嵯峨野文化通信 第60号

 伝統文化プロデュース【連】メールマガジン
 
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              〔嵯峨野文化通信〕 第60号
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         日々の暮らしに「和」の魅力をプラスしてみませんか?

    伝統文化プロデュース【連】は、日本の伝統文化にこめられた知恵と美意識に
          ついて、学び広めていくための活動をしている団体です。

         京都・嵯峨野から、最新の情報を皆さんにお届けします!
               毎月1日・15日(月2回)

 ★VOL:60 (2008/8/1)
 
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 ┃も┃┃く┃┃じ┃
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 ○【連】からのお知らせ——————– 浴衣の日」について
                       『ウエッジ』8月号に【連】が掲載
  ○(連載)『丹後の謎』——————– 第二回
  ○(連載)『ニッポン城郭物語』———— 第三十一幕〜備後福山城の話〜
  ○(連載)『伝統文化と私』—————- 第二回
  ○(連載)『やまとのくには言の葉のくに』– 第二十九首
  ○【連】活動報告————————– 嵯峨野小学校茶道1日教室
                  作陶体験
  ○[嵯峨野学藝倶楽部]8月開講講座のお知らせ

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 【連】からのお知らせ
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 ○「浴衣の日」について

  毎日暑い日が続きますね。【連】では、「みんなで浴衣を着て涼しく過ごそう!」と
 いうことで、「浴衣の日」を企画しました。
  浴衣が好き! という方、着てみたいけど持ってないし・・・という方、お気軽にご
 参加ください!

  日時:8月9日(土) 講座<京文化を語ろう>「信仰」、茶道教室
     9月6日(土) 今様・白拍子教室、茶道教室
  会場:三壷庵
  内容:浴衣姿で嵯峨野学藝倶楽部の講座を受講する
  参加費:無料(講座に出られる場合は、各講座の受講料が必要です)

 ※ 浴衣で会場にお越しください。
    浴衣をお持ちでない方で、希望される方はお貸しします。(事前申込要)
    当日の着付けも可能です。「私も着付けができるよ」という方、是非お手伝いを
    お願いします!

  普段着での参加も勿論可能です!

  お問い合わせは
  伝統文化プロデュース連 info@ren-produce.com まで!

○ 新幹線『ウエッジ』8月号に【連】が掲載されました!

  『ウエッジ』は、新幹線グリーン車に搭載される月刊車内誌です。前号でお知らせしま
 したように7月20日発売になる8月号に、【連】が取り上げられました。「日本をつな
 ぐ〜生きた伝統に触れ古人の知恵を感じる〜」の項をご覧下さい。
  茶道の「心」から型、そして宴会まで、その「心」を中心に、様々な視点から伝統文化
 をとらえた記事になっています。
  皆様もぜひ読んでみてください!グリーン車に乗らなくても、駅の売店でも購入できま
 す。
  
   ◆ウエッジのHPはこちら。
    https://www.wedge.co.jp/
 
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                             (連載)『丹後の謎』
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                  第二回 
                                   太田 達

