嵯峨野文化通信 第79号

 伝統文化プロデュース【連】メールマガジン 
 
 ☆★—–━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━—☆★☆
              〔嵯峨野文化通信〕 第79号
 ★☆★—━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━—–☆★

         日々の暮らしに「和」の魅力をプラスしてみませんか?

    伝統文化プロデュース【連】は、日本の伝統文化にこめられた知恵と美意識に

          ついて、学び広めていくための活動をしている団体です。

         京都・嵯峨野から、最新の情報を皆さんにお届けします!

               毎月1日・15日(月2回)

    ★VOL:79(2009/5/15)
 
 ━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━
 ┏━┓┏━┓┏━┓
 ┃も┃┃く┃┃じ┃
 ┗━┛┗━┛┗━┛

 ○【連】からのお知らせ ————— 平安の船遊びを再現、三船祭開催!
                   京の花街を近くに感じる、魅力的な夕べ
 ○(連載)『丹後と京都』———————– 第十回
  ○(連載)『やまとのくには言の葉のくに』——- 第四十四首
  ○[嵯峨野学藝倶楽部]5月中旬〜6月上旬開講講座のお知らせ

 ━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━

 ━━━━━━━━━━
 【連】からのお知らせ
 ━━━━━━━━━━

 ○平安の船遊びを再現、三船祭開催!

  今年も5月17日に、三船祭が開催されます!
  この祭は車折神社の神事であり、毎年5月の第3日曜日に、嵐山の大堰川にて開催され
 ます。当日は御座船・龍頭船・鷁首船など、いずれも平安時代の舟遊びを模したきらびや
 かな船が20数隻浮かべられ、川面を彩ります!
  嵯峨野学藝倶楽部からも、今様教室のメンバーが参加いたします。平安時代の公達、白
 拍子が即興で今様を舞い詠う光景はまるで絵巻のようです。
  しばし時を忘れて、平安の昔にタイムスリップしてみませんか?

  日程:5月17日(日)
  時間:正午12時  車折神社にてお出ましの式
       14時頃 ご船遊のはじまり(約2時間船遊いたします)
  場所:嵐山 大堰川(市バス「嵐山駅」下車すぐ、または、京福電車「嵐山駅」下車後、
            南へ約15分)

  ※河岸からご自由にご覧いただけます。
  ※雨天決行ですが、その場合神社から大堰川までの行列は中止となります。

  三船祭の詳しい様子は下記をご覧ください。
  車折神社HP
   http://www.kurumazakijinja.or.jp/mifunemathuri.html

 ○京の花街を近くに感じる、魅力的な夕べ

  以前出版のご案内をさせていただいた花街本『京の花街 ひと・わざ・まち』の刊行を
 記念して、東京の紀伊国屋書店において「京の花街にあそぶ」と題したセミナーを開催す
 ることになりました!
  【連】代表の濱崎加奈子と同メンバーである井上えり子、太田達が講演します。
 去年、上七軒で開催した「花街文化シンポジウム」を踏まえ、花街の魅力をさまざまな角
 度から照らし、その魅力を語ります。また、当日、会場で『京の花街 ひと・わざ・まち』
 をお買い上げいただいた先着50名の方は、上七軒の舞妓、市照(いちてる)さんと記念
 写真を撮ることができる特典があります!
  魅力的な花街の世界を、少しのぞいてみませんか?

  日程:6月8日(月)
  時間:17時45分開場、18時30分開演
  場所:新宿・紀伊国屋サザンシアター(紀伊国屋書店 新宿南店7階)

  テーマ「京の花街にあそぶ」
   第一部 舞妓さんとあそぶ
        講師:上七軒 市照・太田達・濱崎加奈子・井上えり子
   第二部 花街を訪ねて
       *花街をあるく 
         講師:井上えり子
       *花街のいま昔
         講師:太田達

   費用:1,000円(全席自由、税込)
   前売:キノチケットカウンター(新宿本店5階)
      紀伊国屋サザンシアター(新宿南店7階)
      ※いずれも10時〜18時30分までの受付です。

  ※撮影会参加ご希望の方は、必ずカメラをご持参下さい。携帯カメラもご使用いただ
   けます。

  お問合せは下記まで
    紀伊国屋サザンシアター(10時〜18時30分まで)
     03−5361−3321

  『京の花街 ひと・わざ・まち』
  本書は、昨年、京都創生シンポジウムの一環として協力開催した「花街文化シンポジウ
 ム」の内容を発展的にまとめたものです。花街について総合的に描いた初めての書として、
 今後の花街研究の礎になる書といえるでしょう。お求めは、全国有名書店または日本評論
 社(FAX03−3987−8590)まで。【連】から直接お申し込みいただくことも
 できます。
  http://ren-produce.com/book/kagai.html

  『京の花街 ひと・わざ・まち』
   編集:太田達・平竹耕三
   著者:平竹耕三・太田達・濱崎加奈子・井上えり子・上林研二
   出版元:日本評論社
   定価:1,995円(税込)

