憚乍口上
僕らの知らない世界では、今頃どこかでオリンピックが行われてるんではなかろうか。僕らこそ、実は「知らない世界」に迷い込んでしまったのではないかと、いつにない長雨の隙を突いて鳴き始めた蝉の声を聞いています。
悪い病気が流行ったものです。舞台と客席との、えも言われぬ空気が混ざり合う一期一会の空間が、簡単に否定されてしまうとは、夢にも思いませんでした。一瞬にしてスケジュールは見る必要のない白さになりました。
では、僕らは本当に「不要不急」でしょうか。僕らの伝えたい、つないでいきたいものは皆様に届かないのでしょうか。これは僕らの挑戦でもあります。今までの僕らの手本となり目標としてきた先人の誰も経験しなかった、今への挑戦であります。
撮影から編集まで、渞さんとスタッフの方々に素晴らしくご尽力いただきました。また、弘道館さんには、普段やらせて頂いている「吉坊ゆらり咄」という会の番外編として、世情の落ち着かぬ中、撮影をお許しくださり、ひとかたどころか二方三方ならぬお世話になりました。
そして、今回ご出演いただきました京舞井上流 井上安寿子さん。素晴らしい舞はもちろん、京の街に携わる人として「何かしなければ」という思いをトークでも語ってくださいました(トークはまた別の回で特集を組みたいと思っています)。
関係者の方々に心より感謝申し上げます。
何より、ご覧の皆様が、忘れかけていたかもしれない時間を過ごし、共に想いを馳せていただければと存じます。
令和二年文月
桂吉坊 拝
京舞「芦刈」「柱立」あしかり/はしらだて
*視聴料の一部は有斐斎弘道館の活動を続けるための基金となります。
*予告編を無料にてご覧いただけます。その後、視聴のための手続き画面になります。
*一週間の視聴が可能です。
「開物楽(かいぶつがく)ー吉坊ゆらり咄 編ー」
企画 桂 吉坊
撮影監督 渞 忠之
編集・助手 中西 月緒 橋口 天姫子
制作 令和二年(2020)七月
©️有斐斎弘道館