  昨年の京都府の資料によると、丹後区域は、宮津市、京丹後市、与謝野町、伊根町の
 2市2町で構成されており、人口はおよそ11.2万人。主産業は、農業、漁業、絹織
 物、観光といったところか。ブランドである間人(たいざ)の蟹と天橋立以外は、その
 基盤は弱い。かつての丹後の産業をリードした「丹後ちりめん」も昭和50年あたりを
 境に衰退の一途をたどっている。
  昭和56年から2年間、私は京都の丸紅に在籍していた。丸紅と云う会社は、近江の
 五個荘において伊藤忠兵衞により創始され、近江商人の代表的な商法であった「戻り天
 秤」、つまり、出羽あたりの紅花と近江の真綿や上布の交易で財をなした。
  四条烏丸にあった8階建ての京都店は、全社のメモリアルとしての役割の為に存在し
 ていた。そのころ、すでに呉服業界に斜陽のきざしはあったものの、毎日夜遅くまで皆
 残業し、出荷のトラックが列をなしていた事がなつかしい。その運送便の社名の中に、
 峰山を中心としたエリアを行き来する小口の飛脚便が多い事に驚いた記憶がある。丹後
 ちりめんと荷台に大書したトラックである。
  私は当時、丸紅ビル3階の和装織物課に在籍しており、扱う商品は綿反(ゆかた)合
 繊、モスリン、ウールなどの大量販売の大衆品であり、4階や5階の絹無地課や、小紋
 付け下げの高級品担当の人たちがうらやましかった。呉服商社は上階に行けば行く程、
 高級になる傾向があり、社員もフロアーごとにランキングされている気がした。現在、
 四条烏丸の丸紅ビルは「COCON」というショッピングやレストランの複合ビルに様
 変わりしている。私は3階の低層階にいたおかげで、今やバイキングレストランのドリ
 ンクバーと化した自分のデスクをいつでも見る事が出来る。
  「高級品丹後ちりめん」への八つ当たりはこのへんにして、当時 日本の製造業は、
 「コスト削減」の旗印のもと、モノつくりの拠点を海外、とくに中国に移しはじめてい
 た。その風潮のまっただ中、大衆品の私たちの課では、中国製造の丹後ちりめんという、
 とんでもないものを企画した。中国で安価に織り上げ、丹後に陸揚げして、整理加工し
 て「丹後ちりめん」の判を押す。確か、それを3000円くらいの染価で小紋に仕立て、
 仲間売りで15000円の下代で売っていたと思う。爆発的ヒットである。斯様なもの
 が出回ること自体、昨今のルイ・ヴィトンと同様なブランド力の賜物である。
  ちりめんには、丹後の地と京都を結び、多くの人々が行き来した歴史がある。天平
 11年(739)、竹野郡鳥取郷から朝貢された「あしぎぬ」六丈一疋が今も正倉院に
 残っている。室町期の『庭訓往来』には、「精好織」の高級袴地の記述がある。享保年
 間(1716〜36)、観音の霊夢により、西陣の織屋に奉公に出た、峰山の絹屋佐平
 治は、西陣の「お召しちりめん」の秘密を探り出し、より高い「シボ」のある「丹後ち
 りめん」 を完成させた。

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                          (連載)『ニッポン城郭物語』
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              ―第三十一幕―  〜備後福山城の話〜
                                   梅原 和久

  備後福山城は、大河ドラマ「篤姫」では草刈政雄が演じた、ペリー来航時の幕政を担っ
 た老中阿部政弘の居城である。武家諸法度によって新たな築城が禁じられていた時代に、
 西国の有力外様大名の押さえとして特別に築かれたほど、幕府にとって重要な城であった
 ために、築城時には伏見城から建物を移築させたほか、資金の下賜や腕利きの大工や職人
 を派遣するなど、幕府による強力な支援を受けて築かれた城でもあった。
  天守は沢山の破風で飾られた五層の華やかなもの。ただ、防御が手薄な北面は鉄板貼り
 であり、他の三方から見たときには白亜の天守でありながら、北から見ると真っ黒という
 他に類を見ないものであった。この天守以外にも伏見城由来の櫓や御殿の一部が明治以後
 もよく残り、国宝に指定されていた。
  そんな中国地方有数の名城も、明治以降の開発は防ぐことができなかった。二重に城を
 囲んでいた堀は全て埋められて宅地化され、更には前回取り上げた三原城と同様に、鉄道
 が城内を貫通し駅が設置された。そして終戦1週間前の昭和20年(1945)8月8日
 には、米軍の空襲により、この貴重な城も伏見櫓と筋金御門を残して、全て灰燼に帰して
 しまったのである。

  昭和41年(1966)、福山市制50周年の記念事業として天守や月見櫓などが復興
 (※1)されるが、この城はその後でさえテニスコートや駐車場の造成、歩道整備など、
 市の開発に伴う遺構破壊が続いた。文化財保護の意識が高まり、遺跡を活かしたまちづく
 りなどが各地で行われている平成の世でさえも、例えば3年前にはマンション建設に伴っ
 て、石垣が撤去されている。
  そんな(どんな?)福山市は現在、8月10日投票の市長選のまっただ中である。その
 最大の争点となろうとしているのが、実は2つの歴史的遺構の保存問題なのだ。一つは、
 景勝地として有名な鞆の浦の埋め立て架橋問題(※2)。城の話から離れるので詳細は省
 くが、国際機関も含む各界からの相次ぐ計画見直し要請も何のその、現市長が事業推進に
 邁進している、というもの。そしてもう一つが、この福山城である。
  
