毎年弘道館が行っている京菓子デザイン公募展に向けたイベントとして、京菓子展特別講座「枕草子とは何か」を開催しました。講師は国際日本文化研究センター教授の荒木浩先生です。
8年目となる京菓子展の今年のテーマは「枕草子」。そこで今回は、枕草子の概要から、内容の一部紹介、他の古典作品との比較など、枕草子に関して様々お話して頂きました。
この日(7月24日)は復活した後祭の山鉾巡行の日ということで、祭に関して、「枕草子」と昨年の京菓子展のテーマでもあった「徒然草」との比較を。(ただし古典では「祭」というと「葵祭」のことを指します。)『枕草子』では「祭の車の見物が帝の行幸より良い!」と好意的なのに対して、『徒然草』では「珍妙で目も当てられぬ」とのこと…。同じ三大随筆と言われる2作品の態度の違いが面白いですね。そんな『徒然草』ですが、『枕草子』跋文から続けて読むと繋がりが感じられるとのこと。冒頭は『枕草子』の跋文を明らかに引用していて、「つれづれなるままに…」で始まります。
また、清少納言とライバルとよく言われる紫式部について。『枕草子』では、中宮が「少納言よ、香爐峯の雪、いかならむ」と言って、雪を見るために清少納言に御簾をあげさせたシーンが有名ですが、紫式部は『源氏物語』の中でこれを引用して、清少納言と枕草子を馬鹿にしていると。
荒木先生は、クリエーターとしての紫式部と、アレンジャーあるいはパフォーマーとしての清少納言という違いがあったのではないか?800近い和歌を源氏物語の中で制作した紫式部と、和歌を残そうとはしなかったが上手く他人の句を引用した清少納言とは、それぞれ異なる視点・資質・才能があったのだろうとおっしゃっていました。
また、最近の枕草子研究では、個人的なエッセイではなく宮廷文化の記録であった、という説がよく言われるとのこと。一条天皇の中宮であった定子に仕えていた清少納言は、宮廷の広報官であり、定子の栄華、その聡明さやファッションをアピールするために『枕草子』をかいた、という見方もあるそうです。
最後に、荒木先生が面白いと思う『枕草子』の章段もご紹介して頂きました。「鳥は」「翁丸」など、動物・鳥・彼女の観察に浮かび上がる人々の「くせ」などが面白いとのこと。
他にも…
・清少納言や中宮定子の生い立ち
・枕草子の概要
・欧米の『枕草子』関連本のご紹介
などなど盛り沢山に話して頂き、楽しく勉強になる講演でした。この講座は全編、YouTubeのアーカイブでご覧いただけます。この講演を参考に、ぜひ京菓子展にもご応募してみてください。
京菓子デザイン公募展は、京都を代表する芸術文化である京菓子を通して、広く皆様に古典文学について知っていただくとともに、京菓子についての理解を深めていただくことを趣旨とするものです。八年目となる本年は、「枕草子」の世界よりイメージを膨らませ、新たな感性で表現した京菓子作品を募集します。
京菓子展 2022 – 手のひらの自然 枕草子HP (https://kyogashi.jp/ )
公募〆切:8月31日(水)