嵯峨野文化通信 第33号

 伝統文化プロデュース【連】メールマガジン
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             〔嵯峨野文化通信〕 第33号
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         日々の暮らしに「和」の魅力をプラスしてみませんか?

    伝統文化プロデュース【連】は、日本の伝統文化にこめられた知恵と美意識に
          ついて、学び広めていくための活動をしている団体です。

         京都・嵯峨野から、最新の情報を皆さんにお届けします!
               毎月1日・15日(月2回)

                       ★VOL:33(2007/6/15)

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 ┃も┃┃く┃┃じ┃
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  ○【連】からのお知らせ———————–「上七軒ビアラベルコンテスト」
  ○(連載)『京都タイムトラベル』————-北山界隈(1)
  ○(連載)『いろはひほへと』—————–〜日本人の感性の歴史(4)〜
  ○やまとのくには言の葉のくに—————–第九首
  ○京の伝統行事——————————-夏越祓

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  暑くなってきましたね。この前、久しぶりにかたつむりをみかけました(*^○^*)
 紫陽花の葉っぱの裏を、ゆっくりと歩いている姿を見ていると何だか癒されました。古
 くから親しまれてきた、かたつむりのゆっくりとした歩みを見直してみてもいいかもし
 れませんね。

  さて、今回の〔嵯峨野文化通信〕は、夏の彩るイベントのお知らせからスタートです!

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 【連】からのお知らせ
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     「上七軒ビアラベルコンテスト’07」のラベルデザイン募集中!

  京都で一番古い花街「上七軒」の夏の風物詩であるビアガーデン。その会場で行われ
 る「上七軒ビアラベルコンテスト」も、今年で3回目を迎えました。今年からはテーマ
 を設け、ラベルデザインを募集することにしました。

  今年のテーマは「宴(うたげ)」です。京都・五花街の1つ「上七軒」の宴にふさわ
 しい、あるいは上七軒で宴をしたくなるようなビアラベルをデザインしてみてください。
 皆さまのご応募、お待ちしております!

  なお、ご応募いただいた作品は、ビアガーデン開催期間中、上七軒の歌舞練場の舞台
 にて展示いたします。

 [テーマ]「宴(うたげ)」
      (※今年のコンテストは、このテーマを基に審査いたします)
 [〆切日]6月24日(日)必着

  詳しい内容は、下記のURLからご覧ください。

 ●「上七軒ビアラベルコンテスト’07」
 http://www.ren-produce.com/event/07_beer_label/

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             (連載)『京都タイムトラベル』―京都・時空・逍遥・記―
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                  北山界隈(1)           太田 達

  「祇園マハラジャ」というディスコを覚えておられるであろうか。多分、30歳以上
 の京都の方はご存知であろう。確か、このディスコが終焉を迎えようとしていた、今か
 ら12,3年前、北山族の同窓会なるイベントがあった。80年代、北山はトレンディ
 なファッションストリートであった。ビームスや、キャサリンハムネットetc。又、当
 時はしりのショットバーなどもあったのだが、今はどうなっているだろうか。北山橋が
 出来たのが44年前、確か昭和40年。その頃は、上堀川(市バスの車庫があった)か
 ら鴨川までの間にしか道はなく、十二間通りと言っていた。そして植物園の北側は、畦
 道であったような記憶がある。上賀茂―大田神社―深泥ヶ池の山裾までは田畑しかなく、
 その中に小さな藪が点々としていた。私の家は、今の上賀茂橋と北山橋の中間の賀茂川
 の西側の堤防の下にあり、下鴨前萩町の小学校へ通っていた。1番の市バスで北大路車
 庫へ、そして北大路橋をわたるバス、確か4番のバスであったか、とんでもない遠回り
 をしていた。真っ直ぐ、植物園の北側を歩けば、子供の足でも15〜20分くらい。で
 も北山橋がなかったわけである。一度、下校時に賀茂川渡河という子供にしては大チャ
 レンジをした。「どんどん」というのをご存知だろうか。300mぐらい毎にある賀茂
 川の堰堤のことである。くつを脱ぎ、手にもち、その上を渡ったのだが、当時の賀茂川
 は結構水量が多く、案の定、すべって「どんどん」の上流側に落ちた思い出がある。冷
 たかった。

  今回は、個人的なノスタルジックを含むことをお許しいただきつつ、オーラルヒスト
 リーをまじえながら、この北山エリアについての歴史を考えていきたい。
                                    (つづく)

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                           (連載)『いろはひほへと』
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          ・・・いろはにほへと・・・・・・色は匂へど・・・

               〜日本人の感性の歴史(4)〜
                                はまさき かなこ

  最近、「いい匂い」という表現をする人が少なくなった。「いい香り」と言うそうだ。
 「匂い」という言葉には「臭い」イメージがあるらしく、「匂い」という言葉を避け、
 「香り」と表現するのだろう。そもそも、「匂い」という言葉には、芳香か悪臭かとい
 う区別はないのだが、いつの間にやら悪臭をあらわす言葉になってしまったようだ。そ
 の原義の美しさ、豊かさを思うと、残念でならない。匂いの善し悪しは、非常に個人的
 な感覚によるものである。ガソリンの匂いや、汗の匂いが好きな人もいる。たいていの
 人は、どうしてその匂いが好きなのかと問われても答えられないだろう。そして、もっ
 と答えられないのが、どんな匂いかを他人に説明することである。

