嵯峨野文化通信 第145号

伝統文化プロデュース【連】メールマガジン

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  ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄)   [嵯峨野文化通信] 第145号
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 伝統文化プロデュース【連】は
 日本の伝統文化にこめられた知恵と美意識について
 遊びながら学び、広めていく活動をしている団体です

         
       嵯峨野文化通信は、伝統文化を「遊ぶ」ためのヒントを発信します

                毎月1日・15日(月2回)
 
                       ■VOL:145(2012/2/16)

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                 ■□■もくじ■□■

  ■【連】からのお知らせ ——– 有斐斎弘道館月釜「梅花茶会」のご案内
                       北野天満宮の梅苑が公開されました
                       研究報告会「花街の建築と景観」のお知らせ
                       日本今様謌舞楽会出演の映画が公開されます!
  ■(連載)『源氏が食べるー平安文学に描かれる食ー』———- 第四十五回
  ■(連載)『北野の芸能と茶屋』—————————— 第四十九回
  ■(連載)『やまとのくには言の葉のくに』———————- 第百一首
  ■[嵯峨野学藝倶楽部]2月開講講座のお知らせ

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              □■【連】からのお知らせ■□

   ■ 有斐斎弘道館月釜「梅花茶会」のご案内

  今月の月釜は「梅花茶会」と題しまして、特別ゲストとして上七軒の芸妓・尚鈴さん
 をお迎えいたします!花街とお茶についてのお話を伺いながら、弘道館で春を感じ
 ませんか。
  お席は、予約制とさせていただきます。残席わずかとなってまいりましたので、お早
 めにお申込みください!

 日 程:2月19日(日)
 時 間:11時、12時30分、14時 
 場 所:有斐斎弘道館(上京区上長者町通新町東入ル元土御門町524‐1)
 参加費:5,000円(会員の方は不要)
  
 詳細はコチラ
 http://kodo-kan.com/tea.html
  
 申し込み、問合せ先はコチラ
 TEL :075-441-6662
 MAIL:tea@kodo-kan.com
  
   有斐斎弘道館へのアクセスはコチラ
 http://kodo-kan.com/access.html
  
 ただいま、月釜会員募集中ですのでお気軽にお問合せください。
 年会費:1万円(各回の参加費は不要です)

  ■北野天満宮の梅苑が公開されました

  2月も中旬を迎え、今年も北野天満宮の梅苑が公開される時期となりました。
 ひと足先に春を感じに、北野天満宮へ出かけてみませんか。
  公開は、3月下旬頃までとなっております。
  期間中は、老松さんのお茶菓子がいただけます!

  日程:2月10日(金)~3月下旬まで
  時間:10時~16時まで
  場所:北野天満宮(京都市上京区馬喰町)
  費用:中学生以上 600円、小人 300円(いずれも茶菓子付)
     ※参拝は無料です。梅苑へは上記の入場料がかかります。

  北野天満宮のHPはコチラ
  http://kitanotenmangu.or.jp/

  ■ 研究報告会「花街の建築と景観」のお知らせ

  京都、東京、新潟などの各花街を対象に進められている、共同研究の成果を発表
 する研究報告会が、有斐斎弘道館にて行われます!
   花街は、日本の伝統文化を総合的に継承する装置であり、意匠の凝らされた造
 作や外構を持つ花街建築、ならびに情緒あふれる歴史的景観を持つ都市空間です。
 花街を様々な角度から、総合的に学ぶことができますよ。
  本メルマガの原稿を執筆してくださっている井上年和さんもいらっしゃいます。
  一般聴講が可能です。申込先、参加費などは決まり次第、お知らせします。  

  研究報告会「花街の建築と景観」
 (平成22~23年度 科学研究費補助金「伝統文化継承装置としての花街建築および景
  観の特性と計画的課題」)

