嵯峨野文化通信 第123号

伝統文化プロデュース【連】メールマガジン

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  ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄)     [嵯峨野文化通信] 第123号
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 伝統文化プロデュース【連】は
 日本の伝統文化にこめられた知恵と美意識について
 遊びながら学び、広めていく活動をしている団体です

         
          嵯峨野文化通信は、伝統文化を「遊ぶ」ためのヒントを発信します

                毎月1日・15日(月2回)
 
                      ■VOL:123(2011/3/17)

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                ■□■もくじ■□■

  ■【連】からのお知らせ ——————– 新講座のご案内
                         京菓子講座が始まります
                        ベターホーム「老松の和菓子」教室
  ■(連載)『餅と饅頭ー和漢の境まぎらわす事ー』————– 第三十三回
  ■(連載)『源氏が食べるー平安文学に描かれる食ー』———- 第二十四回
  ■(連載)『北野の芸能と茶屋』—————————— 第二十七回
  ■(連載)『やまとのくには言の葉のくに』——————– 第八十五首
  ■[嵯峨野学藝倶楽部]3月・4月開講講座のお知らせ

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  東北地方太平洋沖地震で被害に遭われた方々に、心よりお見舞い申し上げます。一刻
 も早い復興がかないますよう、願っております。

                                   編集部一同

             □■【連】からのお知らせ■□

 ■新講座のご案内

  三壷庵で行っておりました太田達の講座「京文化を語ろう」は、4月からタイトルと
 場所を変えて行います!
  1講座ごとに独立した内容ですので、途中からでも聴講していただけます。
  更に魅力を増した本講座を、ぜひ受講ください!

  「京都文化教養講座1~信仰からみる京都~」

  <日程> 4月 9日(土)「桜の信仰 ~左近の梅はなぜ桜になったのか~」
       5月21日(土)「葵と桂」
       6月18日(土)「禊と祓」
       7月 9日(土)「牛頭天王と素戔嗚尊」
       8月20日(土)「地蔵盆」
  <時間>11時~12時30分(時間は変わりません)
  <場所>有斐斎 弘道館(京都市上京区上長者町通新町東入ル元土御門町524-1)
  <費用>各回2千円(生菓子、抹茶付)

  ※この講座を受講するには申込みが必要です。受講を希望される方は、下記アドレス
   までお申込みください。
    kouza@kodo-kan.com

  講座についての詳細なHPはコチラ
  http://kodo-kan.com/seminar.html

 ■京菓子講座が始まります

  4月13日より、NHKの神戸文化センターにて京菓子についての講座が始まります!
 講師は、【連】の太田達(有職菓子御調進所 老松 主人)です。
  神戸での開催ははじめてとなります。毎回、話にまつわる菓子を用意されるそうです。
  ぜひ受講ください。

  NHK文化センター講座「京菓子で感じる日本文化」

  日程:4月13日(水)~9月14日(水) <全6回>
  時間:13時~14時30分
  場所:NHK文化センター神戸教室(兵庫県神戸市中央区東川崎町1-2-2)
  費用:15,750円(全6回、全ての講座を受講される場合の金額です。要申込)

  ※講座は月1回、9月までの半年間行われます。
   日程は毎月第2水曜日であり、時間は毎月変わりません。

  申込・詳細はコチラ
  NHK文化センターHP
  http://www.nhk-cul.co.jp/programs/program_595531.html

 ■ベターホーム「老松の和菓子」教室

  料理教室ベターホームの特別コースのお知らせです。【連】の活動に協力をいただいて
 いる、「有職菓子御調進所 老松」の方々が講師を務めます。
  老松こだわりのお菓子を半年にわたり、講師と共に作っていきます。お菓子つくりを楽
 しみながら、季節季節の移ろいを感じてみてはいかがでしょうか?
  受講していただくには、ベターホームに入会していただく必要がございますので、詳し
 くはベターホームのホームページを参照ください。

  日程:5月20日(金)~10月21(金)
  時間:13時30分~15時45分
  場所:ベターホーム京都B教室
    (京都市下京区四条通柳馬場西入立売中之町99 四条SETビル8階)
  費用:24,700円(全6回) 

  ベターホームのお料理教室HP
  http://www.betterhome.jp/school/chef/keihanshin19.php
  

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            ■『餅と饅頭ー和漢の境まぎらわす事ー』■

                    第三十三回

                                    太田 達

  一月から三月にかけて、日本では、様々な「餅」が登場する。正月といえば、鏡餅、
 雑煮と餅フェスティバルである。北近江地方では、三月中旬にかけて、「おこない」と
 いう行事が、各集落ごとに、様相を替え集落の住人により守られている。期間に幅があ
 るのは、修正会、修二会の行事が民俗的行事と習合したところに、明治以降の新暦と旧
 暦の混同が重なり、非常に複雑化したものと考えられる。