  福山駅前整備に伴う発掘調査によって、大規模な外堀遺構が掘り出されたのが平成18
 年(2006)8月。「海城」福山城の表玄関ともい言える、城と海を結ぶ舟入状遺構は、
 全国的に見ても残存例の少ない貴重なものである。しかし、市の計画は、あくまで地下に
 送迎場を新設する、というもので、遺構の大半は壊されることになっていた。これには市
 民や研究者による反対運動が起こり、果ては文化庁からも市への抗議が行われた。文化庁
 と福山市・広島県との協議の記録については、市民団体「福山駅前水辺公園プロジェクト」
 が情報公開請求したのだが、これに対して市が公開したのが全くの黒塗り文書(※3)。
 こういったやりとりが更に反対運動を加速させ、ついには12万を超える反対署名の力も
 あって、「地下送迎場を南にずらし、遺構を地下で保存・展示する」という折衷案が、つ
 い先日の7月17日に市から公表され、一応決着を見ることとなった。「まちづくり」を
 どのような理念で進めていくか、というのは難しい問題ではあるが、ひとまず保存が決ま
 ったことを喜ぶべきなのだろう。

 (※1)昭和まで残っていただけあって古写真等の資料が多く残っていたにもかかわらず
  戦災焼失した天守の中でも最も不正確な姿での再建だと言われている。最大の特徴であ
  った鉄板貼りは再現されず、また窓の位置なども相当異なっている。

 (※2)このページが参考になる。 http://tomo.mook.to/

 (※3)黒塗りで公開された文書を、「福山駅前水辺公園プロジェクト」が別ルートから
  入手したもの。文化庁から「過去にあった最悪のケース」「石垣を壊して工事をする時
  代じゃない」「このままいくと、市の信用を失う」といった辛辣な言葉が並ぶ、刺激的
  な内容である。  http://www.sannomaru.com/ishigaki/info/bunkacho_kyogi.pdf
  市民団体のHPはこちら。 http://www.sannomaru.com/ishigaki/

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                           (連載)『伝統文化と私』
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  前号から、私たちの身近なものから伝統文化に迫っていこう!ということで『伝統文
 化と私』と題した新連載を開始しました。専門的な知識からだけでなく、日常的な感覚
 からアプローチしていく。
  どんな文化が見えてくるのでしょうか。今回は、「きっかけと今」と題して、伝統文
 化に関わるようになったきっかけを書いてみました。
  2番手も編集者です。よろしくお願いします!

                きっかけと今
                                   岸本 あすな

  伝統文化に本格的に関わったのは、高校3年の夏、二条城での今様歌合に歌人として出
 た瞬間からだと思う。それ以前から、周りの友達も出ていて、その写真を見せてもらった
 り、話を聞いたりしてうらやましく思っていた。
  話をもらったときは本当にうれしかった。ついにきた! と張りきっていた。そのとき、
 同じ学年の友達も一緒だったのだが、みんなしてはしゃいでいた。現の世で生活している
 人間に狩衣なんて着る機会は、めったにない。
  特にそのころ、私は狩衣に心酔していた。正確には、狩衣を着た在原業平に、である。
 理由はとても単純で、中学のころに読んだ小説の登場人物であった彼に、惚れてしまった
 からである。飄々としていながらも、感情に振り回される業平という人間がとても魅力的
 だった。所謂ギャップ萌えというやつだ。彼が六歌仙に選ばれるような歌の名手だという
 ことはその後、高校になってから知ることになる。
  彼の名前が『国語便覧』に出てきたときは手をたたいて喜んだ。もちろん独りで密やか
 に、だが。それから、「あるをとこ」のモデルが業平と知ったときが二度目のサプライズ。
 早速『伊勢物語』を読んだ。在原業平が結構な有名人だと知ったときは少なからずショッ
 クだったが、その分多くの記録が残っていたので結果オーライだ。そんな恋多き業平様に
はまって、早幾年、何の因果か狩衣を着られることとなり、はしゃぐ理由もわかっていた
だけよう。
  こんな、きっかけで伝統文化に関わった私だが、伝統文化を知れば知るほど、それぞれ
 の文化の歴史や奥深さを感じられた。また一方で、伝統文化が直面している問題も考える
 ようになった。
  私の地域では、以前地元の氏神神社で年3回の祭りが行われていた。そこでは、地域住
 民による雅楽の演奏と、それに合わせた舞の奉納が行われていた。雅楽や舞は、毎年住民
 の中で年上の人から若い人に受け継がれていた。私も小学校低学年頃に、母親に連れられ、
 姉妹と一緒に参加していたことを覚えている。しかし、それらの継承も祭りがやめられた
 ことで意味をなくし、受け継がれなくなってしまった。今思うと、これが伝統文化が失わ
 れる瞬間だったのだと思う。私は、これらが自分の地域の伝統文化なのだと最近になって
 気付いた。しかし、気付いたときには時すでに遅し。それが、すごく残念で悲しい。
  幸いなことに、当時、雅楽や舞をやっていた人たちが近くにおられる。今、私はこの祭
 を復活させたいと考えている。こんなふうに、身近な伝統文化に気付けたのも、それらを
 見る視点が変わったのも、伝統文化に直接関われたお陰だと思う。あの時、声をかけてく
 ださった先生には感謝してもしきれない。
  これからもずっと伝統文化に関わって、勉強していきたいと思う。
                                    −了−

