伝統文化プロデュース【連】メールマガジン
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〔嵯峨野文化通信〕 第101号
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日々の暮らしに「和」の魅力をプラスしてみませんか?
伝統文化プロデュース【連】は、日本の伝統文化にこめられた知恵と美意識に
ついて、学び広めていくための活動をしている団体です。
京都・嵯峨野から、最新の情報を皆さんにお届けします!
毎月1日・15日(月2回)
★VOL:101(2010/4/15)
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○(連載)『餅と饅頭ー和漢の境まぎらわす事ー』————- 第十五回
○(連載)『源氏が食べる─平安文学に描かれる食─』——— 第二回
○(連載)『北野の芸能と茶屋』—————————– 第五回
○(新連載)『ちょっとここらで 一休み』——————- 第一回
○(連載)『やまとのくには言の葉のくに』——————- 第六十五首
○[嵯峨野学藝倶楽部]4月・5月開講講座のお知らせ
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101号より通常連載は通常号に、「お知らせ」と座談会は、臨時号にて発行するこ
とになりました。
座談会の全貌については、今後メルマガ臨時号にて順次掲載していきます。
お楽しみに!!
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(連載)『餅と饅頭ー和漢の境まぎらわす事ー』
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第十五回
太田 達
101号目、人間の齢でいうと、100歳から、108歳の茶寿までを上寿と言う。で
は、上寿の第一歩は、白寿の続き、松尾社の神饌の話から始めよう。
桓武天皇による、新しい国家の建設の中心的な役割をはたした松尾の秦氏の一族の宮が
松尾社である事。特に平安京に先立つこと10年の長岡京は、秦氏の勢力圏に建設されよ
うとしていた。松尾の秦氏のような氏族の、氏族としての重要な仕事は一族の神を祭祀す
ることである。一族のムラ人が集まってカミを迎え、神人ともに一体となって相嘗(あい
なめ)をし、カミは、氏族の人々の願いを聞き入れ保証する。人々は、それに対して感謝
の祈りを捧げる。人々は、そのカミの出現の為の場所の標識として、依代(よりしろ)を
たて、神籠をととのえる。そして、ムラの恵みである産物を調理、調整し荘厳し、神饌と
してカミに捧げる。その後、直会(なおらい)と称し、神人共食をもって一体となること。
これが「祭り」の本質である。
直会の食のシンボル的な存在として、「粢」(しとぎ)がある。火の力を借りずに、炭
水化物を摂取する為の、緊急避難的な調理方法といってよい原初的なやり方。穀類を、一
晩水に漬け、柔らかくなった状態をすり潰す、それを、まるめ固める。昭和40年代前半
まで沖縄から、青森まで日本列島各地の祭礼の神饌として多く見られた物であるが、昭和
45年の万国博覧会を境に、姿を消していった。
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(連載)『源氏が食べる─平安文学に描かれる食─』
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第二回
荻田 みどり
『源氏物語』に食記述は少ない。平安時代の貴族といって思い浮かべるのは、『源氏物
語絵巻』のような卵形のふっくらとした顔立ちに引目鉤鼻ではないだろうか。空蝉巻でも、
いと白うをかしげにつぶつぶと肥えて、そぞろかなる人の、頭つき額つきものあざ
やかに、まみ、口つきいと愛敬づき、はなやかなる容貌(かたち)なり。
のように「肥え」ていることをプラスイメージとして用いている。豊満な女性が美しい
とされたことが伺える。食べないと肥えるということはないのだが。
この大絶賛されている「肥え」た人物は、空蝉の義理の娘である軒端荻(のきばのおぎ)
である。源氏は、一度契った空蝉のことが忘れられず、再び空蝉のいる邸を訪れる。そこ
で碁を打つ空蝉と軒端荻を垣間見る。一方の空蝉はといえば、
何にかあらむ表に着て、頭つき細やかに小さき人のものげなき姿ぞしたる、顔など
は、差し向ひたらむ人などにもわざと見ゆまじうもてなしたり。手つき痩せ痩せに
て、いたうひき隠しためり。
地味な格好で、手つきが「痩せ痩せ」なので、しきりに袖を引っ張って隠しているらし
い。痩せていることはマイナスだと捉えている。
しかし、源氏は痩せている女性に惹かれる。空蝉の器量の悪さをあげつらうが、手も顔
も全てを見せない隙のなさ、慎み深さに惹かれるのである。 源氏は他にも病の紫の上や
藤壺など「痩せている<けれど>美しい」というような、逆説で痩せた女性を賛美する。
花散里も末摘花も痩せている。当時の常識とは変わった感性の持ち主だったようだ。
さて、垣間見後、源氏は空蝉の寝所に忍び込むが、空蝉は源氏の気配を察知して逃げる。
そして、源氏は誤って軒端荻と契る。
「荻」はいつの時代も間違われやすいのか。かくいう筆者は「上風」の方である。
秋はなほ 夕まぐれこそ ただならね 荻の上風 萩の下露
(藤原義孝 『義孝集』所収)
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(新連載)『ちょっとここらで 一休み』
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今回から、新たな連載が始まります!!
