弘道館の歴史

創始者 皆川淇園の思いを受け継ぐ

有斐斎弘道館は、日本文化の研究・教育機関です。
「弘道館」は、江戸中期の京都を代表する儒者・皆川淇園が1806年に創設した学問所で、門弟三千人とうたわれました。淇園は「開物学」という、独自で難解な学問を創始したことで有名ですが、それだけではなく、詩文や書画にも優れた風流人でした。また、円山応挙、与謝蕪村、長沢蘆雪らと親しく交わり書画会をプロデュースするなど、多くの文化人と親交を結びました。
江戸時代には「弘道館」という学問所が全国に見られました。その言葉の意は、「道を弘める」ということです。当館は、皆川淇園の号の一つ「有斐斎」を冠して「有斐斎弘道館」として2009年に再興したものです。当時、マンション計画が立ち上がったことから、これを保存しようとする研究者や企業人の有志により活動がはじめられました。
淇園の時代は、分野を超えた濃密な人的ネットワークや、時空横断的に広く連なる学芸文化が、成熟した社会を支えていました。このことは、現代日本の抱える様々な課題に大きな示唆を与えてくれます。
有斐斎弘道館では、淇園の時代にならい、総合的な知と感性をたたえた日本伝統文化を研究し、現代における価値を発信しています。その研究成果を、実践的な教育プログラム「弘道館教育」として構築しました。それは、座学による知識と、茶会や謡稽古など五感を駆使する体験の両者を結びつけることであり、現代に必要な真の学びであると考えています。また、その学びのためには、座敷や庭が重要な役割を果たしており、空間全体の保存にも尽力しています。

 

歴史と文化を五感で感じる場へ

 公益財団法人有斐斎弘道館の活動

有斐斎弘道館では、皆川淇園が設立した学問所「弘道館」にならい、現代に必要な、文化芸術による知を再生するための、新たな日本文化研究・教育機関として、さまざまな活動を行っております。
日本の伝統にこめられた深い知恵と類い稀なる美への精神性を、意識的にくみあげることによって、未来の京都、未来の日本にとって必要な、新しい知恵をつむぎだすために、以下の4つを活動の柱としています。

4つの柱

①調査・研究

今まで明らかにされてこなかった皆川淇園の事績や交友関係、また淇園が生きた江戸時代の文化的な状況やその位置付けについて、近世京都学会と連携して研究しております。また、建造物保存を通して得られる知見や、このような「場」を育んできた日本の歴史文化、芸能文化についても、研究に取り組んでいます。

②育成・教育

江戸時代の学問所「弘道館」を受け継ぎ、日本文化を通した人間育成・教育事業をおこなっています。オープン講座とプライベート講座があります。いずれも事前にご予約・ご相談ください。

オープン講座・体験
身の回りにあるモノ・コトからはじまる日本文化への発見。
歴史とのつながりを自身の内に取り戻すための、学びの時間。
有斐斎弘道館では、茶の湯をはじめとする日本文化に関する多様な教養講座や体験を展開しています。

 

プライベート講座・体験
身体を通した学び。五感を研ぎすませる時間。自己との対話。
茶事、京菓子づくり、能楽体験、花街文化体験、日本文化講座、マネジメント研修、等。
目的にあわせて講座や体験をコーディネイトいたします。
期間は半日講座から、短期集中、半年継続など。企業研修等、個人・団体での受講が可能です。

③発信・啓発

総合的な知を育んだ淇園の学問所にちなみ、社会と研究との循環を試みます。
そのための発信の形も、展覧会、講演会、論文・出版物、また芸術作品として表現するなど多様な方法で行っています。事例として、京菓子デザイン公募展があげられます。

④維持・保存

有斐斎弘道館の活動は、建造物と庭の保存からはじまりました。この保存活動を通して、私たちは多くの学びと気づきを得てきました。社会と文化の関係を今後どのように構築していくべきか。技術や材料をどのように保持・継承していくのか。文化が育まれた「場」があることで、根源的な学びを得ることができます。先人が培ってきた知恵が積層されている空間そのものを維持することは、私たち日本人の使命であると考えています。
有斐斎弘道館では、この有機的につながりあった建造物と庭園のすべての空間を維持・保存し、活かしながら、活動を展開します。

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