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                       (連載)やまとのくには言の葉のくに
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                  第二十九首             田口 稔恵

  愛されずして沖遠く泳ぐなり (藤田湘子『途上』)

  季語は「泳ぐ」、季節は「夏」。俳句の基礎知識がある人間なら、誰にでも理解できる
 この句が、なぜこうまで腹の底にズシンと響きくるのか。「愛されず」という句と、「沖
 遠く泳ぐ」という句の間に、論理を超えた普遍的な共感がある。
  愛されなかったという事実は、人を沖遠くへと泳がせるものだと。作者である藤田湘子
 は、大正から昭和初期の俳句黄金期を築いた水原秋桜子の門下。その師、秋桜子との反目
 の経験が、後年、この名句を作らせたとされる。しかし、そんな背景の説明さえも必要と
 しない力が、この句にはある。
  誰かに愛されなかった人間が、心の鬱屈を抱えて、碧い海を泳ぐ。鬱屈を忘れるために、
 できる限り遠くへ。どれだけ泳いでも、海と空の青は永遠に溶け合うことはない。
  そのただ中に、ひとり。
  母なる海の中にいても、人は独りで生まれ、独りで死んでゆくのだという、人間存在の
 永遠の孤独を、少年期の研ぎ澄まされた感受性に乗せて読み手に伝えてくる。

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 【連】 活動報告
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 ○ 嵯峨野小学校 茶道一日教室

  7月2日に、嵯峨野小学校でPTA文化委員会さんを対象とした茶道1日教室が行われ
 ました!
  当日に参加された、【連】で茶道を教えて下さっている西村宗靖先生にご感想をうかが
 いました。文化委員会のみなさん、とても楽しまれたようです。

 「真剣な顔で緊張のお母さん方、「星逢」のお菓子で七夕に思いを馳せるとふっと和やか
 な雰囲気に。床の間の拝見、お辞儀の仕方などで二時間はあっという間にすぎてしまいま
 した。水色のお菓子に皆さん驚いていらしたのですが、太田さんいわく、フランスで考案
 されたお菓子で、フランスの空の色だそうです。」

 ○ 作陶体験

  6月29日に、茶道教室のお楽しみ企画として作陶を行いました!
  普段体験する機会はなかなかありませんが、みなさん、いかがでしたか?
  受講生である内田さんが、感想を書いてくださいました。