今度の連載は、一休マニアがお届けする一休秘話です! 執筆者は戸谷太一さん。現在、
東京大学で日本史の勉強をされています。東大の茶道サークルから大原無心庵(※1)を
訪れ、茶事研修をされたのがきっかけで【連】を知り、今回連載を執筆いただくことにな
りました。
詳しいプロフィールと本人からのご挨拶は下記の「自己紹介コーナー」をご覧下さい♪
戸谷さん、それではよろしくお願いいたします!
(※1)大原無心庵・・・京都の大原の地に建つ、有職菓子御調進所「老松」さんの茶室
です。お茶を通したさまざまな交流や講座を行っています。
第一回
戸谷 太一
皆さんは、一休さんをご存じだろうか?
なにを言う、知っているに決まってるじゃないか! と怒られる方がいるかもしれな
いが、それももっともである。一休さんは、恐らく日本で一番有名なお坊さんであろう。
いや、最も愛されたお坊さんと言った方がいいかもしれない。
有名なお坊さんなら他にもたくさんいる。空海、最澄、法然、道元、栄西…数えあげ
ればキリが無いが、歴史の教科書に出てくるようなお坊さんは全てが一休さんに勝ると
も劣らない知名度を持っているだろう。確かに、宗教者としての業績なら、一休さんは
彼らにはおよばない。
では、なぜ一休さんはこんなにも知名度があり、愛されているのか。現代においては、
フジテレビ系列で放映されたアニメに依るところが大きいのは間違いない。しかし、そ
れ以前にも、一休さんをモデルに書かれた『一休咄(いっきゅうばなし)』という本に
よって、江戸時代から「とんち小僧」のイメージで愛されてきた。
一休さんは生涯のほとんどを、寺に住むことなく、市井に生きた人だった。そのため
に庶民に愛されたのだ、と一応の説明はつく。
しかし、私は一休さんが愛されたのには他に二つ理由があると思う。
一つは詩である。一休さんは、漢詩に非常に豊かな才能を発揮した人だった。素晴ら
しい文学や詩は、人の心に大きな感動を呼ぶ。一休さんの詩も、多くの人の心を強く揺
り動かし、惹きつけたに違いない。
もう一つは、その人間らしさである。それは、下の詩を読んでいただければ、その片
鱗を感じとって頂けると思う。この時、応永十六年(1409年)、一休さん16歳、
叢林への不満に衝き動かされるまま読み上げた、若く青臭い詩である。
説 法 説 禅 挙 姓 名
辱 人 一 句 聴 呑 声
問 答 若 不 識 起 倒
修 羅 勝 負 長 無 明
禅僧間の問答や説法で身分を持ち出し、出自をあざけるような言葉を聞いて、「そんな
問答は迷いを増長するだけだ!」というような詩だが…。どうにも世間知らずの青臭さを
感じる。「自分の理想が正しい!」や、「今の世の中は間違っている!」といった感覚、
皆さまも一度はお持ちになったことがあると思う。特に、反抗期には強く持つもので、一
休さんがこの詩を読んだのもそういった多感な時期だ。しかし、一休さんはその後、ライ
バル養叟さん(※2)の遷化(せんげ=高僧の死去)まで50年近く反抗し続けるから、
凄い。
「あ、僕と一緒だ」「一休さんも私と同じだ」という感覚にさせてくれる人間らしさを
一休さんは持っている。
そんな一休さんの「人間らしさ」に惹かれ、その魅力を彼の作った漢詩を読んで知って
いただこうと思い立ち、今回メルマガに執筆させていただく運びとなった。
これから、お付き合い頂けると幸いです、よろしくお願いします!
(※2)養叟(ようそう)さん・・・一休さんの兄弟子。
☆–★-☆自己紹介コーナー☆-★–☆
戸谷太一、21歳。神戸市出身で、現在は東大で日本史の勉強をしています。
一休さんに惹かれて一休さんの研究をしようと思っていますが、宗教全般に興味があり、
一休さん一本に絞ることのできない割と浮気性な人間です。
昔から京都が好きで、京都と繋がっていたいがために連さんにお邪魔させてもらってい
ます!
また、大学からはじめた茶道に魅せられ、日本文化の発展を心密かに期していますが、
まだまだ小さなこの体…何が出来るか分かりませんが、そんな活動にも参加できればな、
と思います。
よろしくお願いします!!