  貝原益軒は『大和本草』(1709年刊)の中で、匂いを次の「五臭」に分類してい
 る。「羶(くさし)」「焦(こがれくさし)」「香(こうばし)」「腥(なまくさし)」
 「朽(くちくさし)」

  しかし、たいていの人はこの5つの匂いの表現では物足りないと感じるだろう。例え
 ば、バラの花の匂いを、単に「こうばし」と言うだけでは明らかに不足である。ドイツ
 の心理学者ヘニングは、1919年、匂いを「花香」「果実香」「薬香」「樹脂臭」
 「焦臭」「悪臭」の6つに分類し、そのおのおのを頂点とした三角プリズムを作り、あ
 らゆる匂いはこの三角プリズムの上のどこかの1点をもってあらわすことができるとし
 た。例えば、熟したマンゴーの香りを、花香、果実香、悪臭を頂点とした三角形の中に
 示すことができる、というように。もちろん、分類の上でどの点を選ぶかは、個人の恣
 意的な感覚にすぎないが、やってみると、かなりのものの匂いを指し示すことができる
 ことに驚く。

  香道においては、香りを「酸」「鹹」「甘」「苦」「辛」の5つの味で表現する。こ
 れは、古く中国で薬物の香気を分類するものとして知られていたが、日本では、江戸中
 期以降に、この分類が定着する。例えば、沈香の中でも最上の「伽羅」は「(前略)苦
 味を立つるを上品とす。(略)又辛味あり。酸味鹹味も有」云々(米川常白『六国列香
 の辨』)。すなわち、五つの味の配分と強弱の組合せによって、香木の香りを表現する
 のだ。いずれにしても、匂いをあらわすには、他の感覚を借りてきて表現するしかない。
 香道でも、実際には上記の味覚表現の他に、以下のようなものも見られる。

  前回登場した名香「太子」は、「ききいかにもきゃしゃにすずしく御座候」というよ
 うに、「華奢」「涼し」という言葉をもってあらわされている。(ちなみに、「きき」
 というのは、「その香りは」というほどの意。香は「聞く」という。)他に、「端午」
 という香は「ききしめやかにして」、「八重菊」は「ききあつうして」というように、
 湿度や温度といった感覚からも言葉を借りている(以上、17世紀の玩隠永雄『名香目
 録』より)。嗅覚そのものをあらわした言葉ではないのに、何となくどんな匂いか想像
 できるところが面白い。

  今、これを読んでくださっている方の周りは、どんな匂いがしているだろうか?
 私は今たまたま奥琵琶湖の湖畔にいて、夕風にうたれているのだが、その香はと問われ
 れば、「やはらかにして辛き心あり」といったところであろうか。いや、「閑かにして
 甘き中に苦み混じりて」・・・。何だか訳がわからなくなってきた。匂いを言葉にして
 みると、全身の感覚がより細やかに、研ぎ澄まされてくのがわかる。一旦、それをあら
 わしたかに見える言葉が、自らの感覚との間に距離を覚え、また新たな表現を探し求め
 るのだ。まるで、歌を作っているかのように。

  次回は、歌と匂い、香りの関係について書いてみたい。
                                    (つづく)

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 やまとのくには言の葉のくに
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                   第九首
                                    田口稔恵

  物思へば沢の蛍もわがみよりあくがれ出づる魂(たま)かとぞみる
                   『後拾遺集』雑歌 和泉式部

 (物思いに沈んでいると、沢に乱れ飛ぶ蛍を、私の身体からさまよい出た魂のかと思う
 ことだよ。)

  詞書から、男に忘れられ、貴船明神の参詣した折、御手洗川に蛍が飛ぶのを見て詠ん
 だ歌であることがわかる。物思い、とは、恋の物思いである。当時、男の訪れを待つし
 かできなかった女性達にとって、契った相手の足が遠のくことは、大きな精神的打撃で
 あり、生きる希望やよすがを失うこととなった。待つ身は辛く、ともすれば深い物思い
 に沈む。参詣に来た貴船でも、男のことを思う我が身に気づき、茫然と自らの魂の化身
 のような蛍を見る。当時、魂は身とつながっており、常は一体であるが、何らかのきっ
 かけでその魂が身から彷徨い出ると考えられていた。「あくがる」という語がこれを表
 す。貴船明神はこの歌に対し「奥山にたぎりて落つる滝つ瀬のたまちるばかり物な思ひ
 そ」と返歌した、と伝えられる。歌に対して神仏が感応する、という歌徳説話において、
 しばしばその歌い手は真に苦悩する者であり、また歌の名手と名高い人物である、とい
 う姿をとる。和泉式部は、夫との離別後、二人の年下の親王との相次ぐ恋愛、名将・藤
 原保昌との再婚など、恋多き女として伝説を残した。しかし、今なお根強い人気を誇る
 理由は、式部がその都度真摯に恋し、傷つき、それを類い希な歌才によって名歌として
 昇華させたことを、現代人も感じ取るからかもしれない。