  日程:3月17日(土)
  時間:14時~17時(13時30分開場)
  場所:有斐斎弘道館
  内容:<開会・弘道館の紹介>
          太田達(花街文化研究会代表)
      <研究報告>
      1.全国俯瞰「全国の花街景観と取り組みの概要」
          岡崎篤行(新潟大学工学部建築学科准教授)
          帆苅典子(新潟大学工学部建設学科学生)
      2.新潟「新潟古町地区における花街建築の特徴」
          大場修(京都府立大学生命環境学部環境デザイン学科教授)
          垣友映(京都府立大学大学院生命環境科学研究科環境科学専攻学生)
        「新潟古町花街の景観と課題」
          今村洋一(新潟大学工学部建設学科助教)
      3.金沢「金沢三茶屋街におけるまちづくりの経緯」
          坂本萌(新潟大学工学部建設学科学生)
      4.東京「戦後に再生された神楽坂花街の景観と計画的課題」
          寺田弘(NPO法人粋なまちづくり倶楽部理事長)
          松井大輔(東京大学大学院工学系研究科都市工学専攻学生)
      5.京都「上七軒花街の戦後の変遷と今後について」
          井上えり子(京都女子大学家政学部生活造形学科准教授)
        「近代期の京都花街~『技芸倶楽部』誌を中心に」
          井上年和((財)建築研究協会 主席研究員)
      <座談>
      パネリスト:上記報告者

  ■日本今様謌舞楽会出演の映画が公開されます!

  嵯峨野学藝倶楽部の今様・白拍子教室を教えてくださっている石原さつきお家元が
 会長をされている、日本今様謌舞楽会のメンバーが出演協力した映画が、東京にて
 上映されます!
  俳人である井上井月(せいげつ)を描いた作品です。上映は、井月のふるさとである
 伊那(長野県)にて公開後、順次全国公開されるそうです。
  お近くにお住まいの方は、ぜひ足を運んでみてくださいね!

  「ほかいびと~伊那の井月~」

  日程:3月24日(土)~4月6日(金)
  時間:10時30分、13時、15時30分、18時30分の一日4回上映
  費用:一般 1700円、学生 1400円、シニア1000円(いずれも当日料金)
      前売 1300円
  場所:ポレポレ東中野(東京都中野区東中野4丁目4-1ポレポレ坐ビル地下)

  「ほかいびと~伊那の井月」のHPはコチラ
  http://blog.livedoor.jp/inoueseigetsu/archives/cat_50050921.html

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          ■『源氏が食べるー平安文学に描かれる食ー』■       

                   第四十五回       

                                  荻田 みどり

  平安期の物語では、薬のことを「湯」「御湯」と表す場合が多い。薬草を煎じた薬湯
 である。重病の折、出産の折、「湯」の服用はその人の生死をも左右する。
  今回は、その「湯」の服用如何をつぶさに描いた手習巻について見てみたい。
  浮舟は、薫と匂宮、二人の男性からの愛を選べず入水を選んだ。しかし、命は長ら
 え倒れているところを横川の僧都(よかわのそうず)に発見される。狐が化けているの
 ではないかなどと気味悪がる弟子たちをなだめ、仏の教えに則りしばらく薬などを飲
 ませて助かるかどうか試そうとする。

   なほこころみに、しばし湯を飲ませなどして助けこころみむ。つひに死なば、言ふ
   限りにあらず。

  横川の僧都は、出先で発病した母尼を一時休ませる場所として、妹尼とともに宇治
 に辿り着いたところだった。僧都の話を聞いた妹尼は、必死に看病する。

   湯とりて、手づからすくひ入れなどするに、ただ弱りに絶え入るやうなりければ、

  妹尼自らが薬湯を浮舟に飲ませるのである。「こころみ」に薬湯を飲ませ、助からな
 ければそれまで、とある程度割り切った考え方の僧都に対し、浮舟に亡き娘の面影を
 重ねる妹尼の必死さには、鬼気迫るものがある。それでも浮舟は弱る一方であり、素
 人の医療行為でかえって悪化させてはいけないと、僧都やその弟子に加持(かじ)を
 頼み、祈らせる。妹尼の世話焼き加減にあきれながらも行った加持の効果で取り憑
 いていた物の怪が去り、浮舟は意識を回復する。
  ここで「湯」は民間療法に近く、加持はプロの医療行為に近い。僧都は介抱する気
 持ちの軽さから「湯」を飲ませようとするが、妹尼は自身のできる限りの介抱として「
 湯」を飲ませる。同じ「湯」ではあるが、意識には大きな差異がある。(つづく)

