嵯峨野文化通信 第97号

 伝統文化プロデュース【連】メールマガジン 

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              〔嵯峨野文化通信〕 第97号
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         日々の暮らしに「和」の魅力をプラスしてみませんか?

    伝統文化プロデュース【連】は、日本の伝統文化にこめられた知恵と美意識に

          ついて、学び広めていくための活動をしている団体です。

         京都・嵯峨野から、最新の情報を皆さんにお届けします!

               毎月1日・15日(月2回)

                     ★VOL:97(2010/2/15)

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  ○【連】からのお知らせ — 新連載! 『北野の芸能と茶屋』
               老松嵐山店 菓子展のご案内
               「森の部品ー元土御門(モトツチミカド)の森ー」展開催中!
               メルマガ100号へのカウントダウン開始!
  ○(連載)『餅と饅頭ー和漢の境まぎらわす事ー』—— 第十一回
  ○(新連載)『北野の芸能と茶屋』———————- 第一回
  ○(連載)『やまとのくには言の葉のくに』———— 第六十一首
  ○[嵯峨野学藝倶楽部]2月下旬・3月開講講座のお知らせ

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 【連】からのお知らせ
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 ○新連載! 『北野の芸能と茶屋』

  今号から、【連】メンバーで建築家、井上年和の連載『北野の芸能と茶屋』が始まりま
 す! 
  まだまだ謎の多い京都の「北野」を、昔の記事を元に考え、読者の皆さんにもご意見を
 いただこう! という読者参加型の連載です!
  ご意見やご感想など送ってくださると、とてもうれしいです。
 
  また、メルマガ第2号に井上年和の自己紹介が載っていますので、ご覧下さい!
  メルマガ第2号はコチラから。
   http://archive.mag2.com/0000185716/20060301180516000.html

 ○老松嵐山店 菓子展のご案内

  前号、メルマガ96号でもご案内いたしましたが、【連】の活動に協力いただいている
 老松嵐山店のスタッフが「イラスト」をモチーフにした菓子展を企画されました。
  イラストを得意とするスタッフが、イラストと京菓子の対話を表現します。
  サブカルチャーと京菓子の出会い、ともいえる意欲的な企画です。
  お菓子の新しい世界を、ぜひ体感してみて下さい!!

 「心を造るアートギャラリー -伝えるイラスト 答える和菓子-」
 日程:2月17、20、21日(3日間)
 時間:10時~16時30分
 場所:老松嵐山店2階(右京区嵯峨天龍寺芒ノ馬場町20)
 アクセス:嵐電「嵐山」駅下車、徒歩5分
      JR「嵯峨嵐山」駅下車、徒歩10分
 入場料:500円(抹茶・菓子付)
 問合せ:075-881-9033(老松嵐山店・担当塩貝)

 ○「森の部品-元土御門(モトツチミカド)の森-」展開催中!

  先月1月24日、25日に弘道館で行われたプレオープンイベント「北尾博史 森の部
 品ー元土御門の森」の本イベントが、2月11日より開催されております!
 「シリーズ菓子とアート ’初っぱな’」と銘打たれたこの展覧会は、アート作品と京菓
 子の絶妙なコラボレーションです。
  モトツチミカドの地に出現する森を感じ、菓子も愉しめる目にも舌のもおいしいイベン
 トです! ぜひお立ち寄り下さい!!

 「シリーズ菓子とアート ’初っぱな’ 北尾博史 森の部品ー元土御門の森」
 日程:2月11日(木)~21日(日) ※会期中は無休
 時間:12時~18時
 費用:無料 (別途1000円で菓子と薄茶をお楽しみいただけます。是非どうぞ!)
 場所:弘道館(京都市上京区上長者町通新町東入ル元土御門町524-1)
 
 弘道館HPはコチラ
 http://kodo-kan.com/index.html

 ○メルマガ100号へのカウントダウン開始!

  ありがたいことに、もうすぐ「嵯峨野文化通信」は100号を迎えます!!
  この機会に、編集者一同、メルマガ読者の方に楽しんでいただけるような100号記念
 企画ができないかと考えております。どういった企画が掲載されるかは、100号を迎え
 てからのお楽しみ!
  また、お時間おありの方は創刊当時のメルマガを読み返してみてください。日本文化に
 関する、新たな発見があること請け合いです!
  それでは皆さん、心待ちにしていて下さいね。

 メルマガ創刊号はコチラ 
 http://archive.mag2.com/0000185716/20060220160500000.html

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                  (連載)『餅と饅頭ー和漢の境まぎらわす事ー』
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                第十一回 

