿も歓迎です。伝統文化について、語りあいましょう!
  詳しくは以下までお問い合せください。

  お問合せはコチラまで→info@ren-produce.com

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                         (連載)『京都タイムトラベル』
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                第二十四回 「橋のたもと」                   
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  橋は、よく映画のシーンに登場する。「君の名は」の数寄屋橋はあまりにも有名である
 が、幕末を題材とした時代劇では、三条や四条の橋上、橋下で新撰組と志士達が切り結ぶ。
 また、「必殺シリーズ」では多くの悪人達が、渡月橋の下で誅殺された。事実、平安時代
 中期には桂川のこの辺りで、僧の呼び掛けによる集団の入水があり、見物のため老若男女
 が集まって、市が立ったという記録がいくつかある。また、四条河原では、釜茹、斬首、
 磔、獄門等が、室町中期より行われた。当然、橋上からの眺望は、各時代ごとに好まれた
 であろう。

  四条の橋に注目してみよう、師走、東詰めは南座の顔見世で賑わう。勘亭流のまねきの
 並ぶ上の櫓には梵天が二本。(夜中にみたら凄みがあります。お勧めです。)此の景色は
 『洛中洛外図』の通りである。当時の川幅は広く、今の高島屋の西端から、縄手通り(一
 銭洋食のある通り)までが、河原であった。幾つもの芝居小屋が立ち並び、幾つもの梵天
 が、天をさしていた。
  江戸時代初期(元禄期)の、様々な在京日記に見られる円山観桜の記録には、溢れ落ち
 んばかりの人々が四条橋を行き交っていたことが、いきいきと記されている。今、師走の
 橋の上には、南無妙法蓮華経の法旗を立てた僧侶の勧進の姿がみられる。数年前まで確か、
 十七世紀までの西詰めであったろう。

  高島屋前の四条河原町交差点の歩道に、救世軍の社会鍋があったの覚えておられるだろ
 うか? 傷痍軍人たちが、ラッパを吹いていた。『洛中洛外図』にもこのような図がみら
 れる。
  先月カンボジアのアンコールで、入城のための入り口がある橋のたもとに、シアヌーク
 軍の傷痍兵達が、それぞれの前を通る観光客の国々の歌を演奏し、物乞いをする姿に出く
 わした。橋のたもととは、戦いの無常を見てきたのであろう。

                                   ―了―

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                   (連載)『やまとのくには言の葉のくに』
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                  第三十七首                   
                                   田口 稔恵
 
  白珠は人に知らえず知らずともよし知らずとも我ししられば知らずともよし
                           元興寺の僧 (万葉集 巻6)

 (海底に眠る真珠のような私の才能は、人に知られていない。知られていなくてもかまわ
 ない。人が知らなくても、私さえ知っていれば。)

  『万葉集』等にわずかに残る、「旋頭歌」という形式の歌である。この歌には詞書と左
 註がついており、それによると、元興寺の僧が、非常に才に恵まれながら、なかなか世に
 名が広まらないことを嘆いてこの歌を作ったという。その伝が事実ならば、この歌は沈倫
 の歌、己の不遇を嘆き、自らを慰める歌である。ちょっと恨みがましい。

  しかし、『名義抄』には、「嘆 ナゲク ホム」との記述もあり、「褒める」の意をと
 れば、歌の持つ雰囲気は一変する。「人が知らなくても、自分の才能は自分さえ知ってい
 ればいい」という、僧らしい、悠揚せまらぬ態度が、五七調の安定したリズムにマッチし、
 万葉らしい大らかな詠いぶりとなっている。

  他者の評価は自分を映す鏡になりえるため、人は評価を気にせずにはいられない。成果
 主義の横行する現代ではなおさらだ。しかし、かつての日本の価値観のように、山本周五
 郎の小説の主人公のようにー他者からどう見られようと、自分の感覚を信じ、一心にそれ
 を磨き、評価されなくても努力し続ける我慢強さが、現代人には必要なように思われる。

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 ◆[嵯峨野学藝倶楽部] 12月開講講座のお知らせ ◆
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 詳しくは、http://www.ren-produce.com/sagano/club/をご覧下さい。

 ★「茶道教室(水曜日コース)」
  日程:12月17日(水)
  時間:午後1時〜6時(ご都合の良い時間にお越しください)
  講師:西村 宗靖・太田 宗達
  ※見学/体験も、受付けています。

 ★「茶道教室(土曜日コース)」
  日程:12月20日、27日(いずれも土曜)
  時間:午後3時〜8時(ご都合の良い時間にお越しください)
  講師:西村 宗靖・太田 宗達
  ※見学/体験も、受付けています

 ★「今様・白拍子教室」
  日程:12月20日(いずれも土曜)
  時間:午後1時〜2時(60分)
  講師:石原 さつき
  ※見学/体験も、随時受付けています。
  性別・年齢・経験は問いません。

 ★「京文化を語ろう」
日程:12月20日(土)
時間:午前11時〜12時30分(90分)
  講師:太田 達
テーマ:「茶道・華道」
参加費:1回1,000円(茶菓子付)

 ★「京都史跡ものがたり〜三宅安兵衛の石碑をたずねて」
  日程:12月21日(日)
  時間:午前11時〜12時30分(90分)
  講師:中村 武生
  テーマ:「山科毘沙門堂」
  参加費:1回 1,000円 (茶菓子付)
  ※1回のみの参加も、受付けています。
 
 ●URL
  http://www.ren-produce.com/sagano/club/
 
お問合せ・お申込みはコチラまで→sagano@ren-produce.com

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  最近ますます寒くなってきましたね。この間まで、紅葉はまだかまだかとやきもきして
 いたと思うのに、気づいたらもうすぐ雪が降り出しそうな雲行きです。なんだか、季節が
 移り変わるのって、切ないものですね。
  そして、あと二週間ほどで今年も終わり。皆さんは、どんな一年を過ごされましたか?
 私は、あっという間に終わった一年でした。【連】とも更に深く関わるようになり、新し
 い世界を知り、大変なことも多かったですが、すごく充実していたと思います。
  めまぐるしく変化した一年ではありましたが、なかなか良い年でした。こう言って一年
 を終えられるのって、結構幸せなことかもしれませんねー。
  長々と失礼しました。それではみなさん、良いお年を!!
                                 (きしもと)

     [次回は、1月1日(木)に配信予定です!次回もお楽しみに。]
 
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多くの方に有斐斎弘道館の活動を知っていただきたく思っております。
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