  
               ■『北野の芸能と茶屋』■           

                   第四十九回            
                                   井上 年和  

   明暦二年(1656)4月14日
   「(前略)北野境内末ノ口裏屋敷ニ先年我等常芝居持来候ニより、此度芝居取立
   仕度義、如先規被為仰付被下候ハヽ、可奉忝存と御訴訟申上候ヘハ、御裏判ニ
   如先規常芝居可取立之旨之御判頂戴仕候(後略)」
                        (『北野天満宮史料 目代記録』)

  末ノ口町(末之口町)は現在の上七軒交差点を少し下がった西側で、今小路通り沿
 いの町名である。荻野家文書『洛外町続町数小名并家数改帳』正徳四年(1714)で
 は家数が18軒、『京都御役所向大概覚書』宝永四年(1707)では、旅籠屋が2軒所
 在すると書かれている。七本松通の東側には清和院という寺院が建つ。

 茂介入道宗悟と言う人物が、奉行所から芝居を公演する許可をもらったが、待ったが
 入って休止している、なんとか再開したいと4月11日に申し出たが、宗悟の書き方が
 悪く、13日に息子の桂蔵院に書き直しを指示して、14日に宗悟が再び持って行った
 のがこの書状である。「裏屋敷」で芝居を興行していたということだが、これは屋敷裏
 の南側畠と言うことである。

 前回の記事でも紹介したが、この頃は公儀から歌舞伎や芝居興行に関して御法度
 が仰せ付けられ、許認可がおりにくくなっていたものと推測される。

 結局、15日には許可が下りて、「末代迄も難有忝奉存候」と宗悟も礼状を書いてい
 る。

 下之森広場の範囲は、東は七本松通、西は御前通、北は今小路通沿いの町屋背面、
 南は中立売通りにまで及び、この中に劇場や水茶屋、更に内野に続く仁和寺街道ま
 で仮設劇場が設けられていたのだ。

 しかし、『北野天満宮史料 目代記録』をみると、この清和院前の畑地は、正徳三年
 (1713)に一条大宮の丸屋長左衛門と小川通上立売上ルの中村七左衛門により開
 発されていく。これは度重なる芸能公演規制により、下之森広場の芸能地としての用
 途が減少したためとも捉えられる。

  それにしても、役所の許認可を得るには、行政組織の配置変えに振り回され、細か
 い文章の体裁や書式で何回も修正を強いられるのは、今も昔も変わらない手続事で
 あるようだ。
                  
   
             ■『やまとのくには言の葉のくに』■          

                   第百一首               
                                   田口 稔恵

   与一、かぶらを取つてつがひ、よつぴいてひやうど放つ。小兵といふぢやう、十二
   束三伏、弓は強し、浦響くほど長鳴りして、あやまたず扇の要ぎは一寸ばかりお
   いて、ひいふつとぞ射切つたる。かぶらは海へ入りければ、扇は空へぞ上がりけ
   る。しばしは虚空にひらめきけるが、春風に一もみ二もみもまれて、海へさつとぞ
   散つたりける。夕日のかかやいたるに、みな紅の扇の日出だしたるが、白波の上
   に漂ひ、浮きぬ沈みぬ揺られければ、沖には平家、ふなばたをたたいて感じたり、
   陸には源氏、えびらをたたいてどよめきけり。

                             (『平家物語』那須与一)

  101回目なので、「100+1」…と考えていて、那須与一の名前を思い出した。与一
 は「余一」つまり那須家の十一男である。今年の大河ドラマは『平家物語』このシーン
 は2月18日の午後6時ごろのこととされているので、いかにもお誂え向きだと思い、長
 文になるが採り上げた。