  修正会は、観音悔過であり、奈良時代から平安時代にかけての観音信仰の広がりとと
 もに、各地の年越祭と結びついたものと考えられる。世界中の農耕民族にとっての共通
 の祭である収穫祭と、予祝祭が先に述べた暦の混乱によって日時がバラバラになり、根
 本の思想がわからなくなったものであろう。

  国東半島の六郷満山に残る「おこない」も同様である。北近江の「おこない」は、集
 落ごとに飾る餅の形状がさまざまである。いくつかの事例を検証してみよう。祭場は、
 会所、神社、寺と集落ごとに変わるが、餅つきとその仕上げの空間は、当家(頭屋)の
 持ち回り制であり、共同調理がおこなわれる。長浜市鳥羽上では、拳くらいにまるめた
 餅を枯木につけ巨大な餅花のようなものを神輿的に仕立て、運び出す。また、米原市志
 賀谷では、障子の桟のように組んだ青竹におよそ均等につけ子供たちが、町内を練り歩
 く。

          ■『源氏が食べるー平安文学に描かれる食ー』■         

                   第二十四回       

                                  荻田 みどり

  『源氏物語』などの平安文学に食記述が少ないことは、既に述べてきた。今回は、『
 源氏物語』に描かれることのなかった食について見てみよう。

  胡蝶巻は源氏36歳の3月下旬。源氏と紫の上が住む花盛りの春の町では、池に龍頭
 鷁首の舟を浮かべ、賑やかな舟楽が催される。折から秋好中宮は里下がりしていた。六
 条院の中とて自由に出歩けない中宮に代わり、女房たちが舟楽に招かれ、春を存分に楽
 しんでいる。
  翌日には、皆が秋の町に移動し、中宮御読経(ちゅうぐうのみどきょう)が催される。
 中宮御読経とは、大般若経を転読する行事である。『源氏物語』の古注釈『河海抄』で
 は、中宮御読経は、内裏で催される季御読経(きのみどきょう)と同様のものとされて
 いる。
  その季御読経の説明として、

   (前略)季御読経とは春秋に内裏にて大般若を講読せらるゝ也 引茶とて僧に茶を
   引かるゝ也 中宮東宮これにおなし

 と注されている。季御読経では、「引茶」という僧に茶を供する儀式が行われていた。
  茶といえば、鎌倉時代に栄西が日本に持ち込んだのが有名であるが、平安時代にも茶
 はあった。日本における茶の記録の初見は、『日本後紀』弘仁六(815)年4月22日条で
 ある。永忠が嵯峨天皇に自ら茶を煎じてすすめている。また、平安京の大内裏の東北角
 には、茶園があった。現在のように広く飲まれていたわけではないが、儀式などに用い
 られていたことが見える。
  古注釈には注されているが、『源氏物語』本文に「茶」の文字が見えることはない。
 『源氏』は「茶」を描こうとしなかった。
  『源氏物語』は1000年にわたり日本文化の礎として享受されてきた。もしも『源
 氏物語』が「茶」の一字を書き留めておれば、平安期の茶文化が栄西の喫茶伝来にうち
 消されることはなかったかもしれない。(つづく)

               ■『北野の芸能と茶屋』■             

                   第二十七回                 

                                   井上 年和
  永仁三年(1295)12月18日

   「於北野社御神楽為勅使参向事(後略)」『實躬卿記』

  三条實躬が北野社の御神楽に参列したようだ。

  「かぐら」の語源は、「神座」(かむくら・かみくら)が転じたものとする説が一般
 的である。神座とは「神の宿るところ」、「招魂・鎮魂を行う場所」を意味し、神座に
 神々を降ろし、巫・巫女が集まった人々の穢れを祓ったり、神懸かりとなって神の意志
 を伝えたり、また人の側からは願望が伝えられるなど、神人一体の宴を催す場であり、
 そこでの歌舞が神楽と呼ばれるようになったと考えられている。『古事記』および『日
 本書紀』においては、岩戸隠れの段でアメノウズメが神懸りして舞ったという神話が神
 楽の起源であるとされ、アメノウズメの子孫とされる猿女君は宮中において鎮魂の儀に
 携わっており、このことから神楽の元々の形は招魂・鎮魂・魂振に伴う神遊びであった
 とも考えられている。