                                    太田 達

  このように、生物学的に生産性が低く、技術的にも作業効率が悪いと考えられる「モチ
 性」の形質が、なぜ現代まで伝えられることになったのであろうか?
  ヒトは、「食物」を摂取しなければ生きる事はできない。また、多くの草食動物のよう
 に、草などの植物にふくまれる澱粉をエネルギーに変換することができない。穀物と呼ば
 れる「麦」「米」「トウモロコシ」「豆類」などの野生種を飼いならす事、野生植物の栽
 培、これは、1万5千年前の長江流域の米の栽培に起源をおくとする説が現在有力視され
 ている。この事は、ヒトのエネルギー源の総量の飛躍的な増加を意味している。

  狩猟採集生活に於ける、生産性の低い食物自給を基盤とする小さな家族単位の生活、特
 に1万年前の最後の氷河期に直面し採集生活の危機に面したヒトにとって穀物の栽培は、
 多くの喜びをもたらした。そのひとつが「食味」であろう。味という概念で食物を選ぶこ
 とが始まったわけである。「モチモチとしておいしいね」という素朴であるが、実は、贅
 沢にも食感をもとめる、原初的ではあるが、グルメな生活がここに始まったともいえよう。

  現在、糯米(もちごめ)を栽培している国は以下の通りである。日本、北朝鮮、韓国、
 中国(雲南省)、台湾、フィリピン、インドネシア、タイ、ラオス、ベトナム、ミャンマ
 ー、インド(ナガランド)。この中でも、タイの東北部(イーサン)やラオスでは、糯米
 が主食であり、ラオスでは、米の全生産量の85%以上が糯米とされる。これらの、モチ
 モチ感を至上とする国々は、照葉樹林帯(laurel forest)というエリアと重なっている。
 ヒマラヤ山麓高度1500~2500メートルのネパールの東部地域からシッキム、ダー
 ジリン、アッサム、の地域を経て、ミャンマー北部から、東南アジア北部山地~雲南高地
 ~江南山地、朝鮮半島南部から西日本に達する一帯を照葉樹林帯と呼び、この「東亜半月
 弧」に集中する類似性の高い様々な文化を総称している。落葉する時期がない常緑広葉樹、
 例えばツバキ、モチ、サザンカ、また落葉はするが、たっぷり肉厚の葉をもつカシ、シイ、
 クス、ナラ。これらは、共通した熱帯及び温帯モンスーンの気候のなかで、多量の光合成
 による葉の表皮のクチクルの発達がよいために葉は、光沢があり深緑色である。

  ここで、菓子の始まりの神話、「菓祖神田道間守」を思い出して頂きたい。不老長寿の
 望みは、シンボライズされた橘=非時香果というストーリーを構築し、照葉樹の杜に、あ
 るいは、日本人の先祖の杜、縄文の杜にその可能性をみつけた神話ともいえる。このこと
 は、中尾佐助や、佐々木高明らにより唱えられ(まさにこの時代に生きてきた私にとって
 彼等の著作『栽培植物と農耕の起源』1969年 岩波新書、『稲作以前』1971年 
 日本放送出版は青春のバイブルであった)1970年代から20世紀末くらいまで「日本
 人は」的な文化論の基幹を為し、「もののけ姫」のブームをおこした「照葉樹林文化論」
 の根底に「常世思想」が存在している。

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                         (新連載)『北野の芸能と茶屋』
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                    第一回 

                                    井上年和

  北野の芸能や茶屋に関しては、これまで阿国の歌舞伎や下之森の芸能等の江戸時代のこ
 とや、現代の町並み・歴史的な環境についての研究がありますが、まだまだ未開拓な部分
 が多いようです。
  そこで、茶屋建築に関しては多少知っていても、文献史料に関しては素人の私が、誰に
 も頼まれてないのに勝手にいろいろ調べてしまったので、判らないところだらけのことを
 みんなで考えてもらって教えて欲しいという自己中心的な企画を思いつきました。

  「京都歴史講座」の中村先生に教えていただいた、「読み下し」を、時間も手間も省い
 てメルマガでやろうというおさぼりな発想です。
  毎回、昔の記事を掲載し、コメントを加えます。
 「これは違う。」「これはこう思う。」等のご意見をたくさん送って下さい。

  明応元年(1492)9月6日

  一、今夕茶屋松木引寄也「北野社家日記」

  北野天満宮史料で、「茶屋」に関する記事が最初に掲載されるのは、延徳2年(149
 0)4月10日で、北野社閉籠土一揆衆二名が御千茶屋・玉酒屋前で死亡していたことを
 伝えるものである。同年の3月21日には、閉籠土一揆衆による放下により、宮内で29
 人、玉蔵前で1人、イネ前で1人の死者、「サキミエ候分」31人の被害を出した。

  また、翌年の延徳3年(1491)3月21日、6月1日にも社頭が炎上しており、こ
 の頃の北野社は酒麹株を巡って、不安定な状況であった。
  しかし、炎上が続いたことから、常に修復のための建築普請が行われていたと考えられ
 る。

  明応元年と言えば、普請が一段落付いた頃であろうと考えられるが、普請の内容が伺え
 る記事はない。
  では、何故この時期に茶屋が北野社から松の木を引き寄せたか?
  建築用木材なのか、生きた木なのか?
  この松の木が、七軒茶屋を建てるための残木なのか?