                              ━━━━━━━━━━━
                              (連載)『丹後と京都』
                              ━━━━━━━━━━━
 
                第十回「永禄八年五月十九日」               
                                    太田 達

  本年、葵祭の流鏑馬神事において、長官代に補任された。これは、奈良時代に定められ
 た令外の近衛府の長官の代理という意味である。従三位以上の官職であるからして、上半
 身だけで六枚も纏わしてもらえる。しかし、終戦とともに、位階制度は廃止されており、
 当然ながら私も叙位していないので、5月3日の私は長官ではなく、長官代なのである。
 斎王代についても、本来は、内親王であるべきなのだが、現在京都にそんな女性はいない
 から斎王「代」となる。ところで、昭和39年にこの「叙位」が復活している事をご存知
 ですか? 議員など長く公職につくと、内閣総理大臣名で叙位した上で、その証明書を発
 行してくれるそうです。凄いですね、聖徳太子の時代のシステムとステータスがいまだに
 通用する日本。 
  さて、いよいよ、本題に。

  前回、丹後国守護「一色氏」についてふれた。永禄7年(1564)3月、13代将軍
 ・足利義輝は、一色氏を出自とする剣聖・上泉伊勢守に新陰流の奥義を受けたことが、山
 科家の日記などから知る事ができる。それらの書物には、近江守護の六角義賢や伊勢の北
 畠具教からのつてにより、義輝は多くの兵法者や剣豪に学んだ事績が残っている。頼朝か
 らはじまる鎌倉、室町、江戸徳川の40人ほどの将軍たちの中で、彼ほど、その職「将軍」
 が、武門の棟梁であることを意識した人物はいなかったのではなかろうかと思う。あの、
 塚原卜伝から、奥義「一の太刀」を伝授されたという記録もある。

  ところで、足利将軍家は、9代の義尚以降、京都で死ぬことができた者はいない。
  たとえば、13代・義輝の父、12代・義晴も京都に帰還を果たせず、近江坂本の穴太
 で無念の最後をとげた。大永7年(1527)、桂川で、将軍・義晴、管領・細川高国が
 丹波国人・柳本と阿波国衆・三好元長との連合軍にやぶれ、近江坂本に逃亡して以来、管
 領家の細川晴元や政所執事の伊勢貞孝、河内の守護代木沢長政、近江守護・六角義賢、相
 伴衆となった元長の子・三好長慶、その親族の三人衆、また、その家来で幕府御供衆とな
 った松永久秀、摂津の国人大名やら、本願寺、法華衆徒までもが、京で入り乱れる時代に
 突入した。それでも、天文18年(1549)の長慶の入京以来、一応長慶を頂点にした
 都の安定が10年ばかり続く。長慶時代の後半、表むき、長慶と手をむすんだ義輝は、将
 軍権威の復活を試みながら、和睦後も、その将軍権威の力の裏付けとなる軍事力で助けて
 くれる長慶の暗殺を試みるなど、矛盾と欺瞞に満ちた数年の後に、今日のその日を迎える
 事に成るわけであります(NHKの松平アナさん風にどうぞ)。心労のためか、河内飯盛
 山の城で長慶が死ぬと、傀儡将軍しか認めない松永久秀と三人衆は、将軍・義輝の誅殺を
 決行する。三好長逸は智恩寺に、三好義継は革堂に、久秀の子・松永久通は相国寺に参拝
 を装い、止宿。永禄8年(1565)5月19日の朝、辰の刻(午前8時頃)に突如、義
 輝の二条邸(今の平安女学院あたり)を取り囲み、乱入した。将軍・義輝側は、僅かな奉
 公衆のみである。が、脱出の機会はあったろうに、逆に、剣聖将軍・義輝は、近衆を落と
 し、辞世をよみ、庭に下りて、次々に所蔵の名刀の数々を抜き身で地面に突き刺してゆく。
 三尺九寸の正宗の大太刀、反りもあざやかな信国、天下の業物・伊賀守金道など、十数振
 りを自分の廻りに円形に突き立てた。「さあさあ」と、声をかけつつ、寄せる軍勢を切り
 まくった、およそ三時間もの長き時間、獅子奮迅の働きをしつつ、矢をいかけられ、弁慶
 の如く往生したと伝えられている。義輝の桂川原の戦いと同様の発端がある、嘉吉の変で
 誅殺された六代・義教。この時、赤松満祐は、何の落ち度もない一色義貫が、義教に暗殺
 されるのをみて、義教を攻める事を思い立ったという。逃げ延びる事も出来たであろうに、
 一色氏の子孫・上泉伊勢守に剣技を褒められたが為に、あえて戦いの道を撰んだ義輝に因
 縁を感じる。最後に義輝の辞世で締めくくりたい。彼の誇り高き野望と現実のむなしさが
 伝わる事であろう。
  「五月雨は 霞か涙か 不如帰 我が名をあげよ 雲の上まで」
  (「その時歴史は動いた」のエンディング曲を想像して読んで下さい)