  神楽は、宮中で行われる御神楽(みかぐら)と、民間で行われる里神楽(さとかぐら)
 に分けられる。

  御神楽(みかぐら)は宮中の賢所で行われ(賢所御神楽)、古くは内侍所御神楽と言
 われた。雅楽(国風歌舞)に含まれ、大嘗祭の清暑堂での琴歌神宴(神楽)、賀茂臨時
 祭の還立の神楽、園并韓神祭の神楽、石清水八幡宮臨時祭の神楽から成立したと考えら
 れている。長保四年(1002)あるいは寛弘二年(1005)から隔年で行われるよ
 うになり、後に毎年の行事となった。簡略化されてはいるが宮内庁式部職楽部によって、
 現在も毎年12月中旬に賢所で行われ、大嘗祭でも行われる。

  この様に北野社だけではなく、宮中や神社で行われた芸能は、言うまでもなく、もと
 もとは神へ捧げる神事であったのである。

            ■『やまとのくには言の葉のくに』■          

                   第八十四首                
 
                                   田口 稔恵

 墨染の君が袂は雲なれや たえず涙の雨とのみ降る
 (壬生忠岑 『古今和歌集』哀傷)

 (薄墨色のあなたの喪服の袖は、あの雲なのでしょうか。私までも、降る雨のように絶
 えず涙が流れます。)

  この和歌は哀傷の部の服喪に関する6首のうちの4首目に置かれている。「喪にはべ
 りける人を、弔問(とぶらひ)にまかりて、詠める」との詞書があり、本人の服喪では
 なく、知人が喪に服し、その弔問に出かけた作者が相手を思い遣って詠んだ歌のようだ。

  東北から遠く離れたこの地で、我々は祈ることしかできない。かの地の人に想いを寄
 せ、涙し、今自分たちにできることをするしかない。
  数万人、という命の単位に慣れることなく、一人ひとりのかけがえのない命が失われ
 てしまったのだという実感を持ち続ける努力をせねばならない。

  今日ばかりは、この私たちの涙雨が、被災地の方たちの上に冷たく降らないことを願
 うばかりだ。

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       □■[嵯峨野学藝倶楽部] 3月・4月開講講座のお知らせ■□

 詳しくは、http://www.ren-produce.com/sagano/club/をご覧ください。

 ■「茶道教室(土曜日コース)」
  日時:3月19日(土)
  場所:嵯峨野三壷庵
  時間:15時~20時(ご都合の良い時間にお越しください)
  講師:西村 宗靖・太田 宗達
  ※見学/体験も、随時受付けています。

 ■「茶道教室(水曜日コース)」
  日程:3月23日、30(いずれも、水)
  場所:嵯峨野三壷庵
  時間:13時~18時(ご都合の良い時間にお越しください)
  講師:西村 宗靖・太田 宗達
  ※見学/体験も、随時受付けています。

 ■「今様・白拍子教室」
  日程:4月2日(土)
  場所:嵯峨野三壷庵
  時間:13時~15時(60分)
  講師:石原 さつき
  ※見学/体験も、随時受付けています。
   性別・年齢・経験は問いません。

 ■「京都文化教養講座1~信仰からみる京都~」
  日程:4月9日(土)
  場所:有斐斎 弘道館
  時間:11時~12時30分(90分)
  講師:太田 達
  テーマ:「桜の信仰~左近の梅はなぜ桜になったのか~」
  参加費:1回2,000円(生菓子、抹茶付き)
  ※1回のみの参加も、随時受付けています。
  ※要申込 メール:kouza@kodo-kan.com

 ■「うたことば研究会」
  日程:4月16日(土)
  場所:嵯峨野三壷庵
  時間:16時~17時(60分)
  監修:田口 稔恵
  ※日にちが変更されました。お気をつけください。
  ※資料代等が必要です。詳細はお問合せください。

 ●URL
  http://www.ren-produce.com/sagano/club/

 お問合せ・お申込みはコチラまで→ sagano@ren-produce.com

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  今回メルマガ123号の発行が大幅に遅れましたこと、深くお詫び申し上げます。
  一層精進していきたいと思いますので、これからも嵯峨野文化通信をよろしくお願いた
 します。
                                  (編集部一同)

               ■□■ひとこと■□■

  3月15日、メルマガ編集部のまつだときしもとが大学を卒業いたしました。
 こころ新たに、今年もメルマガを皆さんに楽しんでいただけるよう精進いたします。
  よろしくお願いいたします!

                                   (きしもと)

     [次回は、4月1日(金)に配信予定です!次回もお楽しみに。]

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多くの方に有斐斎弘道館の活動を知っていただきたく思っております。
記事が面白かったら是非、シェアいただけると幸いです。