                 雨と土のにおい
                                   内田 美奈子

  椅子の微妙な高さでもてあそぶ足をぶらぶらさせながら、わたしは手にねっとりとつい
 た土のにおいを嗅ぐ。懐かしいような、新しいような、なんだか優しいにおいだった。自
 然と緊張した顔がほどけて、静かに、ため息をつく。
  6月29日、日曜日の雨の日。わたしたちは、阪急桂駅からタクシーで“桂窯”へと向
 かう。タクシーの中では、どんな茶碗を作ろうか、ずっと考えていた。まる?さんかく?
 しかく?色は?手触りは?飲み口の厚さは?
  作陶をするのは今回で2度目だが、1度目は母と二人で鎌倉に旅行したときに体験した
 程度なので、ほとんど無知の状態。そのとき作った茶碗が何焼きだったのかすら覚えてい
 ない。今回は、“楽焼き”ということで、前夜にインターネットで検索したりして、土と
 出会うまでだいぶ気持ちが高まっていた。
  “桂窯”の入り口に着くと、林の下に屋根が見える。林の中を下りて行く。入り口では
 “桂窯”という表札と、吸い込まれそうな目をした師匠が出迎えてくれた。師匠の印象は、
 大きくてシュッとしているのに、角がなく、まるで時間を止める魔法を持っているような
 感じだった。
  工房の窓は全開で、雨がザーッと地面を跳ねる音や、葉から葉へ、枝から根へ、つたっ
 て流れる音が聞こえる。窓から入ってくる小雨の混じった涼しい風が時々すぅーっと蚊と
 り線香の煙りを揺らす。わたしと、机の上に置かれた1kgの土と、風景。10人くらいで
 大きい机を囲っていても、気が散ることなくおよそ70センチ四方の自分の世界にどっぷ
 りと浸かれた。
  土は、聚樂、伊賀、唐津の赤土で、窯にあった土をブレンドしているという。土の説明
 を受けた後、師匠のデモンストレーションを拝見する。土のかたまりは、またたく間に茶
 碗になった。土を手にした瞬間に、わたしは球体のように丸い茶碗を作ろうと直感で思っ
 た。茶碗を逆さにしたときに、巨大なまんじゅうがそこにあると、見間違えてしまうくら
 いの。形が頭の中でくっきりと浮かぶと手は進む。丸く…、丸く…、丸く……。途中、お
 昼の休憩も挟みながら、削っては全体の厚みを確かめ、また削り、を繰り返し、1kgの土
 は400gになった。色を決め、あとの行程は師匠と窯にお願いする。出来上がりはお盆
 の時期だそう。
  建物の裏の地面には、たくさんの陶器のかけらが敷かれていた。制作過程でひび割れて
 しまったものや、道具や置き物にならなかった破片が土に帰る途中。雨に打たれ、風に吹
 かれ、丸くなり、細かくなり、土になり、そしてまた、人の手で陶器になる。土に触れる
 と、心が落ち着く。きっと、自分の知らない心の深いところで土だった自分を思い出すの
 だろう。作陶を通じて、自然という大きな力に生かされていることを改めて感じられた、
 気持ちのよい一日だった。
  “桂窯”を後にして、下りてきた林を上る時、足下にかわいらしいキノコがあった。
 大切なお土産をもらったような、ありがたい気持ちになった。

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 ◆[嵯峨野学藝倶楽部]8月開講講座のお知らせ ◆
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 詳しくは、http://www.ren-produce.com/sagano/club/から

 ★「京文化を語ろう」
  日程:8月9日(土)
  時間:午前11時〜12時30分(90分)
  内容:「信仰」
  参加費:1回1,000円(茶菓子付)
  ※歴史的な茶店での宴会も予定しています。
  1回のみの参加も、受付けています。

 ★「今様・白拍子教室」
  日程:8月2日、30日(いずれも土曜)
  時間:午後1時〜2時(60分)
  ※見学/体験も、随時受付けています。
  性別・年齢・経験は問いません。
  源氏物語千年紀にちなんだ勉強会やイベントも予定しています。

 ★「うたことば研究会」
  日程:8月2日(土)
  時間:午後2時〜3時30分(90分)
  参加費:今様・白拍子教室受講生は無料
  一般 500円(資料代)
  ※月1回、今様・白拍子教室の後に開催しています。

 ★「茶道教室(土曜日コース)」
  日程:8月2日、9日、23日(いずれも土曜)
  時間:午後1時〜6時(ご都合の良い時間にお越しください)
  ※見学/体験も、随時受付けています

 ★「茶道教室(水曜日コース)」
  日程:8月6日、20日(いずれも水曜)
  時間:午後1時〜6時(ご都合の良い時間にお越しください)
  ※見学/体験も、随時受付けています。

 ★「京都史跡ものがたり〜三宅安兵衛の石碑をたずねて」
  日程:8月17日(日)
  時間:午前11時〜12時30分(90分)
  テーマ:「太秦広隆寺と南禅寺金地院」
  参加費:1回 1,000円 (茶菓子付)
  ※1回のみの参加も、受付けています。

 ●URL
  http://www.ren-produce.com/sagano/club/
  お問合せ・お申込みはコチラまで→sagano@ren-produce.com

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  BBCという外国の番組で、ゲイシャのドキュメンタリーが放映されたようです。
 それに関連して、Veohという動画サイトにその番組の動画がアップされていました。
 動画自体は短いものですが、舞妓さん修行の一端を覗いた気がします。
 勉強になりました。
 興味のある方は、覗いてみてくださいね!
                              (まつだ)

[次回は、8月15日(金)に配信予定です! 次回もお楽しみに。
 
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多くの方に有斐斎弘道館の活動を知っていただきたく思っております。
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