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(連載)『北野の芸能と茶屋』
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第五回
井上 年和
明応九年(1500) 7月「北野天満宮史料 目代日記 北野巷所注文」
(前略)
明応九年七月 十一文地子事分也 盛増(花押)
北野荒所屋敷夏地子事注文事
(中略)
茶や新ひらき
孫三郎 口三丈奥九丈百文両季二百文分侘事仕候間、先ゝ其分仕候、
(後略)
巷所(荒所)とは、平安京の道路が耕地・宅地されたものを言います。平安京は、九世
紀初頭に計画都市として成立しましたが、道路については、朱雀大路が27丈(約80m
)、大路が8丈(約24m)、小路が4丈(約12m)と必要以上の幅があったので、土
地をより効率的に利用するためこの様な現象が起きました。
そんな中、北野社近辺の巷所は北野社領となっていき、その中で茶屋等を営業し、坪数
に応じた地子を取り立てるようになりました。
巷所の中には、茶屋の他、野畠、檜物屋、豆腐屋、ゑんまや(閻魔屋?)、かいとりま
こ(?)等が並ぶようになり、北野社の門前町を形成していったのでした。
この茶屋は、御子茶屋のように神事に関わるような茶屋ではなく、一般庶民に茶を振る
舞うための茶屋であって、この頃にはすでにこの類の茶屋が増加していき、茶の大衆化が
進んでいったと考えられます。
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(連載)『やまとのくには言の葉のくに』
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第六十五首
田口 稔恵
月やあらぬ 春や昔の月ならぬ 我が身ひとつはもとの身にして
(『伊勢物語』第四段)
(月は昔の月ではないのか、春は昔の春ではないのか。我が身だけが元のままであるのに、
愛する人が側にいない今となっては、月も春も、昨年とは違うもののように感じられるこ
とだ。)
在原業平とおぼしき「男」を主人公とする一連の物語が収められた『伊勢物語』は、そ
のほとんどが「むかし、男・・・」から始まり、男の一途な恋のありようが描かれている。
和歌を中心に物語が展開された「歌物語」というジャンルに属する。
業平といえば、入内予定の女性を盗み出したり、忍んで伊勢の斎宮に会いに行ったりと
「色好み」「多情」の代表のように言われるが、その都度真実の恋であり、相手を傷つけ
る以上に自分も傷ついた恋だったのではないかと思う。そうでなければ、様々な伝承を業
平のものと考えて、『伊勢物語』として享受されつづけることがなかっただろう。
その業平が、五条の皇太后宮の家に住む女を深く愛した。相手は高貴な女性なのか、人
目を忍んで通っていたが、女性はある時身を隠してしまう。場所は突き止めるが、普通の
者には近づけそうもないところ。以前女性が住んでいた家でこの歌を詠み、泣きながら帰
るのであった。
女性を失ったことにより、以前と同じものがすべて色褪せる。自分は相変わらず同じ自
分なのに・・・。「世界」とは「自分」のことであり、本来的に脱中心化は不可能だとい
う、現代の認知論に通ずるところがある。
全体的に、紀貫之の六歌仙評通り「その心あまりて、言葉足らず」という印象を受ける
歌だ。しかし、この言葉の奔流を遮る心の表出こそが業平最大の魅力であることは言うま
でもない。
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◆[嵯峨野学藝倶楽部] 4月・5月開講講座のお知らせ ◆
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詳しくは、http://www.ren-produce.com/sagano/club/をご覧下さい。
★「茶道教室(土曜日コース)」
日時:4月17日(土)
時間:15時~20時(ご都合の良い時間にお越し下さい)
講師:西村 宗靖・太田 宗達
※見学/体験も、随時受付けています。
★「京都歴史講座」
日程:4月18日(日)
時間:11時~12時30分(90分)
講師:中村 武生
テーマ:「平安京顕彰ことはじめ-角田文衛と古代学協会の建碑画」
参加費:1回 1,000円 (茶菓子付)
※1回のみの参加も、随時受付けています。
★「茶道教室(水曜日コース)」
日程:4月27日(水)
時間:13時~18時(ご都合の良い時間にお越し下さい)
講師:西村 宗靖・太田 宗達
※見学/体験も、随時受付けています。
★「今様・白拍子教室」
日程:4月24日(土)
時間:13時~14時(60分)
講師:石原 さつき
※見学/体験も、随時受付けています。
性別・年齢・経験は問いません。
★「うたことば研究会」
日程:4月24日(土)
時間:15時~16時(60分)
監修:田口 稔恵
※資料代等が必要です。詳細はお問合せ下さい。
★「京文化を語ろう」
日程:5月8日(土)
時間:11時~12時30分(90分)
講師:太田 達
テーマ:「宗教から京都を考える~八幡~」
参加費:1回1,000円(茶菓子付)
※1回のみの参加も、随時受付けています。
●URL
http://www.ren-produce.com/sagano/club/
お問合せ・お申込みはコチラまで→ sagano@ren-produce.com
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最近は、急に暑くなったり寒くなったりしますね。
皆様、風邪などひいておられないでしょうか?
私は、最近とても眠いです。そして朝寝坊をしないか、いつも心配しながら布団に入り
ます。春眠暁を覚えずとはこのことでしょうか。
過ごしやすいこの時期に、一度ゆっくり目覚ましをかけずに寝てみたいですね。
(まつだ)
[次回は、5月1日(土)に配信予定です!次回もお楽しみに。]
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