                      ━━━━━━━━━━━━━━━━━━━
                      (連載)『やまとのくには言の葉のくに』
                      ━━━━━━━━━━━━━━━━━━━

                  第四十四首                  
                                   田口 稔恵

  夏の野の繁みに咲けるひめゆりの知らえぬ恋は苦しきものそ
  (大伴坂上郎女 『万葉集』巻8)

  (夏の野の繁みに咲いているひめゆりのように、相手に知られぬ恋は苦しいものだ。)

  上の句が「知らえぬ恋」の序詞になっていることが分かれば、訳も解釈も簡単な歌であ
 る。それだけに、古今時代の技巧、新古今時代の抽象化に馴染んだ者には、やや説明的で
 物足りなさを覚えるかもしれない。

  大伴坂上郎女は、万葉集の編纂に大きく関与したと考えられる大伴家持の父・旅人の異
 母妹である。遊技的要素があるものも含め、恋愛を詠んだ歌を多く残し、万葉集において
 額田王以来最高の女流歌人と言われるが、大伴氏の刀自(主婦)として、大伴の一族を統
 率する、大黒柱の能力も高かったようだ。
 
  この季節が巡ってくると、なぜか万葉集の歌を引きたくなる。瑞々しく初心な、どこか
 言葉足らずの力強い旋律が、この青葉の繁り始める季節に呼応するのだろうか。「万緑草
 中」の「紅一点」を主張するのでなく、身を潜める苦しさを歌う。万葉仮名という漢字表
 記を借りながらも、世界観は日本独自のものに深化されつつある気配を感じる。
  今年、ひめゆり部隊の自決したとされる場所で、女学生のものと思われる校章入りのバ
 ッヂが発見されたという。戦後の六十余年、人知れず沖縄の浜辺で身を潜めていた、ひめ
 ゆりの紋章入りのバッヂのことを思った。

 ━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━
 ◆[嵯峨野学藝倶楽部] 5月中旬〜6月上旬開講講座のお知らせ ◆
 ━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━

 詳しくは、http://www.ren-produce.com/sagano/club/をご覧下さい。

 ★「今様・白拍子教室」
  日程:5月16日、6月6日(いずれも土曜)
    ※5月30日の稽古は、熊野参詣ツアーのため変更になります。
  時間:13時〜14時(60分)
  講師:石原 さつき
  ※見学/体験も、随時受付けています。
   性別・年齢・経験は問いません。

 ★「京都歴史講座」
  日程:5月17日(日)
  時間:11時〜12時30分(90分)
  講師:中村 武生
  テーマ:「乙訓郡の旧蹟」
  参加費:1回 1,000円 (茶菓子付)
  ※1回のみの参加も、受付けています。

 ★「茶道教室(土曜日コース)」
  日程:5月23日、30日、6月13日(いずれも土曜)
    ※5月16日の稽古は、5月9日に変更になりました。
  時間:15時〜20時(ご都合の良い時間にお越し下さい)
  講師:西村 宗靖・太田 宗達
  ※見学/体験も、受付けています

 ★「茶道教室(水曜日コース)」
  日程:5月27日、6月10日(いずれも水曜)
  時間:13時〜18時(ご都合の良い時間にお越し下さい)
  講師:西村 宗靖・太田 宗達
  ※見学/体験も、受付けています。
 
 ★「うたことば研究会」
  日程:5月30日(土曜)
  時間:14時〜15時30分(90分)
  監修:田口 稔恵
  ※資料代等が必要です。詳細はお問合せ下さい。

 ★「京文化を語ろう」
日程:6月13日(土曜)
時間:11時〜12時30分(90分)
  講師:太田 達
テーマ:「丹後からみる京都」
参加費:1回1,000円(茶菓子付)
  ※1回のみの参加も、受付けています。

 ●URL
  http://www.ren-produce.com/sagano/club/
 
お問合せ・お申込みはコチラまで→sagano@ren-produce.com

 ┌─┐┌─┐┌─┐┌─┐
 │ひ││と││こ││と│
 └─┘└─┘└─┘└─┘
  昨年、大学の講義で宴会学というのを学びました。最近、新しく始めたバイトの関係で
 宴会を見る機会があり、「なるほどこれが宴会か」と思いつつ観察しているのですが、見
 ていて一番面白いのは教師の宴会ですね。歓送迎会で無礼講になったとき人はどこに集中
 するのか、どんなイベントを用意しているのかなど、学校によって、また地域によってそ
 れぞれ慣習があるようで、それを見ているとどんなコミュニティーが形成されているのか
 が窺えて面白いのです。
  近年は不況もあり、宴会が減ってきたといいますが、よいコミュニティーの形成のため
 にもどんどん宴会をしてほしいな、と思いました。
                                 (きしもと)

     [次回は、6月1日(金)に配信予定です!次回もお楽しみに。]
 
 ================================================================================

 

多くの方に有斐斎弘道館の活動を知っていただきたく思っております。
記事が面白かったら是非、シェアいただけると幸いです。