  興味が尽きない記事である。

  ☆ご意見、ご感想はコチラまで☆
   伝統文化プロデュース【連】
   メール:info@ren-produce.com

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                     (連載)『やまとのくには言の葉のくに』
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                  第六十一首

                                   田口 稔恵

  薄く濃き野辺の緑の若草に跡まで見ゆる雪のむら消え
  (宮内卿 『新古今集』春上)

 (あるところは薄く、またあるところは濃く生えている野辺の若草。その濃淡によって、
 雪がまだらに消えた、早さの違いのあとまで、はっきりと見えることよ。)

  鮮やかな色彩感覚に、若草を通して雪融けの遅速を見るという技巧、体言止め。新古今
 の代表的な歌風を持つ。

  作者である宮内卿は、以前、藤原俊成女(むすめ)とともに、新古今時代を代表する女
 流歌人として紹介した。後の時代の同名歌人と区別するため、「後鳥羽院宮内卿」と称さ
 れることもあるが、千五百番歌合に出詠したこの名歌により「若草の宮内卿」という名の
 ほうが通っている。

  兄・源具親も、後鳥羽院政下で活躍した歌人で、和歌所の寄人になっているが、鴨長明
 の『無名抄』には、当代きっての歌人であった寂蓮法師が、「具親も、妹くらい熱心に歌
 道を勉強すればいいのに」と嘆いたというエピソードがある。

  古来から当代の名歌をじっくり見たあと、おもむろに歌を詠出する、というスタイルの
 俊成女に対し、受験前の高校生のごときガリ勉スタイルで一心に詠出する宮内卿には、生
 き急ぎの感がある。

  「若草の宮内卿」という、妙齢の女性にふさわしい、歌人として名誉ある通り名をもら
 いながら、その名とはうらはらに若くして逝ってしまったことに、哀れを誘われる。しか
 し、萌え出でたばかりの若草の緑のやわらかさ、雪の白さ、嵩を増したせせらぎの音、微
 かに匂う土の黒さ・・・そんな、抽象化された「春」をこれほどまで印象的に三十一音に
 遺した彼女の、歌人としての栄誉は永遠のものである。

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 ◆[嵯峨野学藝倶楽部] 2月下旬・3月開講講座のお知らせ ◆
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 詳しくは、http://www.ren-produce.com/sagano/club/をご覧下さい。

 ★「茶道教室(土曜日コース)」
  日程:2月20日、3月6日、13日、27日(いずれも、土)
  時間:15時~20時(ご都合の良い時間にお越し下さい)
  講師:西村 宗靖・太田 宗達
  ※見学/体験も、随時受付けています。

 ★「茶道教室(水曜日コース)」
  日程:2月24日、3月3日、3月17日(いずれも、水)
  時間:13時~18時(ご都合の良い時間にお越し下さい)
  講師:西村 宗靖・太田 宗達
  ※見学/体験も、随時受付けています。

 ★「うたことば研究会」
  日程:2月27日(土)
  時間:10時~11時(60分)
  監修:田口 稔恵
  ※資料代等が必要です。詳細はお問合せ下さい。

 ★「今様・白拍子教室」
  日程:2月27日、3月13日、27日(いずれも、土)
  時間:13時~14時(60分)
  講師:石原 さつき
  ※見学/体験も、随時受付けています。
   性別・年齢・経験は問いません。

 ★「京文化を語ろう」
  日程:3月13日(土)
  時間:11時~12時30分(90分)
  講師:太田 達
  テーマ:「宗教から京都を考える~稲荷~」
  参加費:1回1,000円(茶菓子付)
  ※1回のみの参加も、随時受付けています。

 ★「京都歴史講座」
  日程:3月21日(日)
  時間:11時~12時30分(90分)
  講師:中村 武生
  テーマ:「京都の実業家たちも史蹟碑を建てていた-京都史蹟会の建碑」
  参加費:1回 1,000円 (茶菓子付)
  ※1回のみの参加も、随時受付けています。

 ●URL
  http://www.ren-produce.com/sagano/club/

 お問合せ・お申込みはコチラまで→ sagano@ren-produce.com

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  暖かい日が続きますね。もう梅も咲き始めたとか・・。段々と春に近づいている気が
 します。
  そろそろ春物の服を準備しようと思います。桜が咲く頃には就職先が決まっているこ
 とを願いつつ・・(編集者は今就職活動の真っ只中なのです)。

                                (まつだ)

     [次回は、3月1日(月)に配信予定です!次回もお楽しみに。]

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多くの方に有斐斎弘道館の活動を知っていただきたく思っております。
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