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 京の伝統行事 〜祭に出かけてみませんか?〜
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 ○夏越祓

  「夏越祓」は「水無月の祓い」とも呼ばれ、1年のちょうど折り返しにあたる6月3
 0日に、この半年の罪や穢れを祓い残り半年の無病息災を祈願する神事です。「夏越祓」
 は古くから寺社で行われており、この日、神社の鳥居の下や境内にはチガヤで作られた
 大きな輪が用意されます。参拝者が「水無月の夏越の祓いをする人は、千歳の命のぶと
 いうなり」などと唱えながらくぐると、夏の疫病や災厄から免れるといわれています。
 また、神社から配られた紙の人形(ひとがた)に姓名・年齢を書き、それで身体を撫で
 てから神社に納めると、罪・穢れが祓われるとも伝えられています。

 [日程]6月30日(土)
 [場所]北野天満宮・建勲神社・上賀茂神社・吉田神社・地主神社・城南宮・白峯神社・
     貴船神社・車折神社・梅宮大社

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          ◆[嵯峨野学藝倶楽部]6月開講講座のお知らせ ◆
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          詳しくは、http://www.ren-produce.com/sagano/から

  ★「茶道教室(水曜日コース)」
    日程:6月20日(水)
    時間:午後1時〜5時(ご都合の良い時間に、お越しください)
    <ご要望に応じて、午前中や夜などの時間帯も検討いたします>
    ※見学/体験も、随時、受付けています。
    ▽詳細は、コチラから。
    http://www.ren-produce.com/sagano/chadou/suiyoubi/suiyoubi.html

  ★「今様・白拍子教室」
    日時:6月23日(土)午後1時〜2時(60分)
    ※見学/体験も、随時、受付けています。
    ▽詳細は、コチラから。http://www.ren-produce.com/sagano/imayou/

  ★「茶道教室(土曜日コース)」
    日程:6月23日(土)
    時間:午後3時〜8時(ご都合の良い時間に、お越しください)
    ※見学/体験も、随時、受付けています。
    ▽詳細は、コチラから。
    http://www.ren-produce.com/sagano/chadou/doyoubi/doyoubi.html

  ★「京都歴史講座」
    日時:6月24日(日) 午前11時〜12時30分(90分)
    タイトル:「平安時代の京都その3―坂上田村麻呂と蝦夷征討―」
    参加費:1回:1,000円(茶菓子付)
    ▽詳細は、コチラから。http://www.ren-produce.com/sagano/rekisi/

  ★「茶道教室(土曜日コース)」
    日程:6月30日(土)
    時間:午後3時〜8時(ご都合の良い時間に、お越しください)
    ※見学/体験も、随時、受付けています。
    ▽詳細は、コチラから。
    http://www.ren-produce.com/sagano/chadou/doyoubi/doyoubi.html

         お問合せ・お申込みはコチラまで→sagano@ren-produce.com

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  ♪[嵯峨野学藝倶楽部]・・・リニューアル&講座日程を追加しました!
    ▽詳細は、コチラから!
    http://www.ren-produce.com/sagano/

  ♪〔嵯峨野文化通信〕・・・バックナンバーに、第32号を追加しました!
    ▽詳細は、コチラから!
    http://www.ren-produce.com/sagano/merumaga/

  ♪トップページに、「ビアラベルコンテスト」募集のお知らせを追加しました!
    ▽詳細は、コチラから!
    http://www.ren-produce.com/

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  旧暦6月1日は「氷の節句」または「氷の朔日」といわれ、室町時代には幕府や宮中
 で年中行事とされていました。この日になると、御所では「氷室」の氷を取り寄せ、氷
 を口にして暑気を払いました。「氷室」とは冬の氷を夏まで保存しておく所のことで、
 地下など涼しいところを利用して作られた、昔の冷蔵庫のような場所です。京都の北山
 には「氷室」という名の場所があり、今でもその氷室の跡が残っています。昔はこの北
 山の氷室から宮中に氷が献上されたと『延喜式』に記され、宮中では氷室の氷の解け具
 合によってその年の豊凶を占ったといわれています。

  当時は、氷室の氷を口にすると夏痩せしないと信じられ、臣下にも氷片が振舞われた
 ようです。しかし、庶民にとっては夏の水はとても貴重で、ましてや氷など簡単に食べ
 られるものではありません。そこで、宮中の貴族にならって氷をかたどった菓子が作ら
 れるようになりました。これが、6月30日に食べる風習がある「水無月」です。水無
 月の三角形は氷室の氷片を表したもので、上の小豆は悪魔払いの意味を表しています。

    [次回は、7月1日(日)に配信予定です! 次回もお楽しみに(^▽°)]
        ☆治☆
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多くの方に有斐斎弘道館の活動を知っていただきたく思っております。
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