  所は屋島。源平の闘いも佳境に差し掛かった時である。折から北風が激しい中、平
 家側から扇を舳先に立てた船が源氏の前に現れる。「射てみよ」という意図だと理解
 した源義経は、弓の名手と呼び声の高い与一を召して命を下す。波も高く、船は動揺
 し、扇もひらめいている。与一がし損じれば、源氏の軍勢全体の弓馬の実力を見くび
 られ面目を失うばかりか士気に影響する。陸には源氏が馬を並べ、海には平氏が船
 を並べて与一ひとりに注視している。その壮観。
  与一は、「し損じれば生きて故郷に帰ることはない。私を生きて故郷に迎えようとお
 思いになるなら、どうぞ扇の真ん中に当てさせて下さい」と源氏の守護神・八幡神や
 日光の権現、那須の湯泉明神に祈る。すると風が少し弱まった。

  与一が鏑矢をつがえてから源平両者の賞賛を受けるまで、和漢混淆文の魅力を余
 すところなく披瀝する名文である。「よつぴいて」に見られる音便のルールを逸脱した
 促音の使用、「ひやうど」「ひいふつと」といった擬音、静寂を切り裂いて長鳴りする鏑
 矢の音、赤地に金の日の丸の扇が要を射切られ、一瞬舞い上がった後白い波間に
 落ちる色彩のコントラスト。敵味方を分かたぬ大歓声。その狭間に、大仕事を成し遂
 げた若武者。簡潔かつテンポよく、色、音を美しく対比させた、臨場感溢れる名場面
 である。
 
  その時、与一の心にあったのが、死を覚悟した悲壮感だけだったとは思わない。む
 しろ、弓矢の名手として認められ、名を背負い、命さえかける晴れがましさに身震いし
 たと思う。その、時に粗野とさえ思われるギラギラとした心根こそが、平安末期の武士
 達の真の姿ではなかったか。

          
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       □■[嵯峨野学藝倶楽部] 2月開講講座のお知らせ■□

 詳しくは、http://www.ren-produce.com/sagano/club/をご覧ください。

 ■「茶道教室(水曜日コース)」
  日程:2月15、29日(いずれも、水)
  場所:嵯峨野三壷庵
  時間:10時~19時(ご都合の良い時間にお越しください)
  講師:西村 宗靖・太田 宗達
  ※見学/体験も、随時受付けています。

 ■「茶道教室(土曜日コース)」
  日時:2月18、25日(いずれも、土)
  場所:嵯峨野三壷庵
  時間:10時~19時ご都合の良い時間にお越しください
     (18日のみ、9時~12時、15時~19時)
  講師:西村 宗靖・太田 宗達
  ※見学/体験も、随時受付けています。
 
■「今様・白拍子教室」
  日程:2月18日(土)
  場所:嵯峨野三壷庵
  時間:13時~14時
  講師:石原 さつき
  ※見学/体験も、随時受付けています。
   性別・年齢・経験は問いません。

■「うたことば研究会」
  日程:2月18日(土)
  場所:嵯峨野三壷庵
  時間:15時~16時(60分)
  監修:田口 稔恵
  ※資料代等が必要です。詳細はお問合せください。

 ●URL
  http://www.ren-produce.com/sagano/club/

 お問合せ・お申込みはコチラまで→ sagano@ren-produce.com

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               ■□■ひとこと■□■

  酒粕は、甘酒にしか使用しないものと思っていましたが、先日粕汁というものの
 レシピを入手し、作ってみました。お味噌汁を作る時と同じ具材で、最後に細かく
 ちぎった酒粕を溶かし、醤油で味を調えて完成です。
  寒い夜に体がぽかぽかして、良い感じです。冬の定番になりそうです。

                                (まつだ)

     [次回は、3月1日(木)に配信予定です!次回もお楽しみに。]

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多くの方に有斐斎弘道館の活動を知っていただきたく思っております。
記事が面白かったら是非、シェアいただけると幸いです。